ノーヴィス

劇場公開日:

ノーヴィス

解説

ローイング(ボート競技)の世界に魅入られた女性の狂気にも似た情熱を描いたドラマ。「セッション」「ヘイトフル・エイト」などの音響を担当したローレン・ハダウェイが、大学時代にローイングに没頭した自身の体験を基に描いた初監督作。

大学女子ボート部に入部したアレックスは、ジョン・F・ケネディの「困難だからこそ、挑戦するのだ」という言葉を胸に、己の限界に打ち勝つために過酷なトレーニングを重ねていく。上級生のケガによって空席になったレギュラーの座をめぐり、スポーツ万能な同期のジェイミーと熾烈な争いを繰り広げるアレックス。しかし、レギュラー入りで得ることができる奨学金がどうしても必要なジェイミーの画策によって、その座は奪われてしまう。雪辱を果たそうとするアレックスの強すぎる執着心は、次第に狂気を帯びていく。

「エスター ファースト・キル」のイザベル・ファーマンが主人公アレックスを演じる。タイトルの「ノーヴィス(Novice)」はスポーツ分野において、一定のランクに達していない初心者のことを指す。

2021年製作/97分/G/アメリカ
原題または英題:The Novice
配給:AMGエンタテインメント
劇場公開日:2024年11月1日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13

(C)The Novice, LLC 2021

映画レビュー

4.0まさに“新鋭”監督の登場。尋常でない切れ味に心を刺されるよう

2024年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

「ノーヴィス」で監督デビューしたローレン・ハダウェイは1989年生まれ。映画の音響編集とミキシングでキャリアを築き、まだ20代半ばの2016年に自ら長編の脚本を書いて監督になると決意し、その5年後の2021年には実現させたという。自身が大学時代ボート競技に没頭した体験に基づくストーリーからもうかがい知れるように、その意志の強靭さは並大抵ではない。

主人公が常軌を逸した自己研鑽で技や芸を極めようとする筋は、大勢が指摘する通り「セッション」や「ブラック・スワン」を想起させる。ただしこれら2作は終盤のハイライトとして晴れの舞台が用意されていたのに比べると、本作の競い合いや勝負はボート部内のレギュラー争いや地域レースにとどまり、従来の定石からすればカタルシスに欠けるように感じるかもしれない。

自身の肉体を徹底的に追い込む割にどこにも行き着けないような、内にこもって視野狭窄になる感じ、生産性や発展性に乏しい生きざまは、しかしだからこそ、旧来の理屈や常識にとらわれない、新しい作り手ならではの先鋭的なセンスなのだろうかとも思わせる。

そしてまた、どんな分野であれ頂点を目指すような人は狂気と紙一重の精神状態で自らを律するのだと思い知らされ、鑑賞しながらもし自身がこんな強迫観念にとらわれてしまったらと想像すると心がグサグサ刺されるように痛み、映画の世界から解放されると安堵して自分は凡庸でよかったなどとしみじみするのも情けないながら正直な心持ちなのだった。

コメントする (0件)
共感した! 8件)
高森 郁哉

3.5凄まじい執念に見入ってしまう

2024年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

これはガツンとやられるというか、精神にグイグイ浸透してくる力作だ。初心者や新米を表すノーヴィスという言葉同様、主人公アレックスは女子ボート部に入り、観客と同じ目線でその特殊な競技世界を体に馴染ませていく。かと思いきや、序盤の段階ですでに我々は彼女の異質さに気づかされる。過酷なトレーニングを自ら選び取り、異様な執念で自らを追い込むその姿。ボートだけではない。学業に関してもこだわりは群を抜く。まるで立ち止まると死んでしまうと言わんばかり。本作においてアレックスが心の内を吐露する事はほぼないが、夜明け前の青みがかった映像、研ぎ澄まされたサウンドデザインが精神世界を効果的に投影する(本作で監督デビューしたハダウェイは『セッション』などのサウンドエディターとして知られる)。そして、主演のファーマンといえば誰もが「あ、あの人!」と驚くはず。表情や体が変化していく役作りといい、凄い俳優に成長したものだ。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
牛津厚信

3.0よく解らない所が

2025年1月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 3件)
共感した! 4件)
トミー

4.0この狂気に戦慄

2024年12月31日
PCから投稿

悲しい

怖い

興奮

 才能を持つ者と持たざる者の違いは何だろう?そんなことを考えさせられた。
 努力をすれば必ず報われるというものではない。しかし、努力しなければ才能は開花しない。個人的に努力を美談とする風潮は好きになれないが、無目的な生き方が人をダメにするのもまた事実である。要は自分の限界を弁えることが大切なのだと思う。何事もほどほど…にというのが幸せになるコツなのかもしれない。

 アレックスはジェイミーと比べるとアスリートとしての素質は明らかに劣る。体は小さいし、スポーツをする体力的な土台作りもしてこなかった。にも関わらず、ジェイミーを超えてやろうと限界を超えたトレーニングにのめり込んでいく。その様子はもはや狂気じみているとしか言いようがない。
 何が彼女をそこまで突き動かすのか。そもそも何故ボート部に入部しようと思ったのか。そのあたりの詳しい理由はよく分からないが、彼女は何事もトップにならなければ気が済まない性格なのだろう。

 また、彼女は物理学を専攻しており、そこで行われる試験も毎回、制限時間ギリギリまで粘る。周りに誰一人いなくなっても、何回も答えを精査するのだ。このことから、アレックスは完璧主義者なのだと思う。

 物語はそんな彼女とライバルであるジェイミーの壮絶なバトルを軸に展開されていく。シンプルな物語ながら、アレックスと教師の恋愛関係などがドラマを幾分ふくよかにしている。また、アレックスには”ある秘密”があり、これもドラマを大きく転換させる仕掛けとして上手く機能していた。
 そして、よくあるスポ根ドラマとも言えるが、本作が他と違うのは努力の先に待ち受ける結果である。そこがこの手のウェルメイドな作品とは決定的に違う所である。非常に苦々しい鑑賞感を残す。

 演出もかなり凝っていて面白い。監督、脚本は、これまでに数々の作品で音響編集を担当してきた新鋭ということだ。本作が初長編作らしいが、すでに一定のスタイルが確立されていることに驚かされる。かなりの手練れという感じがした。

 まず、細かいカットで畳みかける目まぐるしい編集が見事である。アレックスのストレス、強迫観念を再現するかのようなスリラータッチが秀逸である。また、カメラのフォーカスも変幻自在で、彼女の不安定な精神状態を上手く表していると思った。

 更に、音響のプロだけあって、効果音やBGMもかなり凝っている。それこそ、病的と言えるほどのこだわりが感じられた。

 聞けば、監督自身、学生時代にボート部に所属していたということである。おそらくは自身の投影も少なからず入っているのだろう。音響編集から監督にまでのし上がるには並大抵の努力では無理である。もちろん人脈も重要だし、運も必要だが、やはり努力がなければここまで来れなかっただろう。そういう意味では、アレックスは監督自身という見方が出来るかもしれない。

 個人的には、ダーレン・アロノフスキー監督の一連の作品も連想させられた。特に、「ブラック・スワン」はドラマ的にも結構影響を受けているような気がした。

 尚、一点だけ残念だったのはクライマックスシーンである。薄暗い画面が続き何をやっているのかよく分からなかった。せっかくのロケーションも活かしきれてないのが惜しまれる。

 キャストでは、アレックスを演じたイザベル・ファーマンの熱演が素晴らしかった。正に体当たりの演技と言っていいだろう。彼女は「エスター」の怪演が強く印象に残っているが、それを超える代表作がついに出たという感じがした。ラストの表情が秀逸である。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ありの