「王道回帰…絶望発、さらにエグい絶望行」エイリアン ロムルス しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
王道回帰…絶望発、さらにエグい絶望行
エイリアン・シリーズ第7作(通算第9作)。
TC PREMIUM THEATERで鑑賞(ドルビーアトモス,字幕)。
まさに「絶望(過酷な労働環境)から逃げ出したのに、さらにエグい絶望(エイリアン)に遭遇しちゃった件」である。
希望を求めて進んだ先に待ち受ける逃げ場の無い壮絶なサバイバル。あまりにも若者たちが不憫で不憫で仕方が無い。
自業自得とは言え、なんとか全員生還をと願ったがそうすんなり行くはずも無い。だってこれ「エイリアン」だから…
新・戦うヒロインを演じるケイリー・スピーニーの存在感がすごい。童顔でかわいらしい見た目(畑芽育に似てる!)からは想像も出来ない逞しさを見せる(1作目と2作目のリプリーを足して2で割ったような感じ)。パルスライフルを構え、エイリアンの群れと対峙する時の覚悟の目つきにしびれた(無重力状態の戦闘シーンが斬新で面白いアイデアだなと思った)。
飛び掛かって来るフェイスハガー。忍び寄るゼノモーフ。そしてアステロイドへの衝突タイムリミット。圧倒的な絶望が襲い掛かり、筆舌に尽くしがたいリアルな恐怖が迫って来る。手に汗握りながら主人公たちの戦いを見守った。
かなりのオマージュが仕込まれていて既視感バリバリだったが、「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス監督ならではと言える巧みな音の表現と、シリーズの伝統を継承した恐怖描写にハラハラさせられっぱなしで面白かった。
過去作へのオマージュはし過ぎると残念な結果を招くことになるが、本作に限っては物語に不可欠な要素として結びついているため、全くノイズじゃなかったし、原点回帰の王道作品として成立させているバランス感覚が巧いなと感じた。
1作目のその後を前半で描き、後半になると、エイリアンの群れやパルスライフルは2作目を彷彿とさせ、エイリアンの生態を元に神の領域へ踏み込んでいる研究は「プロメテウス」や「コヴェナント」と地続きの設定となっていて素晴らしい。
人型のエイリアン(エイリアンと言っていいのかどうか微妙なライン)の登場はサプライズだった。母親を殺害する時点で同系統のニューボーンよりたちが悪い。最終決戦はハラハラ・ドキドキの極致で食い入るように夢中になった。
シリーズ初見でも十二分に楽しめる、入門編として最適な作品だと思った。もちろん事前にシリーズを観てからでも良し、本作を観た後で1作目等を鑑賞して関係性を知るも良し、いろいろな楽しみ方が出来る構造なのも好感度が高い。
[余談]
エンドクレジットで、一際目立つよう大きな文字で書かれていた「H・R・ギーガー」。愛とリスペクトを感じた。