「長塚京三が全ての映画。」敵 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
長塚京三が全ての映画。
(敵)は死であり、老いという攻撃を受けながら、最後は力つき敗(北)する、を独特な視点と発想と悲哀とちょっぴりのコミカルで表現した秀作だと思いました。
多分若い頃に観たら意味は分かるものの、深い共感までは至らなかったのではと思います。
配偶者との別れ、抑揚のないマンネリ生活、孤独、仕事、収入、病気、ボケ、詐欺、相続、老醜、加齢臭、性などなど、人が死に近づくにつれ襲ってくる大小様々な問題に対し、時には翻弄され、時には受入れ、時には迎合していく引退したフランス文学教授の”老人”を長塚京三が品良く、そして身体を張って演じられておりました。(何度かある入浴シーンカッコよかったですよ)
全編モノクロ映像なので変な生々しさが薄れる代わりにドキュメンタリー感が強く出て来るため、長塚さんの生来持っているアカデミックなイメージと合わさり、本当の独居老人のリアルなノンフィクション映画を観ている感覚になりました。
物語の終盤になり、初めて筒井康隆色を感じることができるのですが、終盤のシーンこそ監督のオリジナルだそう・・・。
長塚さんを最初に認識したのは賀来千香子主演の「典奴どすえ」というテレビドラマでしたが、毎回賀来さんに振り回される上司をコミカルに演じられていたので、当初は喜劇役者さんかと思っておりました。
ですが、私にとって今ではあんな風に年をとれたらなあと思っている一番のモデルケースかもしれません。
平日の日比谷はおじさん、おばさんでいっぱいでしたが、皆様どういったご感想をお持ちになられたのか是非聞いてみたいと思いました。
ちなみに私もフランス書院派でしたw。
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