ネタバレ! クリックして本文を読む
2025.1.15 TOHOシネマズ二条
2025年の日本映画(127分、G)
作曲家・中山晋平の人生を描いた伝記映画
監督は神山征二郎
脚本は加藤正人&神山征二郎
物語は、昭和27年12月30日にて、作曲家・中山晋平(中村橋之助、幼少期:戸井田竜空)の親友・西條八十(渡辺大)が、彼の死去に際して記者に思い出を語るところから紡がれて始まる
そして、物語は明治38年、信州の田舎町から東京へと上京する晋平が描かれていく
晋平は、東京音楽学院に入って音楽の先生になることを夢見ていて、演劇家の島村抱月(緒方直人)の書生をして生計を立てようと考えていた
抱月の原稿を清書しながら、彼の妻・市子(高橋由美子)や、彼の娘・春子(加藤小百合、少女期:上田帆乃佳)たちの面倒を見ることになった
少ない時間でピアノの練習をするものの技術はとうに及ばず、教授たちは落第させるべきだと考えていた
だが、ピアノ教師の幸田延子(酒井美紀)だけは、彼の才能を信じて、卒業させるべきだと押し通した
その後、晴れて卒業生となった晋平は、千束小学校で教鞭を執るようになり、抱月や兄・昭孝(村尾俊明)たちに借りていたお金を返し始めていく
ある日のこと、抱月と女優・松井須磨子(吉本美優)の不倫が発覚し、彼は大学を去って劇団を立ち上げることになった
彼はロシア文学を劇にして、そこに日本独自の歌を加えようと考えていた
そこで抱月は、歌詞を認め、晋平にその作曲を依頼することになったのである
映画は、回想録の形を取りながら、幼少期の頃の音楽との関わり、小学校の教員から作曲家へと成り上がっていく様子を描いていく
彼の母・ぞう(土屋貴子)は「私でも歌える歌を」と言い、抱月は「大衆を忘れてはならぬ」と言う
そして、抱月の劇曲「カチューチャの女」を成功させ、そんな彼の元に、詩人の野口雨情(三浦貴大)が作曲の依頼に訪れた
その後、雨情との仕事を経て、「船頭小唄」「シャボン玉」をヒットさせていく
その頃からビクターレコードと仕事をするようになり、文藝部長の岡(尾美としのり)を経由して、映画「東京行進曲」の主題歌のオファーなども受けるようになった
作詞家に西條八十を迎えて、さらに「東京音頭」をヒットを連発していくのである
映画は、そんな彼を支える妻・敏子(志田未来)との出会いを描き、子どもができない彼女のために養子として卯郎(鳴海竜明)、梶子(鎌田久遠)を迎えて育てていく様子も描かれる
敏子は体が弱く、子どもが大きくなる前に他界してしまうのだが、その頃の晋平は、鹿児島の芸者歌手・喜代三(中越典子)との関係が始まろうとしていた
敏子はそれを察し、死の間際に「良い人を見つけてください」と晋平に促し、子どもたちには「新しいお母さんが来るから」と伝えた
本作の面白さは、誰もが知っている曲の制作過程を覗き見ることができるところで、世代が違えば作詞、作曲者のことなど気にも留めないだろう
私自身も祖父の時代に流行った歌なので知る由もないと思っていたが、劇中で登場した歌はどれも知っていたから驚きだった
タイトルなどでピンと来なくても、曲を聞けばわかると言う感じで、繰り返しテレビなどで使われてきたのかな、と思った
いずれにせよ、楽曲とか人物を知らなくても問題ないが、日本の情勢ぐらいは知っていないと、背景で何が起こっているのかはわからないかもしれない
パンフレットには晋平の年表と出来事が整理されているので、おさらいとしてはOKだと思う
使用楽曲の楽譜や歌詞も載っているし、楽曲が収録されている作品集の説明(&販促)もあるので抜かりがない
18歳〜60代まで1人で演じると言うかなり無茶な構成になっているが、そこまで違和感なく描かれていた
敏子&喜代三のあたりはさらっとぼやかしていたが、市子も夫の不倫を見抜いていたように、基本的に男は隠すのが下手なので、その辺りを忠実に再現するのはこだわりだったのかな、と感じた