やっべ、くっそ面白かったぜ!!!
まさかの35分映画だったけど!
(なのに1,700円の超強気価格)
てか、梅津泰臣って、わが性春の『A KITE』(98)や『MEZZO FORTE』(00)のころから、芸風も、やりたいことも、キャラデザも、びっくりするくらい何も変わってないんだな(笑)。
あるいは、『ガリレイドンナ』(13)や『セシル』(14)で普通のアニメーション監督の道を目指したけどうまくいかず、やはり俺にはこれしかないと覚悟を決めたのか。
より正確にいうと、『ヴァージン・パンク』は上記2作のアダルトアニメの、ほぼ「リメイク」のようなものである。パンフ(4000円!!)が売り切れていたので監督サイドの認識がどうかは知らないが、金と名声と自由を手に入れたアニメーターが、シャフトと組むことに成功して、発表形態やクオリティにおいて心残りの大きかった初期2作を、シャフトの高い技術力と2025年現在の作画水準で「納得のいくまで今風に作り直してみせた」というのが、本作の位置づけだろう。
きちんと少女のバストトップも出てくるし、義体や都市のサイバーパンク的な描写、アクロバティックなガンバトル、血みどろのゴア描写など、90年代OVAカルチャーの臭気がぷんぷんするくらい充満している。
なるほど、これが梅津の目指していた美少女アクションの完成形だったんだな、とこちらもなんだか満ち足りた気分に(笑)。
あれから20年経って、梅津特有のキャラデザが若干形骸化していて、どこか動かしづらそうに能面化している気配があるのは気にならないでもないが、少なくとも現代の3D技術を導入したアクション動画は見ごたえ十分で、何よりナラティヴの巧みさが光った。
導入の説明的描写やSF的設定の解説、ヒロインの置かれた立場、戦うモチベーションなど、すべてにおいて流れるようにスムーズに語られていて、自然と頭に入って来る。
近年のアクションアニメではついぞ見ないくらい、親切にかみ砕いたわかりやすい第一話に仕上がっていて、本当に感心した。
あとはやっぱり、羽舞(ウブ)ちゃんがかわいいねえ。
うーむ、こたえられん。
義体設定の中核にあるのが、『攻殻機動隊』のような身体と精神のサイバーパンク的な問題提起などでは毛ほどもなくて、純粋にピグマリオン・コンプレックスと理想のロ●ババア生成という性的な嗜好の充足ただそれだけなのだから、猛烈にタチが悪い(誉め言葉)。
中身は24歳で、外見は永遠の14歳!!
義体でも裸を見られたら恥じらう少女だけど、
大人の悪党をバッタバッタとなぎ倒して鏖殺する、
凄腕のバウンティ・ハンター。くうぅぅぅ!
いかしてる。これぞ美少女アニメ!
しかも命令は絶対で、逆らえば一瞬で電源オフ。
(孫悟空に対する三蔵法師のように支配している)
少女はオヤジのなぐさみものになるしかないが、
中身はもうお姉さんなのでギリ許される。
なんてすばらしい設定であることか。
たとえば、大人が子供の義体を使役して犯罪者の制圧任務に当たらせる話といえば、相田裕の『GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガー・ガール)』(02~12)を想起する向きは多いだろう。あれだって、美少女に生死をかけて戦わせたい、美少女に薄幸な運命を背負わせたい、美少女に無条件に愛してほしい、というどす黒いオッサンの性的欲求の産物であることには間違いないが、少なくとも「シリアスな物語とちゃんと泣かせる鍵ゲー的演出」でそれを糊塗しようとする「良識」くらいは持ち合わせていた。
しかし、Mr.エレガンス(=梅津泰臣)の場合は、自分の趣味の悪さ(=変態性)に対して徹頭徹尾、肯定的であり、一切の迷いがない。実にすがすがしい。
おそらく物語の最後には羽舞ちゃんに壮絶なお仕置きを食らっちゃうんだろうけど、それすら本望だ、と言い切れそうなくらいの突き抜けた歪んだ少女愛がいとおしい。
さらには、監督の危ない「嗜好」を隠そうともせずに、むしろ積極的に作品の「売り」にしていくシャフトの姿勢は、最近の息苦しいコンプラ重視の流れのなかでは、一服の清涼剤ともいえる。ぜひ志を曲げることなく、最高に気持ち悪くて最高に胸にぶっ刺さるエロス&バイオレンスの第2作をものしていただきたい。
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●朝に『メイドラゴン』を観て、昼に『ヴァージン・パンク』を観て、続けざまにご主人様がヒロインにお仕着せのメイド服を用意して、メイドの恰好を強要しているアニメを観たことになる。
●久しぶりに若本規夫が若本節全開で楽しそうに仕事しているのを観た(このあいだ『GUILTY GEAR』で聴いたときは声の調子がえらく悪い気がしていたが、今回は違和感なかった)。なんかこの悪役、刺青とか舌芸とかすげえ既視感あるけどなんだっけ? 『タイバニ』?『ノー・ガンズ・ライフ』?『リコリス』?うーん、わからん。
●作中でもっともすぐれていた作画が、Mr.エレガンスの勝利の舞だったことは内緒。自分の分身だからか、梅津のこだわりのつまったダンスだったなあ(笑)。一人作画かも。
●音楽でベートーヴェンの英雄の第三楽章使ってた? きき間違いか? 別の映画か? なんか朝から5本も観たので脳内ですでにごっちゃになり始めている(笑)
●『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』を撮ったあと、2015年に監督自ら企画をシャフトに持ち込んでから、苦節10年。10年で35分って……あんた、ユーリ・ノルシュテインか??
●僕が観に行った日曜の昼の回は、なんと若者率8割。
僕みたいなオッサンは1割程度しかいませんでした。
しかもパンフは完売。広い劇場で半分くらい入ってるし。
これって若者の間でも梅津の名が知れ渡ってるってこと?
それとも、義理堅いシャフ信が足を運んでくれてるのか?
てっきり、90年代18禁アニメ大好きおじさんたちの集うキモい同窓会になるのかとばかり思っていたので、客層のキャピキャピ感には結構びっくりした。