「憎めない殺人鬼は初めてかも」テリファー 聖夜の悪夢 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
憎めない殺人鬼は初めてかも
2016年の第1弾はAmazonPrimeでひっそりと鑑賞できる程度だったにも関わらず、続編の「テリファー2 終わらない惨劇」の見事なまでのヒットと社会的な影響により、劇場公開されるという異例の人気シリーズである。1作目は80分弱とB級スラッシャー映画らしい尺だったのだが、2作目は何と138分というクリストファー・ノーラン作品に匹敵する上映時間なのだ。そして本作も2時間超えという本編。それでストーリーに大変凝っているのかと思いきや本シリーズは基本的にストーリは二の次である。ヒロインは前作から続投だったり、きちんと"その後"を描いているのはスラッシャー映画にしては好印象だが、回を重ねるごとに過激化していく殺害シーンにはあんぐりである。シリーズ観続けて1つ思うのが、明らかに監督は腕を上げているという事だ。過去作を振り返ってみても演出が微妙な物が多く、それは本シリーズ1作目でも見受けられた所であった。それが予算の増大も相まってより感じるようになったのだろうか。
子供だろうが何だろうが容赦なく内臓祭りに仕立てる"アート・ザ・クラウン"。その過激さは「13日の金曜日」のジェイソンの比ではない。ジェイソンは不気味な怖さが漂い、説得も何も通用しない異界の者という感じがするが、アート・ザ・クラウンは本来のピエロとしての役割も果たしているのである。基本は様々な表情や小道具でこちらを笑かしに来る。あの笑顔が何とも言えぬ世界観を生んでいることに間違いない。ピエロ恐怖症たる人も居るキャラクターだが、ネタとしては「IT/イット "それ"が見えたら、終わり」のペニーワイズ、もっと言えば「JOKER/ジョーカー」のアーサーだって居るが、ここまでコミカルなピエロは中々居ない。ヒット作となろうと真髄はB級の為どこかチープなのだが、その雰囲気が癖になる異様な作品だ。あの仕草、表情、たまに見たくなってしまうのである。
前作からヒロインが続投とは先程も述べた通りだが、そのままあのファンタジー的世界観もより踏襲されている。前作は少しやり過ぎた感が出ていた気もするが、本作はそこだけに頼らず原点に立ち返る様になっており、中々印象が良い。恐らく本シリーズはリメイクされたりなどで予算アップして世に解き放たれた場合、絶対にオリジナルのこちらが恋しくなるはずの作品に違いないだろう。