「猫と美しい水の世界」Flow aromさんの映画レビュー(感想・評価)
猫と美しい水の世界
猫ちゃんが水の中で泳ぐ姿はアニメならではのかわいらしさ。それだけでも見る価値あり!
人類が滅んだ後の世界。
猫の習性で、水を嫌い、いつも単独で生活をしてきた黒猫。ある日突然洪水が起きたことで、1匹で気ままに生きていた猫は仲間と助け合うことを学び、苦手な水に飛び込むようになる。
排他的で同種属だけの群れで生きていた犬やキツネザルは仲間と離れて新しい仲間と助け合う。
それぞれ種族ごとに分かれて生きてきた動物たちが、洪水の世界で一つの船に乗り旅をする。
ヘビクイワシは、洪水にならないと辿り着けない聖地のような場所に向かって舵を取る。
あのクジラのような生物だけは未知の生物なので、洪水にならないと現れない動物なのかもしれない。
洪水の世界はボーダレスの世界。人間の世界で例えるなら国境がなくなった世界と言える。
洪水が起きた時ヘビクイワシは、群れのみんなは空を飛んでいたにも関わらず、たった1匹で地上に佇んでいた。ヘビクイワシが猫を助けたのは、閉鎖的な群れ社会にいるより単独でいる猫にシンパシーを感じたのかもしれないし、種族を超え猫を庇って吠えたレトリバーに影響されたのかもしれない。
カピバラは誰にでも優しく、レトリバーは誰に対してもフレンドリー。
洪水になっても物欲が強く鏡で自分の姿ばかり見ているキツネザルは現代の人間を表している。
猫が水面を覗き込み自分の姿を見つめているようなシーンが何度かあるが、自分ではなく水そのものを見ていたのではないだろうか。カピバラの乗っている船の中には初めから鏡があったが、その鏡を覗き込んで自分を見つめることは一度もしていない。それをしていたのはキツネザルだけである。
エンドロールの最後のシーン。
たぶんまた大洪水は起きる。
大洪水を繰り返している世界で、また泳いでいるクジラは同じクジラであって欲しいと思う。