劇場公開日 2024年11月15日

「前作ファンにはたまらない見事な続編」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 アラ古希さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前作ファンにはたまらない見事な続編

2024年12月7日
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鑑賞方法:映画館

字幕版を鑑賞したが、字幕担当が戸田奈津子だったのでゲンナリした。いい加減に引退してほしいものである。字幕監修まで付いていたが、今作でもいくつかおかしな訳があり、誤訳の女王はいつまで映画界に迷惑をかけ続けるつもりなのかと腹が立った。

24 年目の続編ということで、前作の熱烈なファンだったことからワクワクして観に行った。史実を下敷きにしていくつか改変を加えながら、コモドゥスが暗殺された後の時代を描いている。前作の登場人物を丁寧に拾って書き上げたと思われる脚本は、実に良くまとまっていて、時折前作を思い出させながら進行したので、私のような前作ファンは猫の下顎を撫でられているかのような状態に陥った。

ローマ皇帝は原則的に世襲ではなく、前皇帝が見込みのある者を後継者と指名して元老院の承認を得て権力を継承する形式が本来のもので、後継者の指名をすることなく前皇帝が崩御した場合にやむを得ず世襲で皇帝が決まることがあったが、歴代ローマ皇帝で世襲によって即位した者は、ほぼ悉く腐り切ったクズばかりだった。前作のコモドゥスも愚帝で史実でも暗殺されているが、今作で登場するカラカラもゲタも最悪の皇帝だった。

史実のカラカラとゲタは双子ではないものの同じ父母から生まれているのだが、兄弟で父親と共同統治をしながら非常に仲が悪く、父の病死後、母が用意してくれた仲直りの席上でカラカラがゲタを殺害してしまっている。母親の目の前で、ということになる。カラカラはゲタを殺害しただけでは飽き足らず、ゲタ寄りだった貴族を片っ端から殺害して財産を奪ったばかりか、ゲタの追悼をすると呼びかけて集まった数万人の市民を虐殺している。世襲がいかに愚かなことかというのは、歴代ローマ皇帝を見れば明らかなのである。

当時の身分は元老院階級、騎士階級、平民階級に分かれていたが、これは世襲ではなく、財産の多さで決まる一代限りのものだった。皇帝は元老院階級でなければなれないが、平民や自由奴隷出身であっても、財産さえ蓄えれば元老院階級まで出世が可能であったことから、マクリヌスのような人物がいた可能性はゼロではなかった。皇帝まで成り上がって見せようという野望は、元老院に反感を持たれなければ不可能ではなかったのである。

前作から登場しているマルクス・アウレリウス帝の娘ルッシラと弟のコモドゥスは実在の人物であるが、マキシマスとルシアスは架空の人物である。実在の人物の中に、見事に架空の人物を入れて壮大な物語を作り上げる手腕は実にしっかりとしたものである。エイリアンシリーズにおいて、特にプロメテウス以降のリドリー・スコットは全くの邪魔者であるが、「最後の決闘裁判」や「ナポレオン」などの歴史物では見違えるように冴えた演出を見せている。

本作も前作同様に古代ローマとコロッセオの再現映像が実に見事である。コロッセオに海水を張って海戦を模した戦いを再現したという話は史実に基づくもので、ローマ人たちの建築技術の見事さを物語っている。ただし、鮫は泳ぎ続けていなければ窒息死してしまうので、生きたまま輸送してコロッセオの海水に放つことはできなかったはずである。

戦闘場面はいずれも迫力があって手に汗握るものであり、俳優陣のアクションは見事なものであった。デンゼル・ワシントンは既に 69 歳になっているが、老いを感じさせないキレッキレのアクションを見せていた。

音楽担当は「ウルヴァリン」「シュレック」「プロメテウス」などを手掛けているベテランで、前作のハンス・ジマーの曲を回想場面などで巧みに流用しながら独自のスコアを書き上げていて非常に見事だった。エンディングのリサ・ジェラルドの歌声は、壮大な物語を完結させる力を持っていた。実に見事な続編だった。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4=100 点。

アラ古希