「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
前作が有名なのは知っていたので「観なくては」と思ったが、前作を観ていなかった。今さらながら、まずは配信で前作を観賞し、本作公開を待っていた。
【物語】
ローマ帝国が繁栄した時代。妻と幸せな暮らしを送っていたハンノ(ポール・メスカル)は、侵攻して来たアカシウス将軍(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍との戦いの中で最愛の妻を失い、捕虜となる。
ハンノは彼の非凡な格闘能力を見抜いた奴隷商人・マクリヌス(デンゼル・ワシントン)に買われる。マクリヌスは彼を剣闘士“グラディエーター”として地方の剣闘会で鍛える。 ハンノは屈辱的かつ明日の命も知れない境遇の中で、アカシウスへの復讐だけを心の支えに生き残り続ける。
地方では無敵の剣闘士となり、マクリヌスにローマに連れて来られたハンノはついにコロセウムに立つ。
【感想】
前作観ておいて良かった。 話は独立しているとは言え、主人公あるいは皇帝の伯母(?)ルッシラの言葉が度々前作の主人公マキシマスに及ぶため、前作を観ていないと全然ピンと来ないはず。 また、ローマ時代にコロッセオで行われたこの信じ難い見世物興行を呑み込んでおくにも、前作観賞は必須と思う。
ということで、前作の余韻を十分継承しつつ展開する本作。作品のスケール感や重厚さは十二分に感じることができる。さすがだと思った。 海戦を模擬したシーンがあるが、当時本当にそういうことが行われたらしいので、一見の価値有りだ。
逆に展開は前作の焼き直し的なところがあるが、権力闘争の要素が前作より色濃く出ている。その要素のキーとなる人物を演じるデンゼル・ワシントンが役者陣の中では一番存在感を放っていた。
それでも、面白味という点ではイマイチかも知れない。 俺的には面白いと言うよりも、(前作も同様なのだが)どうしても不可解さが頭から離れない。この歴史的巨大建造物コロセウムで行われた残虐な見せ物が当時の観客を熱狂させたことが。
権力者が最下層の人間、奴隷などをもてあそんだというのはまだ分かるが、大衆も一緒になって熱狂したというのはなぜだ? という謎がどうしても解けない。 現代にこんな見せ物があってもさすがに誰も喜ばないだろう。どういう心理状態に置かれると人間はあのショーを楽しんでしまうのだろうか?
日本の江戸時代に士農工商の下に穢多非人を置いて庶民の不平・不満のはけ口としたことと一緒なのだろうか? 権力者に抑圧された大衆が奴隷が殺されるのを見て日頃の不満や重圧発散したのだろうか? 心理学的な解説を聞きたい。
ちなみにストーリーや設定とは別の話だが、数年前にローマ観光をしてコロセウムや周囲の遺構を見たが、本作を観て「ローマ時代はこんなだったのか」と想像を膨らませることができた。コロセウムで海戦を模擬したシーンがあるが、当時本当にそういうことが行われたらしいので、「あそこでこんなことまでしたのか」という驚きも有った。
コロセウムに行ったことがある方はそういう楽しみもあると思う。と言うか、本シリーズを観てから行けば良かったと思ったので、これからローマに旅行に行く計画をお持ちの方には強く勧めたい。
いずれにしても、前作の予習必須。前作公開時に観た人も20年以上も前の話なので復習してから観賞することをおススメします。