「ⅠとⅡのどちらが良いか、ということはなく、それぞれ味わいが異なり面白い。」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
ⅠとⅡのどちらが良いか、ということはなく、それぞれ味わいが異なり面白い。
「グラディエーター」の時もそう思ったが、まずは地味な時期を選んだな、という印象を受けた。ローマ皇帝は50人以上いるが本作でも再々名前の出るマルクス・アウレリウス帝の後、約40年程の帝政混乱期。有名なのは悪名高いカラカラ帝ぐらい。グラディエーター両作品はこの時代にすっぽり設定が収まり、いわば不安定の時代に生きた父(マキシマス)と、母子(ルッシラとルシアス)の物語となる。
前作はコモドゥスという唯一無二の悪役がいて、対するマキシマスの復讐に筋が一本化されておりシンプルかつスピーディーで分かりやすく共感もしやすかった。ところが本作では背景がいささか複雑。政治的には皇帝が双子で二人いるし元老院もまだ機能している。登場人物にはアカレウス将軍もいるし、何と言ってもマクリヌスの存在感が群を抜いている。このあたり脚本はよく整理されており、史実ではカラカラがゲタを殺してから暗殺されるまではもう少し時間があったり(その間に悪行の限りを尽くした)、マクリヌスが実際には帝位を簒奪し息子をも皇位に就けたりしているところは端折っているものの、全体として時代の雰囲気はうまく表現できていると思うのです。ただ、このような背景ではルシアスの考え方や行動は複雑にならざるを得ず、直情径行なお父さんとは違った人物に描かざるを得ない。ここが本作が前作に比べ何か陰鬱な感じを受ける原因かもしれないです。印象としてはゴッドファーザーのパート1とパート2の違いみたいな感じ。あれも万事どっしり構えたマーロン・ブランドを描くのと、複雑な情勢の中、苦悩するアル・パシーノを描く違いが作品に表れていました。二代目は大変なのです。
スペクタル演出の大好きなリドリー・スコットですか、本作では人間ドラマに重きをおいたせいかやや抑制的な印象を受けました。これぐらいがちょうど良いよ。