劇場公開日 2024年12月13日

お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価

全80件中、1~20件目を表示

4.0このゆったりと広がる豊かな物語には悪意の入り込む隙など微塵もない

2024年12月31日
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鑑賞方法:試写会

『ブータン 山の教室』のドルジ監督による新作は、ブータンがさらされた時代の波と、そこで起こる人間模様をユーモラスな視座とゆったりした時間感覚で描き出す秀作だ。06年、尊敬を集める国王が退位を決め、いよいよ民主主義が導入されるという。その折に生じる国民の戸惑いは微笑ましくも至極もっともなことであり、本作を見ているとむしろ観客側の私たちの方こそ、よりもっと民主主義や選挙制度について思考を巡らすべきなのではないかと思えてくる。ただし本作の焦点は小難しい議論にあるのではない。あくまでそれを受け止める人間の心にある。そしてこの美しく平和な大地に銃を担いだお坊さまがたたずむ姿には、何か正反対の価値概念が同居しているかのような芸術的なまでの絵力が迸る。高僧の狙いが判明するラストは誰もが「なるほど!」と得心するはず。この国の善意と人々の思いやりがずっと続きますように。そう願わずにいられなくなる一作である。

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牛津厚信

4.0物騒な仏僧と、幸せの赤い“銃”

2024年12月26日
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鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

幸せ

パオ・チョニン・ドルジ監督・脚本の第2作となるこの「お坊さまと鉄砲」がとても良くて、デビュー作「ブータン 山の教室」も最近配信で観たのだが、両作品とも自然と宗教(祈り)にとても近い暮らしをいとなむブータンの村人たち(演者の多くは地元のエキストラ)が本当に素敵で、親しみと憧れの気持ちを抱いた人も多いはず。前作は比較的シンプルなストーリーだったが、今作ではちょっとしたミステリー要素も添えて観客を楽しませてくれる。

2006年に国王が退位し、民主主義と普通選挙が導入されることが決まったブータンで、国民に慣れてもらうため模擬選挙が各地で実施されることに。それをラジオニュースで知ったラマ(高僧)が弟子の若い僧侶タシに、4日後の満月までに銃を2丁入手するよう頼む。人々の平安を祈り皆から尊敬されるラマがなぜ銃を? その謎はなかなか明かされない。

師の頼みに従い村中を探し回るタシ、はるばるアメリカからやってきた銃コレクター、ある村人の家にあった南北戦争時代の稀少なライフル、さらには劇中のテレビ画面に映る「007 慰めの報酬」で使用されていた自動小銃AK-47の現物まで登場。物騒な展開も想像してハラハラしたが、終盤での種明かしにあっと驚き、喝采を送りたくなった。

ある人物の手に赤い“アレ”が渡るシーンで、私の脳内では自然にビートルズのジョン・レノンが歌う「Happiness Is a Warm Gun」のサビが流れていた。この歌詞の「銃」に性的なダブルミーニングがある、つまり男性器を示唆するのはよく知られた話。振り返ればジョンは暴力より愛とセックスを、戦争より平和をと、歌と行動で主張し続けた表現者だった(そのジョンが銃で殺されたのは悲しすぎる皮肉だが)。そんなジョンの願いと、西側から遠く離れたブータンで作られた映画のメッセージがつながっているようで、幸福をおすそ分けしてもらったような気にもなった。

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高森 郁哉

4.0幸せの国からメッセージが届きました

2025年2月17日
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笑える

楽しい

幸せ

1 鉄砲と選挙を巡る騒動を通じて、幸せとは何かを描く。

2 「ブータン山の教室」が良かったので、期待を込めて見に行く。本作の粗筋は次の通り。舞台はブータンの僻地の村。ネットの解禁や国営TVなど近代化と初の直接選挙に向けた準備が進められていた。他方、村の高僧が弟子に鉄砲二挺の調達を依頼したころ、外国のバイヤーが年代物の鉄砲を求めて入国。
一人の村民が骨董品を持っていて、バイヤーと弟子とで争いになる。そこに警察も登場する。そして・・・。

3 劇中、模擬選挙により一族内での分断や仲の良かった家庭内での不和が起こったとのエピソードがあった。また、投票結果では善き伝統を活かそうとする議員の得票が最多であった。このことでブータンは近代化が進んでも伝統を重んじ、幸福の根源となる和を尊いものとする国民性が現れた。

4 高僧が鉄砲を求めた理由は最後に分かる。
二挺だった理由は謎で、一挺の銃のために外国のバイヤーが登場し、警察が取り締まろうとするのは大袈裟すぎる。そこは置いといて、僧侶は皆が集まるなかで、目的を伝え、参加者は同調する。そしてバイヤーにはあるものを進呈する。こうした場面を通じて、現在の世界情勢に対する強烈なメッセージと繁栄のために大切なものを示した。彼の地において高僧が信仰と共に大切にされる所以であろう。

5 結末に向けて涙とともに笑いを禁じ得なかった。弟子を始め顔が日本人の作りに似ており親しみを感じた。また、伝統や和を尊重する国民性や身の丈に合わない金銭に頓着しない老人の姿は、古き善き日本人と重なる所があった。

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コショワイ

4.5「お坊さまと鉄砲」この題名に??

2025年2月10日
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まーちゃん

3.5「幸せとは何か」を改めて考えさせられる心温まる作品

2025年2月10日
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Tofu

4.0幸せについて。シンプルに。

2025年2月9日
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難しい

幸せ

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TS

5.0全世界の人々が一回は見た方が良い映画

2025年2月5日
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知的

幸せ

民主主義が人々を豊かにすると仮定して
その根幹に無くてはならないもの。
そもそもそれがあるなら民主主義でなくても良いよね。

そしてユーモアは人を幸せにする。

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あき

4.0【”模擬選挙実施を聞き、ラマは”物事を正す、銃を2丁用意せよ”と弟子に言った。”国民総幸福量という開発哲学を掲げるブータンを舞台に民主主義の選挙の意味、害を成すものには何をすべきかを描いた作品。】

2025年2月2日
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楽しい

知的

幸せ

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NOBU

5.0GNH

2025年2月2日
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しょーもないギャグで笑わせるコメディ映画ではなく、ブータンの伝統を上手く取り入れ、じわじわ笑える作品でした。幸福度ってこーゆー事だよなぁ…と思わせてくれました。

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khs69

それが必要なかったからでは?

2025年1月28日
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鑑賞方法:映画館

 国内総生産(GDP)ではなく、国民総幸福量(GNH)の向上を目指すブータンは、長年山の王国でした。しかし、2006年に国王が自主的に退位し、国の歴史上初の選挙が行われる事になりました。しかし、民主主義とか選挙の意味も分からぬ村の人は戸惑うばかりです。そうした村の混乱を縦糸に、高僧が「銃を手に入れろ」と弟子に命じた謎を横糸に描いた軽やかな物語です。

 村での選挙人登録が一向に進まない状況に苛立ったお役人の女性は、「世界中の人々が命懸けで望んだ物を与えられたのよ」と説明するのですが、村人は「私たちが命を懸けなかったのはそれが必要なかったからでは?」と応じます。それは寓話的な皮肉なのだろうと思ってニヤニヤ笑って観ていたのですが、「当選を目指さぬ選挙」が横行し、「SNSアクセス数を目的とした様な立候補」「デマに踊らされる選挙民」が現われた東アジアの後進国の現状を見ると、「これはメタファーなどではないんだな。選挙権って何だ?」と苦いものが胸元にせり上がって来たのでした。

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La Strada

3.0鉄砲の意味するところに感動

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

国民に愛されてきた国王が退位し、民主化へ転換、
そして選挙の実施を目指して模擬選挙が行われるという背景にあって、
高僧が弟子タシの僧に銃を2丁用意するように、と指示するところから始まります。

この銃をめぐって、
タシが道中テレビで観たダニエル・クレイグの007が大好きになって、
007の銃が欲しくなったり、
銃の売買を通して、コミカルなすれ違いと人間ドラマがあったりと
実に軽やかというか、微笑ましい作品に仕上がっているんですよね。
ここは唸らされる紡ぎ上げ方でした。

一方、選挙を巡っては、家庭の平和が乱されたり、学校でのいじめに発展したりと、
国王が治めていた「昔がよかった」という一面も。
民主化が必ずしも正しいのか!?を突きつけるところが、社会派ドラマとしても
実に深いなと感じましたね。
模擬選挙も結局「黄色(国王が身につけている色)」への投票が95%ということで、
国民性があらわれている結果になっているのも面白かったです。

高僧が仏塔を建てる前の儀式時に、
世界平和のために銃を埋めてその上に仏塔を建てるんだという話をしたときは
なるほどと思いましたし、そこでようやく銃の意味がわかって感動しました。
併せて、銃のコレクターとのやりとりもおもしろいんですよね。
(正しくない行動への末路を明るく描いていて、こちらも好感が持てました)

ブータンの映像も美しかったですし、脚本も素晴らしかったと思います。

パオ・チョニン・ドルジ監督の次回作を楽しみに待ちたいと思います。

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ひでちゃぴん

3.5幸せな国

2025年1月19日
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ブータンの選挙システムは、シビアな状況であったのは初めて知った。しかし、映画は終始のんびりした雰囲気で、やはり幸せな国民性なのかなと思った。

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hanataro2

3.02006ブータン王国は改革の時を迎えた。しかし国民は民主制を知らない。

2025年1月16日
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ブータン王国初の国政選挙を前に、高僧が弟子に、鉄砲を探してこい、という。意味不明と思いつつ、その答えが最後に明らかにされるのだが、ロケ地同様にストーリーものんびりと進行していく。ピュアな人々が巻き起こす、ちょっとユーモラスでシニカルなストーリー。それ以上の感想もないが。

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栗太郎

3.5与えられた民主主義

2025年1月15日
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かばこ

4.5目にも心にもやさしい映画

2025年1月13日
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黄金色の麦畑ではじまり、ピンク色の蕎麦畑で終わる、目にも心にもやさしい映画。
「お坊さまが、何故鉄砲を?」という問いに最後まで惹きつけられ、その理由がわかった時に、何とも言えない世界観の広がりと感動を覚えた。
脚本のスマートさと共に、構図や色の美しさを大切にしたカメラワークも好き。

考えさせられたことを一つ。
近代化や民主化といった世界共通の価値観と、仏教を根底においたブータンならではの伝統文化の対比が描かれたことで、自分が間違いなく正しいと思っていることは、本当の意味で、端から端まで正しいことなのだろうかということ。
「民主化」も、選挙の意味も、近代化も、情報機器等をはじめとしたテクノロジーも…。

鉄砲の代わりが、「鉄砲」だったところは爆笑でした。

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sow_miya

4.5幸せってなんだろうなあ

2025年1月12日
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難しい

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こち

4.5真っ赤な(ティン)ポー

2025年1月12日
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笑える

楽しい

幸せ

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カールⅢ世

3.0ブータン・ヌーボ

2025年1月11日
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ブータン映画と言っても、後にも先にも同じ監督の「ブータン山の教室」しか見たことがないので、ほかにどのような作品が作られているのか、全体像はわからない。人口80万人ほどの国で年間何本ぐらい公開されているのだろうか。この2本の映画を見る限り、私たちがイメージするブータンという国そのままの世界が描かれるが、この国の人々にとっては当たり前なわけで、彼らのためにはおそらくもっと違うジャンルの映画も作られているのだろう。
銃を調達するように指示する僧侶の意図がなかなか読めないので、最終的に何が待ち受けているのだろうと終始不安な気持ちのまま物語の展開を見守らざるを得ない。銃の入手に奔走する若い僧と模擬選挙の準備が並行して描かれ、満月の日を迎える(結末は納得の行くものであったが)。
王制から共和制への移行と言えば血なまぐさい政変を想定しがちだが、国王自ら施政権を手放すというのは奇特な例に違いない。ただ、民主主義の導入がかえって争いを産むという、劇中で提示された課題の答えは出ていないように思える。
田縣神社の神輿のようなファリック・シンボルも登場するが、あれはブータンの習俗に実在するのだろうか。

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梨剥く侍

4.0これは傑作!

2025年1月9日
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穏やかなブータンの大自然と共に語られる幸福論。
不穏な空気を残しながらクスクスと笑え、最後はホロリとする絶妙なバランス。
ゆったりとしているが飽きない映画だった。

他のレビューにもあるように幸福とは何かを考えさせられた。

豊かさを追求する日本とは全く違う、贅沢とは言えない暮らし。
それでいて、こんな人生が良かったなと羨望を抱くほど、ブータンの人々は満たされている。

しかしきっと、ブータンの人々が感じている幸せや充足感は、志し次第で日本でも得られるものなのだろう。

金を得たいと思う気持ちも、結局は他者から優れていると認められたいという承認欲求に過ぎない。
周りに流されず、己の価値観を大切にしたいと改めて思わせてくれた。

ブータン国民の安寧と幸福がこれからも永遠に続くよう祈る。

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とくこ

5.0ブータンで以前、選挙を初めてすることになった時の物語。 村の人々は...

2025年1月8日
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楽しい

幸せ

ブータンで以前、選挙を初めてすることになった時の物語。

村の人々は、選挙の経験がなく戸惑い、騒動やら仲違いが生じ。
若い僧侶は、高僧から依頼され、銃を手に入れてきてほしいと。
一方で、希少な銃があると噂を嗅ぎ付けた、米国人の収集家も来て。
その収集家を手配追跡している警察の方々までも。

それぞれの願い・思惑・欲望などが絡まったりすれ違ったりして、
本来のどかなはずの村が、慣れない騒動の渦中になってしまう様子。

しばらくは、ドタバタ戸惑いの渦中の物語でしたが。
終盤になるにつれて、人々の穏やかな本質が出たような、とても愛らしい物語にまとまっていました。
チベット仏教の考え方…まずは人に授けること、皆がそうすれば、自然と巡り巡って、自らにも授りものがある…のようなものが、村人の言動ににじみ出ていて。

平日なのに賑わった映画館(2025-01-07火曜午後)
終盤は笑い声があちこちから聞こえてくる、和やかな場。
よき癒しの、鑑賞体験でした。

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woodstock