「「Walking Dead」より、はるかにリアルな「Civil War」 この作品が本当に伝えたい事とは?」シビル・ウォー アメリカ最後の日 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
「Walking Dead」より、はるかにリアルな「Civil War」 この作品が本当に伝えたい事とは?
大衆の信頼を失ったジャーナリズムへの痛烈な警鐘
「私は合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持、保護、擁護することを厳粛に誓う」
民主主義国家、アメリカ合衆国大統領就任宣誓は2025年1月20日第47代アメリカ合衆国大統領によって行われる。
この映画が公開された頃の日本の報道と言えば、いずれも共和党トランプ大統領の勝利を望んでいないのは明らかだった。
それは、「世界のリーダーであるべき米国の大統領が、先制主義的な思想・発言をするのは不適切」という理想論からだ。
しかし、いざ大統領選挙の蓋を開けてみたらどうだろうか?
トランプは圧勝した。民主主義国家アメリカ合衆国国民が選択した民意。
しかし、この現実を未だに日本人は受け入れていない様に思える。
実に危険だ。
2016年5月27日、オバマ米大統領は、現職の米大統領として初めて被爆地・広島を訪れ、平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した。
あの頃の報道は「トランプは大統領戦に勝てない、イギリスのEU離脱は回避される」
そんな希望的観測はあっさり覆された。
2017年1月20第一期トランプ政権発足〜2021年1月20日(2021年1月6日連邦議会議事堂襲撃事件)
2020年1月31日イギリスEU離脱
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。
ロシアも当初はすぐにウクライナを占領できると高を括っていたのは明白だが、その後の「ロシアの弾薬は尽きる」「西側が負ける訳が無い」という連日の大本営発表も結局のところなんの信憑性も無く現在に至っている。
そして、予想もしていなかったイスラエルのガザ侵攻。
日本人から見れば、何故そんな事をするのか?何故争いあうのか?
容易には想像もできない事が現実に起こり、身近な脅威では無いものの間接的には大きな影響を受けている。
そんな“現実”を今一度考えてみると、「Civil War」が決して絵空事では無い気がしてくる。
実際アメリカの分断は既に起こっている、その分断を肌で感じはしないがアメリカ合衆国の国民はどう感じているのだろうか?
海の向こうの事を知る方法は色々あるだろうが、やはり一定のフィルターがかかっている気がしてならない。
オックスフォード大の研究では、民主主義を享受する世界の人口は2017年の50%を頂点に3割を切ったという。
日本人が思ってるほど世界は“民主主義”では無いという事実、一体どれほどの日本人がピンときているのだろうか?
実際、多くの日本人は「Civil War=南北戦争」が歴史上起こった事実という事を肌感覚では理解していないだろう。
それは“核”というものの脅威を、日本人では無い国民が“肌感覚として”感じていない事と同じかもしれない。
2025年1月20日トランプ政権は間違い無く発足する。
その先にあるのは日本人が望む様な未来だろうか?ウクライナのゆくえは?
すぐそこにある未来は・・・?
そもそも、あれだけ連日報じていたウクライナの報道は、一体どこへ行ったんだ?
アメリカは世界で3番目に大きな国土、経済は飛び抜けて間違いなく世界最大の国家。
そんな国の大統領が再びトランプになったという現実。
ドジャース対ヤンキース戦はスポーツの世界だけの話だが、この作品の様に米国内の分断が深刻な事態にならないとは言い切れない。
そんな、ありえない最悪の出来事。
「Walking Dead」より、はるかにリアルな「Civil War」
民主主義が“正義”だとするならば
人類にとっての「Civil War」=“内戦”は、もう既に始まっている。
そして
この作品が一番伝えたい事は、信頼を失ったメディアへの警鐘であり
「レンズ越しに“内戦”に目を向けるだけの“レポーター=報告者”になってはいけない」という事だ。
かつてメディアは良い意味でも悪い意味でも大きな情報の発信力・影響力を持っていた。しかし、今は一人のインフルエンサーの発信力が物量としてメディアを圧倒的に凌駕している。
トランプの存在を認めようとしない“日本人”、そして大衆に情報を伝える事を生業とするメディア・報道に関わる全ての関係者は、この作品を一度は見るべきだ。SNSは勿論の事、生成AIが与える影響力はまだまだ序の口、その本性を現しているとは思えない。
その本性を現した時には
「この吐き気をもよおす「Civil War」の“画”が、決してスクリーンの中だけの話しではない」という事を知る事になるかもしれない。