ブラックドッグ

劇場公開日:2025年9月19日

解説・あらすじ

中国を舞台に、罪を背負った青年と黒い犬の絆を美しいブルーグレイの映像で描き、2024年・第77回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門の最優秀作品賞とパルム・ドッグ審査員賞を受賞したヒューマンドラマ。

2008年、北京オリンピックの開催が迫る中国。誤って殺人を犯し服役していた青年ランは刑期を終え、ゴビ砂漠の端に位置するさびれた街に帰郷する。人の流出が止まらず廃墟が目立つ街には、捨てられた犬たちが野犬化し群れをなしていた。知り合いの警察官に誘われ地元のパトロール隊で働くことになったランは、ある日、群れに加わらず単独行動している黒い犬と出会う。賢く決して人間に捕まらないその犬とランとの間には、いつしか奇妙な絆が芽生えはじめる。

「疾風スプリンター」「オペレーション・メコン」のエディ・ポンが寡黙な青年ランを時にユーモラスに演じ、「フラッシュオーバー 炎の消防隊」のトン・リーヤーが共演。さらに、映画監督のジャ・ジャンクーが重要な役どころで出演。「エイト・ハンドレッド 戦場の英雄たち」のグアン・フーが監督を務めた。

2024年製作/110分/G/中国
原題または英題:狗陣 Black Dog
配給:クロックワークス
劇場公開日:2025年9月19日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)

受賞

ある視点部門
最優秀作品賞 クワン・フー

出品

ある視点部門
出品作品 グアン・フー
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(C)2024 The Seventh Art Pictures (Shanghai) Co., Ltd. All Rights reserved

映画レビュー

5.0 破壊された街で芽生える種族を超えた友情の永遠

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

去年の東京国際映画祭で観て以来、あの衝撃が今も治らない。

物語はシンプルで強烈だ。北京オリンピック前の中国、ゴビ砂漠の端にある街は荒廃し、至る所で飼い主を無くした野良犬たちが徘徊している。みんな、街を捨てて出て行ったのだ。オリンピックのためのインフラ整備はもとあった人々の営みを完全に破壊し、希望のかけらもない、廃墟を作り出している。文明とは、発展とは、なんと酷いことをするものか!?

そんな故郷の街に刑期を終えて戻ってきた主人公の青年、ランが、決して野良犬退治の網に引っかからず、群れから外れて生きる一匹の犬と出会い、不思議な友情で結ばれていく。取り残された者同士が、種族を超えた関係性をじわじわと作り上げていくプロセスは、無音で力強く、時に笑いを含み、吹き荒ぶ砂嵐に立ち向かう勇気と希望を観客にも与えてくれる。

中国とは言わず、世界のあちこちで起きている破壊の実態を人間と犬の関係性に集約させた映画は、ランを演じるエディ・ポンと犬を演じる天才犬、シンの名コンビが奏でるハーモニーに大きく助けられている。調べてみたら、撮影終了後、ポンとシンは一緒に暮らしているとか。廃墟で生まれた友情は長く尊いのだ。

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清藤秀人

3.5 高倉健と犬

2025年10月30日
スマートフォンから投稿

北京オリンピックに沸く中国。しかし、荒廃した地方から人は出ていき、捨てられた犬が野犬化。そんな野犬と罪を背負った男の絆を描く。
ほとんど喋らない主人公、高倉健かい( ´∀`)。疎外感たっぷりだが悪人がいるわけでもない。底にギリの体制批判がある。主人公の再生が示されるラストは後味が良い

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どーも

3.0 賞をとりそうな作品

2025年10月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

中国映画って、私が観てきた映画がそうなのか、なんかやたら眠くなる間が多いイメージです。『初恋のきた道』とか、本当に眠気との戦いで苦手でした…この映画ももれなくたっぷり間があって眠かった…家で観たら、最後まで観れない作品だと思います。

ただ、どのカットも美しくて映画って感じしました。
賞をとる作品であって、娯楽映画ではない気がします。

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ハル

3.5 ある意味、頭脳犯的なしたたかさが透けてみえる「イヌ映画」

2025年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ずばり言ってイヌ派だ。犬種は問わない。時間さえ許せば、ひたすら愛でていたい。そんなだから「犬が出てくる映画」にも目がない。今年に入って観た中では、新作の『スーパーマン』と旧作『スターレット』がイヌ映画として出色だった。

そこで本作『ブラックドッグ』である。ここに登場する準主役級のイヌは「狂犬病感染を疑われる賞金首(!)の野犬」という役どころ。なんでもグレイハウンドとジャックラッセルテリアとのミックスなのだとか。映画ではめったに見かけない犬種で、痩身のフォルムが異彩を放つ。ちょっと痩せすぎではと心配になるほどだ。

そんな、ひときわ目を惹くルックスの反面、犬種的には「演技」に不向きではないかと懸念するも、コレがなかなかどうして芸達者なのだ。
大型犬のわりに体のキレがよいだけではない。ときにコワモテの野犬らしく牙をむくかと思えば、飼い犬だった往時を偲ばせる甘えた仕草で体をすり寄せてくる。主人公が立ちションした真上に重ねて、マーキングで足上げションする仕草など、思わず吹き出してしまう。
カンヌ国際映画祭2024の「パルム・ドッグ賞」において、フランス映画『犬の裁判』の最高位に次ぐ審査員賞に輝いたのもナットクの「名演」である。ときに達者すぎて、名子役のような「あざとかわいさ」すら垣間見えるほどだ(もっともコレは犬のせいではなく演出の問題であろう)。

ここで他の動物たちにも触れておくと、なによりも先ず、種種雑多な犬たちの群れに目を奪われる。元ペットが野犬化したという設定だから当然、種類もさまざまだが、荒涼たる原野に本来生息しないはずの犬種が駆け回る光景はなかなかシュールだ。映画冒頭、不意に野犬の群れが地響き立てて走り込んでくる描写も実にすさまじく、西部劇での牛のスタンピードや『七人の侍』で馬を駆る野武士集団をおもわず連想させる。

また、そこここにたむろする犬たちを捉えたロングショットは、さながらウェス・アンダーソン監督作『犬ヶ島』の実写版といった趣きだ。丘陵に佇むオオカミの姿も、同監督の『ファンタスティック Mr.FOX』終盤に見られるショットそのもの。さらに度々出てくるドリー撮影の横移動は同監督独特の作風を思い出させる。

一方、ファーストショットで、35ミリフィルムの質感を湛えたスクリーンに荒野が映し出されると、マカロニ・ウエスタンのような無国籍感が一気に拡がる。剥き出しの岩々に風吹きすさび、根無し草がころがる。そんな景色の中を疾駆する野犬狩りのピックアップトラックやバイク集団は、まるで『マッドマックス』シリーズみたいだ。

本作の舞台は、ゴビ砂漠の片隅に位置する寂れた街である。時は四川大地震や北京オリンピックがあった2008年。劇中でもそれらのトピックは象徴的に描き込まれている。
その一つとして、かつての集合住宅が爆破解体されるという極めて印象的なシーンが終盤に出てくる。北京五輪を控えて再開発の波がこの地にも押し寄せたせいなのだが、コレもまた、現代フランス映画で〈パリ郊外もの〉と称されるジャンル映画によく見られるモチーフだ。例として、ここでは『バティモン5 望まれざる者』『GAGARINE/ガガーリン』の2本を挙げておきたい。ついでに言うと、『GAGARINE…』には皆既月食を団地住民が総出で観測するシーンがあるが、本作にも地域住民による皆既日食観察のエピソードが出てくる。

こういう一連のモチーフの「拾い方」や「見せ方」、あるいはピンク・フロイドがガンガン流れる「音楽設計」だとか、人気の失せた市街地を虎が悠然と歩くような「絵づくり」を見るにつけ、この監督は、観客に対してアーティスティックに訴求する術を熟知しているなとつくづく感じる。一見オフビートな作風を装いつつ、メジャーな国際映画祭での話題づくりや世界の映画マーケットをにらんだ、頭脳犯的なしたたかさが透けてみえるのだ。

最後に余談だが、かの映画監督ジャ・ジャンクーが本作に「街を仕切る顔役」として出演している。その彼がどこか劇作家・俳優の松尾スズキに似ているのだ。また顔役の取り巻きには、劇作家の赤堀雅秋や演出家の宮城聰に似ているヒトもチラホラ見える。さらに、主人公に遺恨を抱く肉屋のオヤジさんの顔は黒沢清監督にダブって見える。あれま。

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いたりきたり

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