「違和感はあるけど」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感はあるけど
前作を復習してからのドルビーアトモスでの観賞となった。
私はその辺りとても鈍感なので、ドルビー劇場と通常料金の差額ほどには体験に実感の差を感じないのは情けないところ。
「これが本当の黒」の時点がMAXでした。
リドリー・スコット監督作品は苦々しい話も多い中、グラディエーターの一作目は分かりやすい勧善懲悪であり、悲劇でもあり、英雄譚でもあり、一粒で何度もおいしい作品で素晴らしかった。
正直、同監督とは言え、24年ぶりの続編がそれを凌駕するとは思っていなかったので、ハードルは多少低めで臨んだワケだが、結論からいうと、「まあ、そんな感じ」。
もちろん、2時間半程の上映中はずっとワクワクしたし、どんどん展開されるお話も面白い。
エンタメ作品としては「前作」というハードルが無ければ十分傑作の部類だと思う。
ただ、細かなところであちこち違和感があったのは否めない。
結局「マクリヌス」とは何者だったのか。
物語の大きな部分を司る存在なのに、どういう経緯で何をしたかったのかがよく分からない。
デンゼル・ワシントンはもちろん良いんだけど、ちょっと主役が霞んでしまうほど目立ってたのは気になった。
そして、この話の大きなポイントになる、「ルシアスの出自」の問題。
ルシアスがマキシマスの息子だと聞かされると、前作での泣きポイントだった、マキシマスの惨殺された妻と子供を失った悲しみが今になって「は?」ってなる。
こういう、続編で前作の感動が目減りするような設定はいかがなものか、と思わざるをえない。
今作のアカシウス将軍にとっては、奥さんに隠し子がいて、それを奥さんが必死でかばおうとするって話になるワケで、将軍カワイソって感じ。
あと、奴隷だったのに結婚指輪は持ってても良かったんだ、とか。
将軍の奥さんが、単身でグラディエーターと牢(?)の中で話すとか、他人からはどう見ても「何かある」と思われる不自然な行動なのに、白昼堂々会いに来るとか。
ラスト、マクリヌスを倒して両軍を前にルシアスが声を上げたシーンも、あの時点でみんなはルシアスが王族だって知ってたのかな。大半は知らないんじゃないのかな。
でも、そういう細かな違和感も、スクリーン上で起きていることにどんどん飲み込まれていく。
特にコロッセオでの死闘の数々は、どれも凄かった。
もう、あのヒヒの恐ろしいこと。
そしてなんと海戦まで!
カラカラとゲタのバカ兄弟もよかった。
十分アトラクションムービーとして堪能して、帰り道に「…あれ、結局なんだったんだろう?」という作品。
そう。
自分があのコロッセオの観客として観る限りは楽しめる。