劇場公開日 2024年8月1日

「映画館で見るべき物凄い臨場感」ツイスターズ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画館で見るべき物凄い臨場感

2024年8月1日
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鑑賞方法:映画館

字幕版を鑑賞。マイケル・クライトンの原作を 1996 年に映画化した「ツイスター」の続編と紹介されているが、本作とは直接的な話の繋がりはない。竜巻に近付いて観測しようとしていた前作と違い、今作では竜巻を避けるばかりでなく、人間の加えた作用で勢いを低減して消滅させてしまいたいという意欲のある話だった。竜巻の映像は掛け値なしに物凄く、映画館で見なければ真価を発揮しない作品である。

私はアメリカ中部の大学に在外研究員として1年ほど滞在したことがあり、テレビの天気予報では竜巻の発生の有無が毎日欠かさず予報され、キャンパス内はもとより、市内の商業施設になどあらゆる建物に地下シェルターが用意されていて、いざとなったらすぐ逃げ込めるように配慮されているのを見て、どれほど竜巻が日常茶飯事なのかと思い知らされたが、幸いにも私の滞在中はそこに逃げ込むような事態に見舞われることはなかった。ただし、雹は時々ゴルフボール大から野球のボール大のが降って来て、車のガラスなどを粉砕するのを経験したことがある。

日本にいて台風などで体験できる強風はせいぜい 30m/s ほどである。時速にすれば 108km/h になるので、高速道路をそれくらいの速度で走行中に窓を開けてみれば、空気が水のように感じられて、どれほどの勢いなのか察せられるが、アメリカの竜巻ではしばしば 100m/s ほどにもなることがあるので、時速にすれば 360km/h ということになって、日本国内で体験する方法はない。30m/s でも人間が吹き飛ばされることになるので、100m/s ともなれば吹き飛ばされるばかりでなく、上空数 km まで連れて行かれてそのまま自然落下させられるので、飛行機から墜落したのとほぼ同じ結果となる。

この映画で竜巻を消そうとする方法は、簡単にいうと、紙オムツの中身に入っている高分子の粒子を竜巻自身の風で舞い上がらせ、竜巻の水分を吸収させて勢いを削ごうというのだが、水分を吸着して重くなった高分子の粒子が竜巻の強風で吹き付けてくるだけなので、効果はほとんど期待できないばかりか、雨滴より遥かに質量のあるものがぶつかって来ることになるので、事態を悪化させるだけではないかと思われた。

幼い頃から竜巻に興味を持ち、大学で気象を学んでいた主人公はこのアイデアの実験をすべく、友人らと竜巻に向かうのだが、非常に悲惨な目に遭ってしまう。竜巻や台風の進路は、周囲の気圧によって決まるもので、真っ直ぐ進むばかりでなく、突然進行方向を変えたりするので予測は非常に困難であるが、主人公は長年の経験で精度高く予測ができるようだった。竜巻の勢いは5段階に分類されるが、同じ勢いを保つばかりでなく、徐々にレベルが上がることも珍しくない。

とにかく竜巻の中の描写が物凄い。手に汗握るどころか、観客席の腕置きを固く握りしめながら見続けることになった。強風で飛ばされる人の姿がとにかくリアルで怖かった。音楽も実によくシーンを盛り上げていて見事だった。主人公の傷の大きさとそれを克服しようとする心境の変化も無理なく描かれており、物語の帰着点の作り方も確かなものだと思った。残虐なシーンやお色気シーンもないので、お子様連れで見に行くのもお勧めである。4DX で見たら最高かもしれない。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4= 100 点。

アラ古希
アラ古希さんのコメント
2024年8月1日

お楽しみ頂ければ何よりです。

アラ古希
Mさんのコメント
2024年8月1日

水分を吸着した粒子の話、おもしろかったです。
人間が自然をコントロールしようとするその姿は素晴らしいのですが、やはり、自然の前では謙虚であることも大切なことだなあ、と感じました。

M