劇場公開日 2024年12月27日

「生きにくいでしょうね。」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0生きにくいでしょうね。

2024年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公ローレンス役のアイザイア・レティネンはラッパーらしいが、見事なハマり役。
だってこの映画を観て主人公に共感した人って少ないと思うし、それは製作側の意図通りな訳で、まんまと思う壺にハマったって事なので。
また批判を恐れずに言うと、うっすらと知的障害を思わせる風貌で、監督ははっきりと口にはしていないが、確信犯的にそう印象付ける事も意図して器用したのではないかと思っている。

ローレンスは全ての基準が自分が大好きな映画1点のみで、それ以外の興味が全くないため世間や対人関係に疎すぎて親友(仮)のマットはじめ周囲を傷つけ孤立してしまう。

精神的にも大きな問題を抱えつつ子供のまま成長してしまったようなローレンスだが、レンタルビデオ店でアルバイトをした事で店長アラナに会い、はじめて他人の事を少しだが考えるようになる。

また同時に唯一常に隣にいてくれたマットからも距離を置かれ、ニューヨーク大学への夢も絶たれたことで現実を受け入れざるを得なくなり、人とうまく付き合って行こうとぎこちないながらも努力しようとする。

もしこのストーリーに続きがあるとしたら、ローレンスは人間をしっかりと見て、表現することができる新進気鋭のカナダの映画監督になっているのかなあなんて事を想像させる。

アラナ役のロミーナ・ドゥーゴは身振り手振りを交えながらテンション高めなコミュニケーションを取るが、その裏に秘めた過去のトラウマと闘いながら今を生きる女性を上手に演じており、強烈なインパクトを残した。

アラナもまたローレンスと真正面からぶつかった事で前を向いて進んで行こうとするところも良いと思った。

チラシには青春コメディとあったような気がするが、だとしたら笑えないコメディだが、カナダの田舎のオタクの成長物語という意味では(少し身近にも感じたしw)興味深く見る事ができた。

あちらの奨学金は片親で所得が低い家庭向けで返済不要のものも多いので、明らかに成績が悪かろうと思われるローレンスであっても受けられることもあるので、そこについては羨ましいと思った。

カツベン二郎