「笑いの奥にあるリアル」ANORA アノーラ AZUさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いの奥にあるリアル
重いテーマではあるけれど、始終明るいしコメディ要素も盛り込まれているので、重くなりすぎず見れる点がすごく良かった。
万人受けはしないかもしれないが、私は好きな作品。
特に最後の終わり方がとても良かった!
あの最後が無かったら、リアルじゃなかった。
暴言を吐きまくって、暴れまくって、物を投げ飛ばして、決して弱みを見せず立ち向かっていたアノーラが最後に見せた姿こそ、本来のアノーラだったと思う。
そうだよね。シンデレラストーリーは簡単に実現しないからシンデレラストーリーなんだよ。リアルはこうだよな、と無音のエンドロールを見ながら地面にしっかり足をつけさせられた気がした。
彼女はイヴァンを心から愛して結婚したわけではないだろうし、それはイヴァンもそうだ。お互いが今の現実から逃げたくて、即物的に楽観的に結婚しただけなんだと思う。
彼女はイヴァンとの結婚を無効にされることを拒否したのは、イヴァンへの愛というより、自分を簡単に捨てられる、娼婦としてしか見られない現実を受け入れたくないからというようにしか見えなかった。
アノーラのように、自分の価値を認めたくても、周りがそれを下げようとしてくることって多々ある。
年齢だったり、容姿だったり、職業だったり、人種だったり、性別だったり…
そういう世間のモノサシに計られて、不当な扱いや人権を蔑ろにされている人たちが、今も必ずどこかにいて、日々苦しめられている現実を突きつける、深いメッセージが込められた作品だった。
アノーラがいつか自分の名前が好きになる日が来ると良いな。
>お互いが今の現実から逃げたくて、即物的に楽観的に結婚しただけなんだと思う。
彼女はイヴァンとの結婚を無効にされることを拒否したのは、イヴァンへの愛というより、自分を簡単に捨てられる、娼婦としてしか見られない現実を受け入れたくないからというようにしか見えなかった。
アノーラが結婚した理由、
それを無効にされることに必死に抗った理由、
どちらも物凄く腹落ちしました。
AZUさんの「核心を掬い取り、それを言葉で表現できる力」に感服しました。
>世間のモノサシに計られて、不当な扱いや人権を蔑ろにされている人たち
この監督さんはこういう人たちを取り上げた作品が多いらしいですね
しかもそれをお涙頂戴系で押し付けがましく描くのでなく、カラッとした明るさの中に浮かび上がらせる手腕が持ち味とのこと。
他の作品も観てみようと思います。
>アノーラがいつか自分の名前が好きになる日が来ると良いな。
最高の締めです!