「ヒーローの消費」靴をなくした天使 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーローの消費
DVDの販売タイトルは
「ヒーロー 靴をなくした天使」ですね。
検索してみたところ「ヒーロー云々」と名のつく映画がこんなに多くてびっくりです。
ヒーローが掃いて捨てるほど溢れかえっていて、なんだか呆れました。
TVのワイドショーは「ヒーロー」と「ヒール」を双方探し回っています。それを特ダネとして飯のタネにしているレポーターたちの姿は、世界共通のようです。
視聴者がヒーローとヒールが大好きだからです。
でもまあ、そこ、最近よくあるシリアスな「メディア告発映画」としてではなく、軽妙なコメディとして、
それも敢えてチープに取り上げるところが面白かったですね。
・靴を失くして⇒“桶屋が儲かる”方式。
・片一方だけの靴の貧乏人が一夜明ければ大金持ちになる⇒シンデレラのストーリーがモチーフ。
ヒーロー信仰とアメリカンドリームのチープさをダブルで嘲笑う いけない映画だろうなあ、これ。
そしてバーニーとババーだけの「タネ明かし」でハッピーエンド。
バーのマスターが言ってました
「いいじゃないか、ヒーローじゃなくったって人間に変わりはないんだから」(吹替版)
ここを、この映画は言いたかったのでしょうね。
そして
善意と勇気は世の中に連鎖するという事。
そしてさらに
誰しも善意と勇気の一歩は、誰しも一度試してみると、あとはハードルが下がるだろうという知恵も。
エンディングはお説教臭かったですけど。
主演のダスティン・ホフマンは、いつもこんな変わり者の役ばかりをもらう俳優。本作でも巨悪との対決とか大きな美談などには一向に興味を持示さない“こそ泥”としてのキャラクターで貫徹。安定の演技でしたね。
まあまあの映画でした。
・ ・
ただ、気になったのは
「墜落機での救命活動」のエピソードと、
「ベトナムでは敵をたくさん殺した英雄」である事が、まったくためらわれる事なく劇中で同列に語られていて「これこそヒーロー」と称賛されているのには、ちょっとどうしても違和感が拭えなくて。
ブラックジョークかと思ったが、矢張り かの地では退役軍人はヒーローとして絶対的尊崇の対象であり、ストレートに持ち上げられている様子。
ベトナム戦争から20年後の制作なのにあれです。
僕は正直引きました。
ハリボテの飛行機が鉄橋に引っ掛かるのは笑えたんですけどね。
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【おまけ】
バーニーは54人の乗客を救いました。
以下は有名なアメリカのスタンダップコメディですが、
「緊急救出の小話」です。
クルーズ・ツアーの豪華客船が浸水して、今や沈没の危機です。
さあどうする!
「尻込みして渋る乗客をどうやって海に飛び込ませるか」って船員の腕の見せどころです。
国籍ごとに使い分けるプロの言葉で、各国の乗客が次々と海に飛び込んだという、その《秘訣》は?
ロシア人の乗船客に
「お客さん、ほら見えますか?水平線のあそこにウォッカの瓶が流ていますよ!」
で、ドボン!
イタリア人に
「あ、あそこに美女が泳いでますね!」
で、ドボン、
ドイツ人に
「規則ですから飛び降りて下さい」
で、ドボン!
くだんのアメリカ人に対しては
「あなたが最初に飛び込めば、あなたは間違いなくヒーローです!」
だそうです(笑)
で、この小話には日本人乗客も含まれているんです、
「ほらご覧なさい、皆さん飛び込んでおられますね」。
・・これで日本人は言うことを聞くんだそうです。
悲し。笑えん。