「踊る吸血鬼」アビゲイル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
踊る吸血鬼
謎の指示役に集められた面識も素性も本名も知らない6人の男女。仮名として、フランク、サミー、ディーン、ピーター、ジョーイ、リックルズ。
知ってる人ならピンと来る“悪ガキ集団”で、ある犯罪計画を…。
昨今日本中を騒がしている“アレ”のような。
ならばそんな許し難い犯罪とグループに天誅!
一人のバレリーナ少女を誘拐。
少女の父親は“大富豪”。身代金は5000万ドル。
誘拐は成功。後は隠れ家に監禁し、身代金が支払われるまで一晩監視し、それを山分け。
楽勝な仕事…の筈だった。
医学の心得があるようなジョーイが少女のケア役。
少女の名前“アビゲイル”を聞き出すなど怯える彼女を気遣うが、アビゲイルの口から意味深な…。“お気の毒に”。
不審に感じたフランクがアビゲイルの父親の正体を聞き出す。
アビゲイルの父親は、政界にも通じる巨大犯罪組織のボス。
その配下に謎の殺し屋がおり、人間離れした残虐な殺し方を…。
途端にヤバい事態に陥った事を知る。ヤベー奴に手を出してしまった…。
すでに遅かった。一人(ディーン)が惨殺される。
娘を誘拐されたボスと殺し屋の魔の手が…。
否。本当の“恐怖”はそれではなかった。
アビゲイルの正体は…
って言うか、もうポスターでネタバレしちゃってる。
伏せて知らないで見たら驚きの展開だったろうが、人目を向かせるのは難しかっただろう。
敢えてネタバレする事によって、人目を引くインパクト。
分かった上で見てもちゃんと面白い作り。B級風味が乙。
アビゲイルの正体は、吸血鬼だった…!
誘拐し、怯える少女。
しかし、少女の正体は吸血鬼で、次々と血祭りに上げられていく…。
怯えた顔で“獲物”を品定めしていたかと思うと、怖っ…。
バレリーナでもあり、襲い掛かる時は優雅に踊って。吸血鬼映画の歴史も長いが、まだまだ“新種”現る。“踊る吸血鬼”!
見た目は少女だが、1000年以上生きている。頭も良く、か弱い少女のフリをしたり、言葉巧みに仲間割れを誘発させようとしたり。
弄ぶかのように、ジョーイらの本名や素性や各々抱える苦悩を暴露し、揺さぶる。
優雅に踊り、狂暴な顔付きになって、鋭い牙を剥き出しにし、ガブリ!
血で塗れた顔でニヤリと笑うアビゲイル役のアリーシャ・ウィアーの凄み。
(『マチルダ・ザ・ミュージカル』の女の子だったのか…!)
“獲物”6人もそれぞれキャラ立ち。
冷静そうであったり、不敵そうであったり、小生意気そうであったり、頭の鈍そうなでくの坊であったり。早々の殺され役や頼れそうな人物も呆気なく…。
次第に各々の素性も分かっていく。その中にも油断ならぬキャラを配置。その傲慢さがラストの思わぬ展開に繋がる。
犯罪に加担してしまったが、ヒロイックな存在も居ないと話は盛り上がらない。
メリッサ・バレラの美貌と格好良さ。『イン・ザ・ハイツ』『スクリーム』では露出のある格好だが、今回それを隠しても、抜群のスタイルと魅力は隠し切れない。
やり取りはチクチクピリピリギスギスで、ブラックユーモアも孕む。
テンポ良く、スリルあり、分かり易さも良し。
まさに“出血”大サービス! グロや血の量はたっぷりと。
『スクリーム』のマット・ベティネリ=オルビンとタイラー・ジレットの監督コンビのツボを抑えた作り。エンタメホラー・クリエイターとして暫く安泰だろう。
そもそもがネタバレ映画なので、ラストの展開もちょっとネタバレ。
フランクが吸血鬼化。傲慢と欲望爆発し、アビゲイルやボスを殺して、俺が全てを手に入れる。
阻止する為に、ジョーイとアビゲイルが組む。
あ、アビゲイルの脅威から生き延びるサバイバルじゃないんだ…。意外性はあったが、アビゲイルがずっと脅威のままの方が良かったかな…。“踊る少女吸血鬼”はやはりインパクトあるし。
最後はちょっとエモーショナルに。
ジョーイは長らく会えていない息子への愛。
アビゲイルも実は父親への愛を欲していた。
最後にその父親が登場。犯罪組織のボス…いや、父親も吸血鬼。
アビゲイルを吸血鬼にした張本人。それぞれの時代で様々な呼び名が。“ド◯◯◯ラ”とか…?
古くから暇を持て余した吸血鬼父娘の遊びの場になった生け贄の館。
唯一アビゲイルと通じ、生き延びたのはジョーイくらいか…?
次は誰が吸血鬼少女の流血ダンスに誘われるのか…?
B級類いでスマッシュヒットし、批評も上々だったから、続編も作られるだろう。
と言うか、続編求ム!
だって、予想以上に面白かった~。