「【マイケル・ムーア監督が、米国の多くの人が疑念を抱きながらも、敢えて口にしなかった全米ライフル協会の在り方に、公然と異を唱えた画期的なドキュメンタリー作品。】」ボウリング・フォー・コロンバイン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【マイケル・ムーア監督が、米国の多くの人が疑念を抱きながらも、敢えて口にしなかった全米ライフル協会の在り方に、公然と異を唱えた画期的なドキュメンタリー作品。】
■1999年4月20日、コロラド州。
朝からボウリングに興じたふたりの少年は、その後高校に向かい銃を乱射。
計13人を射殺して自殺した。
なぜアメリカはこれほど銃犯罪が多いのか、ムーア監督はその疑問を解消すべく決死の突撃取材に乗り出していく。
◆感想
・今作は「少年は残酷な弓を射る」「エレファント」(どちらも、恐ろしくも、秀逸な映画である。)を見たせいか、観賞済みと思っていた。
が、恥ずかしながら鑑賞履歴になく、長崎に原爆が落とされた前日の晩に鑑賞した。
・今作でマイケル・ムーア監督は、コロンバンで起きた銃乱射事件を意識しつつ、何故に米国でこのような痛ましき事件が起こってしまったのかを、焦点にしながら作品を描いている所が、秀逸である。
・そこで、見えてきたのは、米国の白人保守層及び政治家に多大なる影響を与えている「全米ライフル協会」の存在である。
日本で言えば「日本会議」の様な極右組織であり、尚且つ政治に深く介入している組織である。
・更に明らかになるのは、「全米ライフル協会」が”自分の身は自分で守る”という建前の元、黒人に対する人種差別を”目立たないように”推進している事実である。
そして、米国人が好戦的な資質を持つに至った背景までが描かれる。
ー 隣国のカナダとの明らかな銃に対する文化の違い。
分かり易いワードで言えば、カナダでは殆どの家では施錠しないのに対し、アメリカでは何重にも施錠する文化。-
<今作が機になり、Kマートが弾丸販売に中止した過程が後半描かれるが、その後も米国では高校、大学での銃発砲事件は減ってはいない。
他国での紛争に対しては、直ぐに発動する米軍であるが、国内では銃発砲事件が減らない米国。
エンディングで流れるポップな”What a Wonderful World"が皮肉極まりなく響いた作品である。>
■マイケル・ムーア監督は今作後、「華氏911」や「華氏119」を公開しているが、今後も米国民が内心思いつつも”言えない”テーマを扱ったドキュメンタリー作品を公開して欲しいモノである。