「まあ上出来ですが、飽きもせずとも言えます」エイリアン ロムルス クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
まあ上出来ですが、飽きもせずとも言えます
重責担ったフェデ・アルバレス監督、よくぞ頑張った!ほとんど手垢にまみれたエイリアンを、練りに練った脚本で期待をほぼ上回る事が出来たのではないか。予算900万ドルの「ドント・ブリーズ」2016年から、約10倍の予算8000万ドルの本作へ。なにより第1作に敬意を払う姿勢と、ロボットと言うべきかアンドロイドと言うべきか、それをストーリーの核に据えたのが正解でしょう。
とは言え、所詮2番煎じなのは免れ得ず。大ヒット作が生まれれば商売ですから容易く続編が作られ、そして決して第一作を超える事はない、作品的にも興行的にもが基本。「ジュラシック」シリーズとまるで同じ、〇〇の登場でショックを与え、欲にまみれた人間が恐怖演出で驚かされ、いかにして戦ったか。〇〇はエイリアンでも恐竜でも。人間をスーパーヒーローに置き換えればマーベルものは全部一緒。ポイントはいかに巧く観客を震え上がらせられるかの1点です。
それにしてもエイリアンに関わる監督は、①リドリー・スコット、②ジェームズ・キャメロン、③デヴィッド・フィンチャー、④ジャン=ピエール・ジュネ、⑤リドリー・スコット、⑥リドリー・スコット、そして本作と、まあ驚くほどの超一流ぞろい。それ程にこのフランチャイズを続けたいスタジオ側の強い金儲けの意思が現れている。後世になってフェデ・アルバレスもそんなふうに見られるのでしょうかね?
エイリアンの何たるかは観客も百も承知が前提で、だからいつどう出るか? に焦点がある。一度出したら後は一気呵成だから、前提条件をいかに簡潔に抑えるかが手腕の見せ所。その意味で、美形の女が吐き気とは、あってはならない展開を暗示させる。最初はエイ型の登場で、それも夥しい数にこちらが吐き気すら催すレベル。そうこうするうちに、奴等には目が無く、音と体温に反応する設定に持ち込む。とたんに「クワイエット・プレイス」2018年のパクリと直感したものの、アルバレス監督出世作の「ドント・ブリーズ」2016年で既に仕掛けたホラーの自家薬籠中の方策だったわけ。
やがて当然にオリジナルのツルリとした頭部の奴が盛大に登場。乗組員が恐怖に凍るすぐ側まで近づく演出は、第1作でのシガニー・ウィーバーで実施済みと全く同じ。宇宙船内で火災が発生するとスプリンクラー? そんな水あるの? 無重力で水は何処へ落ちる? 火災のエリアを無酸素にすれば早いのに、と思う。そもそもが第1作後の設定ゆえに、諸々の宇宙船内の機器が敢えて古臭い。モニターすべて荒い画面のブラウン管方式ってのもやむを得ず。2142年の設定なのにね。妊娠を伏線で示したとおり、いよいよのラストでとんでもないものを見せつけられる。ちょっとこれはやり過ぎでしょ。
そして本作の目玉であるイアン・ホルムの登場で、心底驚きました。2020年に88歳で生涯を閉じた名脇役の再現により第1作との繋がりが明確になりました。ただクレジットにその名はなく、出演料のようなものは遺族に支払われたのか? こんなのが許されればブルース・リーだって、ジェームズ・ディーンだって、無論マリリン・モンローだって作れてしまう。そんな映画は見たくないなぁ。兎に角イアン・ホルムの膨大なキャリアの初期にあたり、典型的イギリス紳士の慇懃な物腰で数多の作品を重厚にした名優でした。
これに呼応するようにアンディの設定が肝要となり、物語が走り出す脚本が上出来と言えますね。とは言え、前述したとおりの予算ですが、1億ドル超えの大作とも言えず、新人さんばかりで役者を揃え、殆どスタジオ(ハンガリーのブダペストですって)セット内での撮影、当然に背景はCGですので安上がりなのは確かです。
リプリー1人だけ脱出出来た第一作と全く同様に、本作もレイン1人だけ、右頬に微かな怪我が次作に繋がるのでしょうかね。IMAX鑑賞の価値はありました、相当の音響が頑張ってましたから、画面も天地フルサイズでお得感ありました。