花嫁はどこへ?のレビュー・感想・評価
全112件中、41~60件目を表示
2本目
インドの闇を照らす、強く美しい女性の生き様
2001年というから今から23年前、インドの田舎の婚礼の際に花嫁がベェールを被ったまま義実家へ嫁ぐという風習のせいで、取り違えられた花嫁二人が巻き起こすコメディタッチのヒューマンドラマ。ちょっとサスペンス要素もあります。
現代のインドのその地域においてどうなってるかは存じ上げませんが、女性の社会的地位が総じて低く能力のある方々がそれを発揮できず埋もれていたり、その中で特に家庭内でのお嫁さんの自由が束縛されている描写が、違和感なくストーリーに溶け込んでおりました。
二人の花嫁さんはどちらも美しい容姿ですが能力や性格などは対照的に描かれてていて、かたや見た目は花嫁然として可愛らしく一通りの家事などはこなすが、おそらく彼女はこれまできちんとした教育の機会を得られたと思えず、いろんな面で依存的です。もう一方は勉学に励むうち自立した考えを持ったと思われ、自らの能力で率先してリーダーシップをとるタイプです。
それぞれの置かれた立場は違い、ストーリー上遭遇する至難のレベルも種類も全く別物ですが、彼女達が頑張って苦難に立ち向かう姿は美しく光り輝いてみえました。彼女らに感化された周囲の女性達が人生の輝きを取り戻す様も大変結構でございました。
逆に言えば、その光に照らされて浮き上がるインドの闇は暗喩レベルでも相当悲惨なもので、一部の悪習は今でも残っているのでは・・・と嫌な想像をしてしまいます。
最後は意外な結末で、日本人の倫理観からするとちょっとびっくりですが、巨悪?は滅ぶべし・・・なのであの強引さはむしろ好きです(笑)。
ぜひ、ご覧になってください!
愛の試練系のコメディ
2024年。キラン・ラオ監督。20年以上前のインドの農村。結婚したばかりの夫婦は混雑する電車に乗り込んで新郎の実家へ。その間新婦はベールで顔を隠したままだったが、実家についてみると、花嫁は入れ替わっていて、、、という話。花嫁の取り換えから起こる社会派コメディ。
女性蔑視がまかり通るインド農村の様子を「コメディ」に仕立てるのに20年かかったということか。愛の試練が試されるドラマ(夫婦はもとに戻れるか)を基本としつつ、ありとあらゆる女性差別(夫の名前を言わない、顔を見せない、外で働けない、大学に行けない)が描かれる。しかも、それが日常的に賄賂を受け取る警察の腐敗と同じ程度に笑いのネタとして消費されている。もちろん、それぞれの差別には差があって、「夫の名前を言わない」は笑い飛ばされている軽いネタだが、「女子は大学にいかない」はほとんど笑いの様子がない深刻なネタだ。
期待した群舞はなかったが、単純なキャラ造形とゆったりとしたわかりやすく泥臭い展開はインド映画らしい。
待望のアーミル・カーン作 その巧さ
癖の強いボリウッド作品において、最も外国の人がとっつき易いのがアーミル・カーンの作品ではないでしょうか?登場人物は一般的な人が多く、急展開な恋愛やフラッシュモブのようなダンスがほとんどなく、そして何かしらのメッセージ性を持っているあたり、そんな気がしていて、本作も楽しみにしていました。
まず設定が面白いし巧いですよね。新生児の取り違いはまだなんなとなくわかるけれど(『そして、父になる』のように)、花嫁を取り違えるってどういうこと?と、思うのですが、映画に描かれている風景がインドの日常的な結婚の慣習であるのあれば、ありえなくはないのか、と納得してしまいます(映画の設定は20年ほど前の時代だったので、現在は全く異なるのかもしれません)。
そして登場するこれまたキャラの立つ人物たち。境遇や性格、思想などが異なり、それぞれに思い描く幸せの形が異なるのも興味深いです。ここには、その幸せを享受出来ない社会であるというメッセージも見て取れるのでしょう。
ラストには意外な人物の心温まる行動にニヤりともホロりともさせられ、見事でした。
現時点で今年のベスト1
世界中の女性に送るエールに涙が止まらない
時代は2001年のインド、
田舎の村を繋ぐように走る列車に中には日本と同じ様に
お日柄の良い日にはあちこちに新婚カップルがいっぱい。
その他にも色んな乗客でほぼ満員。
日本の花嫁さんの綿帽子と同じように、インドの花嫁さんも
皆、頭から同じような色柄のベールを被って顔を隠したまま。
そんなだから、主人公の花婿さんが降りる予定の駅に着く頃、
ついウッカリうたた寝をしていて、ハッと気がついた時に
大慌てでベールの花嫁の手を掴んで列車を降りたのはいいのだけど
家に着いて、家族に挨拶する段になってやっとベールを外した花嫁を見て
〜〜〜君は、誰!!??
な、事あるかい!!(笑)
あり得ない素っ頓狂な出だしの映画ながら観ているうちに、
まだ幼さの残る花嫁さんが今まで全く知らなかった外の世界に出会い
新しい自分を発見してゆく姿と、
古い因習に押し潰されそうになっていた自分を、もう一度奮い立たせて
自分の生きたい道を突き進もうとするもう一人の花嫁さんの姿。
どちらも泣けるんだよ!!ぜひご覧ください。
で、月に8回ほど映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
制作に名を連ねるアーミル・カーン!
彼が関わる映画「きっと、うまくいく」や「きっと、強くなる」は
どれも笑いの中に深刻な社会問題が散りばめられて
楽しく笑いながらも世の中の不平等や不条理に
抗う力が湧き上がる作品になってます。
映画を通して全女性にエールを送る暖かく、力強い映画です。
絶対劇場で観てほしいです。
キレイな涙で、勇気を与えてくれること間違い無し!!
学び
もっと上映館増やして!
レビュー点数がめちゃ良かったので気になり、前日にチケットを取りましたが、既に残りわずかでした。宣伝してるわけでも話題になってるわけでもないし、上映館少ないのに何で? あまり期待し過ぎるとイマイチに思うパターンも多々ありますが、この作品に関しては本当に期待通りというか、それ以上の面白さでした。今年は例年以上にハズレのない鑑賞体験が多いのですが、まぎれもなくベスト5に入るくらいの良作でした。
お話の骨格は、いわば「吉本新喜劇」にあるパターンというか、「んな、アホな」とつっこみたくなる展開なのですが、出演者が皆適役で、誰一人知りませんけど、上手い・かわいい・美しい・おもろい。なにより、コメディ要素とミステリー要素をちりばめた脚本が素晴らしい。女性の権利や生き方について、主張している部分があるのですが、そこをメインに訴えるのではなく、ユーモアと暖かさでポジティブに表現しているうえ、どうなることやらと目が離せない展開が続き、最後は愛しい気持ちにあふれて涙が止まりませんでした。
インド映画は先日「ジガルタンダ ダブルX」を観て、意外な展開に驚き感動したばかりですが、ホントにひとくくりにはできない幅広さと奥行きがあると思いました。やたら集団ダンスシーンが出てくるとか、似非ハリウッドアクションとか、あまり良い印象を持ってない人はぜひこの映画を観てほしいです。2時間ちょっとでインド映画にしては短めですし。大阪では上映館が非常に少ないので、「RRR」みたいに口コミで増えてロングランしてほしいと願うばかり。でも、一方で自分だけのお気に入り作品にしておきたい気持ちにもなる、そんな「愛しい映画」です。
女性は強い
インド警察に捜査依頼すると有料なの?
嫁さんと電車に乗った旦那が、間違って別の女を連れて下車。確かに同じ服装で顔も見えなかったけど、2人いた事に気づいてなかったのかなぁ?何より怪しかったのが、知らない男に手を捕まれて立たされたジャヤが拒絶しなかった事。何も喋らないで、男の家族と知り合いになるなんてな。取り残されたプールも怪しいと思ってたら寝てたのね。納得。最初に出てきた新聞の花嫁詐欺の記事。詳細は良く分からなかったな。2001年の話なんだけど、古い建物や携帯電話や人間関係や似顔絵ポスターなど、もっと昔の時代じゃないかなって感じた。ま、インド映画を観るたびに同じ事を感じる自分だけどね。旦那達が居なくなった嫁さんを探し始めるんだけど、犯罪者はジャヤじゃなくて旦那の方だったのかな?でも嘘だらけのジャヤの方が怪しかったね。それにしても他人の妻を居させる2組の家族。それって親切なの?旦那の方に帰りたくないからって、厄介になる2人。罪悪感なかったの?だったら離婚すればいいじゃん!ずっとモヤモヤしていたら、警察がいろいろ解決してくれた。とても意外でした。最後はまさかのハッピーエンド。結構楽しかったです。
女性への優しさと厳しさがこもった応援と叱咤激励
キャラ造詣が全部秀逸で、特に贈収賄大好き悪徳警官の「最後の判断」が面白かった。
下敷きとなっているのが、インドにおける女性の人権のなさへの猛烈な批判。
また、そういった状況を受け入れて黙っていることの愚かさの指摘。
そんな、女性への応援と叱咤激励。
本作製作のアミール・カーンと、その元妻で本作監督のキラン・ラオ両名の、優しさと厳しさが感じられる佳作でした。
世界の「男女平等ランキング2024(ジェンダーギャップ指数)」では、インドは146カ国のうち127位とかなりの下位なわけで、まだまだ先進国と言えんよなぁ、と思いつつも。
実は、日本は118位(2023年は125位)と、世界から"こんなインドと変わらない"と判断されていることをとても恥ずかしく感じました。
全112件中、41~60件目を表示