「思い出補正で許せる人はすごいなあと、心から思いますよ」室井慎次 生き続ける者 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
思い出補正で許せる人はすごいなあと、心から思いますよ
2024.11.15 MOVIX京都
2024年の日本映画(115分、G)
前作『室井慎次 敗れざる者』の続編映画
『踊る大捜査線』シリーズのスピンオフ
監督は本広克行
脚本は君塚良一
物語の舞台は、秋田県北大仙
警察官僚を辞めて田舎に越してきた室井慎次(柳葉敏郎)は、事件の被害者遺族の高校生タカ(斎藤潤)、事件の加害者家族のリク(前山くうが&前山こうが)たちを育ててきた
そして、彼らの元に、室井のかつての事件の因縁の相手・日向真奈美(小泉今日子)の娘・杏(福本莉子)がやってくる
施設に行くまでの間、預かることになった室井だったが、彼女の行動はおかしなことが多く、リクは懐くものの、タカは警戒心を募らせていた
物語は、前作にて、何者かによって納屋が放火されたところが描かれる
室井は犯人探しをすることなく、被害届も出さず、地元民たちはその行動を不可思議に思っていた
やがて、その事件は語られることは無くなったものの、住民からの嫌がらせは日に日に増して行った
そんな折、リクの父(加藤浩次)が出所し、新しい生活を始めるとの知らせが入った
児童相談所の松木(稲森いずみ)は「親元に返す方が良い」という決定を下し、室井はそれに従うことになった
最後の思い出作りとばかりに色んなところを巡ることになった4人は、家族でいられる時間を大切にしていく
そして、リクを児相に引き渡す時がやってきたのである
と、映画は事件そっちのけの親子ドラマになっていて、忘れた頃に犯人から電話が来るみたいな雑な流れになっていた
しかも、事件の顛末は「桜(松下洸平)の妄想」を聞かされるだけで、さらにその想像が「ぜんぶ真奈美が洗脳してやったこと」という、推理とも思えないものになっていた
杏が洗脳されていたとして、どの時点でそれが解けたのかもわからず(多分、猟銃撃った時)、唐突にスマホの待受を見て「クソババア」とか言い始めてしまう
真奈美の洗脳は万能すぎて、刑務所にいるのに室井の引越し先がわかるとか、服役していた犯人の出所がわかるとか、今現在何をしているかわかるとかも、どうなってるんだろうねえという感じになっていた
ファンサイトの存在を知っていても、そのサイトで洗脳する方法などもよくわからず、刑務所に面会に来させて懐柔できた人物が偶然レインボーブリッジの犯人だったとかも無茶だと思う
書き出したらキリがないほどに粗が多いのだが、骨子を親子の物語にしているので、それ以外のことは、それを阻害する道具として捉えているのだろう
いずれにせよ、久々に「途中で席をたっても良いかな」と思ってしまった作品だった
妄想のところで脱力、猟銃を撃たせたところでさらに脱力、生活保護のことを聞かれて表情を変える児相のところで「もういいかな」というように、何を見せられているのだろうか、という感覚が強かった
刑事ドラマで事件解決を妄想という時点で真面目に作る気はないのだと思うが、やはり犬追いかけて室井死亡が一番やっちゃけいないことのように思えた
おそらくは次回作の構想があって、どうしても室井と青嶋を一緒には出せないのだと思うが、この映画に青嶋が出てくる意味はほとんどなく、しかもエンドロール後に顔出しまでしていた
彼の性格を考えれば、無線で事件発生の連絡があっても、室井に手を合わせには行ったと思うので、それを仄めかすように「無線を無視して玄関先までいく」というので良かったと思う
その人物が青嶋であると思わせることができればOKなので、顔を出さずにコートを見せるだけでも良かったのではないだろうか