「ラストの失速が悔やまれる」エイリアン ロムルス tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストの失速が悔やまれる
すでに描き尽くされたかと思っていたエイリアンとの戦いだが、体温と音に反応する習性の裏をかいてフェイスハガーの群れの中を通り抜けたり、無重力の中を漂う強酸性の血液の中を潜り抜けたりと、「そうきたか!」と思わせるような新たな見せ場が用意されていて楽しめる。
「仲間を助けたい」と思う人間の気持ちを逆手に取るようなエイリアンの狡猾さも心憎いし、CGで蘇った若かりし頃のイアン・ホルムに再会できるのも嬉しい。
エイリアンのDNAを活用した人体強化のための合成物質というアイテムにも、新しいことを取り入れようとする工夫の跡が伺える。
中盤までは、そんなに重要なものが施設内に残されているのなら、どうして回収せずに放置されていたのだろうという疑問を感じていたのだが、終盤の畳み掛けるような展開になると、そんなことはどうでもよくなってしまった。特に、アンディの救出から、重力の復活とエレベーターシャフト内での格闘、そして、ロムルスからの脱出へと続く第一のクライマックスでは、手に汗握るようなアクションのつるべ打ちを堪能することができた。
その一方で、合成物質によって誕生した新たなモンスターとの対決を描く第二のクライマックスは、「エイリアン4」と「プロメテウス」の焼き直しのような印象が強く、まったくと言っていいほど新鮮味が感じられない。そのモンスターも、クリーチャーとしての魅力が皆無(例えば、フィギュア化されても欲しいとは思えない。)で、「どうしてこうなった?」と頭を抱えたくなってしまった。
せっかくいい感じで盛り上がったにもかかわらず、最終盤の失速によって、新たな「エイリアン」の誕生を心から祝福できなくなってしまったのは、残念としか言いようがない。