BISHU 世界でいちばん優しい服

劇場公開日:

解説

愛知県尾張西部から岐阜県西濃にまたがり、世界三大毛織物の産地として世界的に注目を集める尾州地域を舞台に、尾州ウールの織物工場を営む家族の物語を描いたドラマ。

愛知県で暮らす史織には発達障害があり、明るく誰に対してもフレンドリーな反面、生活習慣へのこだわりが強く苦手なことも多い。史織の姉でファッションデザイナーの布美は、東京で自分のブランドを展開していたものの行き詰まって地元に戻ってくる。父・康孝は経営する織物工場が経営難に追い込まれながらも亡き妻との約束を守るため、娘との生活を支えるべく奮闘している。ある日、史織が描いた服のデザインを見た親友・真理子の提案で、史織は一宮市のファッションショーへの出品を決意する。布美は史織の挑戦を応援したい気持ちと背中を押してあげられない気持ちの板挟みになって葛藤し、康孝は史織が傷つくことを恐れて猛反対する。

「ミッドナイトスワン」で演技初挑戦ながら注目を集めた愛知県出身の服部樹咲が長編映画初主演を果たし、同じく愛知県出身の岡崎紗絵が姉・布美役、吉田栄作が父・康孝役で共演。「向こうの家」の西川達郎が監督を務めた。

2024年製作/125分/G/日本
配給:イオンエンターテイメント
劇場公開日:2024年10月11日

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(C)2024映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会

映画レビュー

3.5発達障害の主人公と家族の話として切実で啓発効果も。尾州ウールPR案件臭さは気になる

2024年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

西川達郎監督は1989年生まれ、東京藝術大学大学院の修了制作品「向こうの家」(2019)から5年後の本作で商業映画デビューなので、30代半ばの若手としてかなり順調と言えるのではないか。インタビューで、もともと発達障害について描く映画をやりたいという思いがあり、製作サイドからウールの産地である尾州を舞台にした機織りの話というオファーが来て、2つの題材を織り合わせたと語っている。

高校生の主人公・史織は軽度の発達障害がありながらもファッションデザインに特別な才能を発揮する、サヴァン症候群を思わせるキャラクターとして描かれている(サヴァンは「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたキャラクターで広く知られるようになった)。史織の生きづらさや努力、成長を繊細に表現した服部樹咲の魅力が光るが、吉田栄作や岡崎紗絵が演じた家族の苦労や葛藤も丁寧に描かれていて好感を持った。

とはいえ、職人技に支えられる伝統的な毛織物産業と、目にしたものからのインスピレーションをたちまちデザインに表現する天才デザイナーの相性がそもそもよくないのでは、という疑問も。史織の家の織物工場が産業の斜陽化のあおりで経営が傾くも娘の天賦の才で救われるという筋は、表面的には感動を呼ぶサクセスストーリーに見えたとしても、外国製の安価なファストファッションの普及におされる高級素材の需要減や、毛織物に限らない伝統的な地場産業の事業継承といった差し迫った問題から目をそらす現実逃避のようにも思えてしまう。

最後に、映画の内容には直接関係のない話だが、PR案件臭さについて(長くなるので、興味のない方は読まずに時間を節約してください)。本作を紹介するコンテンツなどで「尾州はイギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラ(ビエッラ)と並ぶ世界三大毛織物産地といわれている」と盛んに喧伝されていて、ファッションに詳しくない評者はへえ、知らなかったと最初は思ったが、少し調べるとなんだか怪しいぞと感じはじめた。Wikipedia日本語版の「ハダースフィールド」と「ビエッラ」の項にはそれぞれ「世界三大毛織物産地の1つと言われる」と書かれているが、ソースは2020年の中日新聞記事と2024年の岐阜新聞社記事で、英語版のHuddersfieldやイタリア語版のBiellaの項には三大産地といった記述はない。"Bishu Huddersfield Biella"で検索をかけても、英字ニュースメディアなどで三大産地として紹介しているコンテンツは見当たらない。エンドロールの最後のほうに協力としてクレジットされている「公益財団法人 尾州ファッションデザインセンター」は、昭和59年に設立された財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンターが前身で、今年4月1日に現名称に変更された。

ここからは個人の推測だが、5年くらい前に地域の業界団体が高級毛織物のブランド価値を高める狙いで、全国のあちこちにある地名の「一宮」ではなく、徳川氏三家のひとつでもあって由緒ある「尾州」をブランド化し、「世界三大産地の1つ」を売り文句にして積極的にPRしていこうという動きが始まり、そのプロモーションに地元新聞社も乗って2020年以降の記事で紹介したのではないか。その流れで、尾州ウールを題材にしたご当地映画も作られた、と。とはいえ、ハダースフィールドもビエッラも自らは三大産地と名乗っていないし、海外メディア等の客観的なデータやソースもないのに、「世界三大産地の1つと言われる」と、受動態にして主語を伏せて客観性を装うのはありがちとはいえ姑息な感じを受ける。言われる、じゃなくて自分たちで言ってるんじゃん、みたいな。

町おこしや地場産業振興それ自体を否定するつもりはまったくないし、きちんと出資して宣伝していく動きも立派だと思う。地場産業や観光名所などのプロモーション目的でご当地映画が作られることも、あまり知られていない地域の魅力などを観客が知ることができるという点で有意義だと感じる。引っかかるのは、“世界三大毛織物産地”のような、大風呂敷を広げたほぼ自称のキャッチフレーズで知名度を上げようとするあさましさ、姑息さだ。そうした誠実さに欠ける宣伝の手法が、映画に備わる魅力や志を損ねてしまう気がするのだが、いかがだろうか。

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高森 郁哉

4.5親が子を思う気持ち、家族、友人の優しさに感動

2024年11月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

地元愛知の一宮市は繊維の街として有名では有るが、布を作るまでの工程、分業の工場があったことを知るにはとても良い、地場産業の衰退もあるけれど自分達が住む地域の産業の歴史を知ることは大事、それと発達障害の事を知り偏見を減らし、理解してもらうにはきっかけとして良い映画だと思います。中学生や高校生に是非観てもらいたい映画。
私も娘がいるので父親の吉田栄作の気持ちがよくわかる。自分の子供が恥ずかしい思いをすることに耐えられない、だから行動に制限、約束事で雁字搦め過保護になってしまうのは凄く分かります。
しかし映画の終盤、恥ずかしいって何?本人が思ってなくて周りがそう思う事なのではと。
娘の幸せを思うあまりに過保護になって本人の幸せになる邪魔をしてるのではないか、また家族が犠牲になってると思うか思わないか、健常者の周りの者は障害がある者、弱者へ優しく接するのは当たり前のこととしても偏見はあってまして未成年は残酷な者である。
親友と家族に支えられ夢へ踏み出す主人公とサポートする家族、友人に感動させられました。
服部樹咲さんの発達障害を持つ高校生の演技も素晴らしい、トレンディ俳優から父親役が素晴らしい吉田栄作さん、その姉役の清水美砂さんも良かった。
家族模様を描きつつ発達障害の理解が進まない社会も描き、尚且つサクセスストーリーに仕立て上げており昔の文部省選定映画でも良いほどの出来なんです。
理解がないのは毎日顔を合わせる学校の担任、クラスメイトで表現してるようですね。
担任は教育者として未熟過ぎるとさえ思いました。
学校で障害を持つ友達がいることは、大人の指導次第でクラスの人数だけそれの理解者が出来ると思うんですよね、私も小学校で聴覚の障害がある子と友達でしたが、大人になっても障害に理解出来るのもその頃の経験があったと思ってます。
モンスターペアレントは自分の子のクラスに障害を持つ子がいると自分の子がいろんな点で遅れや時間を取られたりするからと否定する親もいるそうですが、優しい気持ちを持つ子供に育てるには障害を持つ子と一緒に学校生活を送ることは何事にも代えがたい経験が出来ると思うんですよね。
世界で一番優しい服という副題にピンと来ずに観たのですが、映画を観て理解が出来ました。
優しい気持ちになれる良い映画でした。

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共感した! 2件)
梅じんの相棒

4.0なんとも言えない暖かさが…

2024年11月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

映画のロケ地の高校出身でしかも実家が毛織物業であったご縁もあり鑑賞させていただきました。
出身校や見たことのある神社や七夕祭り等に気がいきすぎて多少ストーリーに没入しづらい感は正直ありました。でも主人公の発達障害だからこその素直で熱い気持ちがストレートに伝わります。父親や姉や親友も発達障害だからといって特別なお付き合い方をするわけでもなく本当にストレートに答えて支援していく様もよりわかりやすい暖かさを感じる所以なのかなぁとも思いました。
懐かしい校舎や渡り廊下や体育館が観られて嬉しかったです。
本当に素晴らしい映画をありがとうございました。

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共感した! 4件)
映画大好き

3.5思っていたよりキャッチーな仕上がりになっていて、主人公成長物語とし...

2024年11月9日
iPhoneアプリから投稿

思っていたよりキャッチーな仕上がりになっていて、主人公成長物語として、面白くみれた。工場のランウェイシーンとかは個人的には好きなシーンだった。

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共感した! 3件)
おれ