「円満〜世界は円(まる)で満ちている〜」まる uzさんの映画レビュー(感想・評価)
円満〜世界は円(まる)で満ちている〜
意図せずして望まぬアイデンティティを与えられた芸術家の苦悩と悲哀と、再生。
正直、かなり間延びしていた印象は拭えない。
退屈な序盤から、土屋の訪問で話が動き出すかと思えば、“まる”を描き始めるまでがまた長い。
バズりの描写も派手さに欠けるため、沢田が受ける流れの圧や、話の勢いも弱いまま。
ただ、沢田の変化はよく描けていたと思う。
「大きい」と言われれば迷いなくハサミを入れ、左手でおざなりにサインを描く序盤。
流される中盤を経て、キャンバスをブチ抜く終盤。
消えたケンケンパの跡と、雲一つなかった空に広がる薄雲が象徴的だった。
一心に円相を描き続けるダイジェストは、“まる”に魅力を見出したのか、ただ流されただけか。
自分は両方だったと思う。
求められるものを描きたいと思うこともあるが、それも変化し続ける根源的な欲求の一部だ。
沢田はもう一度それと向き合うことが出来たし、金のために描いたものは一度も評価されてない。
仏教要素や矢島のデモ、土屋の妻、地震とその予知など要素を盛りすぎな点はあるが、演技はみな良かった。
綾野剛の純粋にヤバい漫画家、森崎ウィンのミャンマー人コンビニ店員がお気に入り。
沢田は、堂本剛のパブリックイメージも手伝ってまさに最適。
壁越しに横山と会話した際の涙は本作の白眉。
穴を空けた画すら評価されるというオチも皮肉が効いてるが、もう少しコンパクトに纏まってればなぁ。
沢田のアパート近辺はよく歩くが、あの辺ちょっと使われ過ぎでは。
みんなが“まる”をつくる映像は完全に『白鶴』。
共感&コメントありがとうございます。
堂本剛さんの演技もぴたりとハマって「沢田の変化はよく描けていた」と私も思います。
それだけに、もう少し要素を減らして、沢田の心情の変化にもっと焦点化してもよかったかもしれませんね。