「アメリカ版暴走族の話。ってだけではない。」ザ・バイクライダーズ クリストファーさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ版暴走族の話。ってだけではない。
バイクに興味無いので、ちょっと二の足を踏んでいたけど、部屋に貼っておきたくなるようなポスタービジュアルが気になって観てみた。
なかなかキャラクターが興味深く、展開もテンポよく、言うほど『バイク映画』ではなく、ヒューマンドラマ色が強いので、興味が尽きることなく観られた。
平たく言えば、アメリカ版珍走団の栄枯盛衰?と言っちゃうと残念なんだけど、やっぱりどこかに終わりはあって、いつまでもバカやってられなかったり、バカなままだったり、途中で命を落とすことも、ある意味、願った人生を全うできて幸せなことなのかも。
終わってみれば懐かしいような、ノスタルジックを感じる。
最後はキャシーの一人勝ちだと思う。
最終的にそのラストには安心させられる。
結局キャシーはベニーを手懐け、ベニーを変えた。
あのまま突き進んでいたら、ベニーもジョニーのようになっていただろう。
誰にも頼らないし、頼られたくない、ここを去る、って言って去ってったベニーが、傷ついた子犬のように玄関先に帰ってきたし、結局最後は真っ当に働いてるし、「あれ?キャシーの思惑通り?ベニーは飼い慣らされた。キャシーすげー、キャシーつえぇー」ってなったわ。
やっぱりあの一団の傍らに、長きにわたって居続けただけある。
退屈だけど、安心できる生活に戻っていった。
キャシー本人もああいう早口で「you know」を連発する特徴的なしゃべり方の人なのだろうか。
流されてるようで、実は強い意志を感じる、愛すべきキャラクターをジョディ・カマーが好演。
オースティン・バトラーって、ちょっと顔面センターであまり好みではないんだけど、こいつはずっと少年のままで、大人にならないな…バカなのかも?っていうキャラクターにものすごく説得力のある、線の細さと透明感。
そして、どっしりと構えるトム・ハーディ。
特徴的な魅力のある悪声だな。
ジョー・ペシみたいで、そこはかとなく怖い。
カリスマは本物なのか、偶像なのか、ギリギリの表現が絶妙。
その時代の空気感や人間がしっかりと描かれていて、骨太のいい作品だった。
サントラも秀逸。