I Like Movies アイ・ライク・ムービーズのレビュー・感想・評価
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What do you like?
まずそもそもタイトルが上手いと思った。
最初は主人公・ローレンスの属性を直接的に表しているものだと思っていたが、映画を最後まで観終わった後にこのタイトルを見ると、実は作り手の伝えたいメッセージに対応していたことがわかり、感心してしまった。
「世界は自分中心に回っている」と勘違いしている男子高校生の話。
そういう人の「みっともなさ」をリアルに容赦無く描いていて、その試みは大成功していると感じた。
でも、世の中のほとんどの人は社会に出る前の若い頃、彼のような一面を多かれ少なかれ持っていたのでは?とも思った。
「彼には共感できるところが全く無い」という人とは、仲良くできる自信が無い。
もちろんローレンスは人を下に見下しすぎているので、ここまで酷い人はなかなかいないと思うし、批判されるのは至極当然。
相手を論破するための道理に反した酷すぎる発言の数々は擁護し難い。
でも、彼のやらかしを観て「酷い」と思う一方で、身に覚えがあるような気がして、心が苦しくなる感じがあったのも事実。
この映画は「才能の残酷さ」も描かれていると思った。
大人になって思うことは、「仕事は好きなことや興味があることよりも、得意なことで選ぶべき」ということ。
好きなことは趣味にした方が人生豊かになると思う。
この映画を観ていると、「好きだけど才能が無い」ことがいかに辛いことなのか、嫌でも思い知らされる。
映画冒頭にローレンスの映像作品が出てきて、後半、将来有望な生徒の映像作品が上映される場面があることで、ローレンスの作品がどれほどしょぼかったかを映画を観てる観客が認識すると同時に、ローレンス自身が才能の有無を自覚せざるを得ない展開になっていて、この映画は容赦無いなと思った。
でも、自信があったのに圧倒的実力差を目の当たりにして夢を挫折した経験なんて、世の中のほとんどの人があるのでは?
「受験の過酷さ」も描いていると思った。
「受験」=「人生の重大な分岐点」で、「受験失敗」=「人生終了」と思い込んでいる学生は多いように感じる。
そのため、受験が近づくにつれ、自信の無い学生は不安な気持ちから情緒不安定になりがちな印象。
個人的には、受験システムは子供に負荷をかけすぎな気がする。
前半は日常が淡々と描かれていくので正直退屈に感じたが、中盤、レンタルビデオ店の女性店長・アラナが「映画を嫌いになった理由」を語る場面が名場面すぎて、そこから一気に映画に引き込まれた。
彼女が前置きで「話は長くなるけど…」と言っていたとおり、マジで話が長いなとは感じたが、話を聴き進めていくほど、自分の心拍数が上がっていくのを感じた。
彼女の話を聴いて、2023年公開映画『SHE SAID その名を暴け』を想起。
ローレンスの「なぜすぐ警察に行かなかったんだ」との問いに対する、アラナの返答が秀逸。
ヤフコメで同じような意見をよく目にするが、そういうことを書き込む人たちには理解できなそう。
レンタルビデオ店が舞台で懐かしい気がした。
友達が今までどんなビデオを借りてきたかを店員がPCで調べようとする場面で、「それは人の道に反しているのでは?」とドン引きしたが、そんなことするからバチが当たるんだよ。
縁を切りたい相手とは距離を置くのが正しい行動のように思えるが、距離を置かれた側がその事実を認識する場面はとても可哀想だった。
この映画の素晴らしいと思ったところは、ローレンスをダメ人間として描いて終了、としていないところ。
ちゃんと救いの手も差し伸べていて、利己的な人間の胸糞悪い振る舞いを永遠と観せられていたはずなのに、映画を観終わった後の気分はそんなに悪くなかった。
アラナがファミレスでするローレンスへの数々のアドバイスは、人生がうまくいっていないと感じる若者への素晴らしい金言だったと思う(非合法なものを除いて)。
ローレンスではなくマットの方に自分を重ねた。 ローレンスにとってマ...
I Like Movies(映画の記憶2025/1/2)
ムカつくけど可愛げもあるオタク少年の成長
映画を観まくったことで何者かになれた気になり、根拠のない自信をつけてしまい、知識や教養があると勘違い。そんなナルシストで周囲を見下す映画オタクの少年が、初めてのアルバイトや高校卒業を経て、少し成長する物語。
情緒不安定で可哀想な経験もしているので、なんとか大目に見てあげたい…のだけど、やっぱりこいつクソガキだな!と思ってしまう、かなり嫌な性格をしている主人公のローレンス君。(お母さんに一番同情してしまった)
唯一仲良くしてくれる友達に「仮の友達」と言ったり、バイト先でも一番下っ端なのに図々しい態度を取ったり、送り迎えしてくれる母親にも「送迎が好きな人」と言って感謝もしない。そんなわけないでしょうが。笑
そんな態度では周りの人が離れていくのは当然で、ある事をきっかけにやっと自分を省みることになるのです。
セリフにもありましたが、本当に彼は映画がなければ生きていられなかったんだろうな。それくらい彼にとって拠り所であり大事なものだったのだということが伝わりました。
店長の好きな映画を観たり、アドバイスをちゃんと聞いたり、ムカつくけど可愛げもあるローレンス君。彼の大学生活が上手くいきそうで良かったです。がんばれ!
絶妙なキャラクター描写で描かれる温かみ
あまりに未完成でやっかいな主人公の青春時代におけるちょっとした成長を描いた作品。監督が自叙伝的に撮った処女作ということもあってか、ストーリーはオーソドックスな青春もので、切り口にも展開にも特段の意外性はない。
ただ登場人物のキャラクターそれぞれが良く描かれていて、時代背景となる90〜00年代の空気が心地よく吸いこめて、セリフのひとつひとつがしっかり伝わってくる良作という印象を持った。ある程度先が読めるシーンが多かったが、それでもダレることなく最後まで映画を楽しめた。
主人公のローレンスは、もはや自信というより虚勢に近いプライドを肥大化させていて、他人への感謝や配慮をまだほとんどできないクソガキの類として描かれている。これは17歳という設定からしても、程度の大小こそあれ多くの人が共感せざるを得ないようなキャラクター造形だと思う。我々はまるで「自分にはそんな時代はありませんでした」という顔で生きているところがあるのだが、彼に共感する瞬間、そんな黒歴史を内面的に白状させられるような気恥ずかしさに迫られる。これがなんとも心地よかった。
ローレンスを演じた役者のなんともいえない可愛げのある風貌や、セリフ回しやタイミングの妙が効果的に発揮され、悲劇的なシーンでもどこかコメディタッチでクスっとできるような、温かみのある作品だった。
鑑賞動機:映画マニア映画かな10割
PTAの『パンチドランク・ラブ』! Red rum! 『スパルタカス』ってそんな…シーンあるのか?
イタイ青春。きっと監督も自分の黒歴史を悶絶しながら思い出して作ったのだろう。
自分のイタさは正視できないが、人様のイタさは半笑いか場合によっては微笑ましく見えてしまう。
役者はまったく知らない人ばかりだけど、主演の彼いいかも。
とても解りやすい青春ムービー!
軽快ながらも厚みのあるストーリー
決してカッコイイとは言えない、ぽっちゃりしたオタク気質な主人公が様々な試練や挫折を乗り越え、成長していくお話。
ああ言えばこう言うみたいな、騒がしくて生意気な性格ではあるけど、好きなことには一生懸命で、表情豊かな主人公が憎めない。
あまり見ない俳優さんだけど、表情の使い分けが巧みで、これから色々な作品に出てくるのが楽しみ。
本作は常に誰かが喋っていて、台詞が多く賑やかだった印象。
口論のシーンも結構多いです。
コメディタッチではあるけど、観る方がハッとさせられるようなキツイ台詞も結構多く、
ポップな雰囲気とは裏腹にストーリーは結構重厚な感じだった。
大学進学を目前に控えた高校生が主人公。
若者特有の、根拠のない自信に満ちあふれた言動が見ていて微笑ましい。
そしてその自信とともに猪突猛進していった先に直面する試練や挫折にぶち当たる場面も、観る方の大人は、かつて自分もこうだったなと共感させられる。
全ての登場人物がチャーミングで、
観ていて全く退屈せず、深い没入感を味わえる青春映画です。
好きな作品でした。
井の中の蛙
妙に惹かれるカナダの街並み。
愛おしくて抱きしめたくなる映画
自分は特別と思う気持ちは大切。しかし他者との比較した上で特別と自覚しているだけでは成長には限度がある。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ “I like movies. So, what do you like?”と訊ける様に成るまでの山あり谷ありを描いた後味爽やかな青春映画。
①私も『マグノリアの花たち』大好きです。知らなかったなんて、ローレンス君、映画オタクとしてはキビシいゾ。
②題名から『ニュー・シテマ・パラダイス』や近々公開される『映画を愛する君へ』の様な映画賛歌だと思って観に行ったら、オタクと言えるほど映画が好きなのはよいけれども、「我が我が」+「マウント取り」+「自分ほど偉いものはない」のとんでも高校生のお話。
車で送ってもらったのに「ありがとう」も言えないし、人・会社・学校に迷惑をかけたり人の信頼を裏切った(オマケにクビにさせた)のに『ごめんなさい』は言わずに言い訳ばかり(高校生だから世間知らずなのは置いといても)。そら、友達も失くすわな、と自業自得なトホホな主人公だけれども、自分の中にも確かにローレンスがいることは否めない。
笑わせる映画だけれども、そこのところはなかなか笑えない、でも誰もが通る道だよな、と共感も誘う、自分勝手・自己チューな映画オタクの話だと切り捨てられない、特に自他共に認める(というか“自”だけかもしれないけれど)映画ファンとしては自分の中にローレンス君を見いだしてしまう、憎らしい映画でもある。。
③最近の#Me, too運動で
生きにくいでしょうね。
主人公ローレンス役のアイザイア・レティネンはラッパーらしいが、見事なハマり役。
だってこの映画を観て主人公に共感した人って少ないと思うし、それは製作側の意図通りな訳で、まんまと思う壺にハマったって事なので。
また批判を恐れずに言うと、うっすらと知的障害を思わせる風貌で、監督ははっきりと口にはしていないが、確信犯的にそう印象付ける事も意図して器用したのではないかと思っている。
ローレンスは全ての基準が自分が大好きな映画1点のみで、それ以外の興味が全くないため世間や対人関係に疎すぎて親友(仮)のマットはじめ周囲を傷つけ孤立してしまう。
精神的にも大きな問題を抱えつつ子供のまま成長してしまったようなローレンスだが、レンタルビデオ店でアルバイトをした事で店長アラナに会い、はじめて他人の事を少しだが考えるようになる。
また同時に唯一常に隣にいてくれたマットからも距離を置かれ、ニューヨーク大学への夢も絶たれたことで現実を受け入れざるを得なくなり、人とうまく付き合って行こうとぎこちないながらも努力しようとする。
もしこのストーリーに続きがあるとしたら、ローレンスは人間をしっかりと見て、表現することができる新進気鋭のカナダの映画監督になっているのかなあなんて事を想像させる。
アラナ役のロミーナ・ドゥーゴは身振り手振りを交えながらテンション高めなコミュニケーションを取るが、その裏に秘めた過去のトラウマと闘いながら今を生きる女性を上手に演じており、強烈なインパクトを残した。
アラナもまたローレンスと真正面からぶつかった事で前を向いて進んで行こうとするところも良いと思った。
チラシには青春コメディとあったような気がするが、だとしたら笑えないコメディだが、カナダの田舎のオタクの成長物語という意味では(少し身近にも感じたしw)興味深く見る事ができた。
あちらの奨学金は片親で所得が低い家庭向けで返済不要のものも多いので、明らかに成績が悪かろうと思われるローレンスであっても受けられることもあるので、そこについては羨ましいと思った。
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