「I hate movies!」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ ひゃくさんの映画レビュー(感想・評価)
I hate movies!
2003年のカナダを舞台に、人間関係がうまくいかず、行く先々でトラブルを引き起こす映画好きな高校生を描いた青春コメディ『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』
トロント国際映画祭を皮切りに熱狂的な評判を呼び、バンクーバー映画批評家協会賞で最優秀カナダ映画賞など4部門を受賞した。(公式HPより)
フライヤーに惹かれ、近くの気になっていた単館系シネマで上映されているとのことで鑑賞。
ラスト数分前まで、ただの映画好きなどうしようもない男子高校生(ローレンス)にモヤモヤ通り越して怒りを覚え、なんなんこいつ、高校生と言えどまじ最悪、胸糞悪い、などとイライラし続ける。
確かにいるいるこういう高校生。自分の好きなものを語りすぎて周りに疎まれちゃったり、こだわりが強かったりで、「好き」のエネルギーを昇華できずにふてくされてる子。高校卒業して、大学とかである程度自由ができて、「好き」の発散方法を見つけられたら花開くタイプ。でも周りはたまったもんじゃない。
ローレンスの周囲の人たちは心優しく、穏やかなぶん、主人公の子供っぽくてどうしようもない言動が目立つ。
その言動に振り回される家族、アラナ(バイト先であるビデオ屋の店長)、クラスメイト。
特にローレンスの母やアラナ、クラスメイトの才能ある女の子など、女性の傷つく姿にシンパシーを感じ、またイライラ。
彼女らはローレンスにきつく言い返したり悲しみながらも、なぜかローレンスを見る眼差しは少し穏やかだ。それはそれぞれ過去の痛みがあるから?もしくは"I like movies!"と訴える彼のまっすぐな瞳があるから?
確かに、人が好きなものを語る顔は非常に眩しい。なんかキラキラ、というかテカテカしている。お金もない、知識もない、技術もない、でも好きなんだ!!!という強い情熱は、なんというか、たくましい生命力を感じて、すごく、いい。
わたしにはそういうのあるっけなあ。
そんなふうに考えだした時からローレンスの魅力になんとなく惹きつけられている。
そして最後、爽やかなラストに繋がる。
わたしは、アラナの語る、「友達を作る方法」がグッと来た。
アラナはめっちゃかっこいい。ビデオ屋の仕事中に叫ぶ"I hate movies!"も、レジに方杖ついて放つ"××××"もめちゃくちゃ爽やかでかっこいい。
いいもん見た気がする。それはローレンスに対して溜まったヘイトから一気に解放されたからだろうか。夢も希望も詰まった若人のエネルギーがまぶしいからだろうか。
年齢は関係ない。だってアラナも辛くても立ち上がって、自分のやりたいことと向き合ってるから。
ちなみに、単館シネマを出た瞬間、同じ映画を見ていた見ず知らずの年配の女性に「いまの映画どう思った?」「あなた、映画お好きですか?」と聞かれ、なぜか彼女のおすすめの映画をいくつか教えてもらった。またこの映画館で会いましょうという約束をして。
なぜ私に?ありがとうだけどさ。
やっぱ映画の力ってすごい。