エミリア・ペレスのレビュー・感想・評価
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人間の変化とは
ジャック・オーディアールがミュージカルを撮るとは思わなかったが、彼の作品の中でも結構上位に好きかもしれない。これは人の変化についての物語だ、外見が変化する、あるいは本当の自分の外見を手に入れることで内面にまで変化が及んでいく。性適合手術を受けて女性として生活するようになって、マフィアのボスとして生きてきた時には思いもよらなかった慈善事業に精を出すようになる主人公。この変化は外見が導くように内面が変わっていったということなのか。ゾーイ・サルダナの歌唱パートにそれを示唆するようなセリフがあったが、これは変化なのか、本来の彼女の性質なのか。時にマフィア時代の狂暴さが目覚めそうになる主人公だが、人間は経験の蓄積によって形作られるのだとすれば、マフィア時代の恐ろしさもまた、彼女の一部を構成する要素と言えるか。
ゾーイ・サルダナの芝居は本当に素晴らしかった。彼女のベストパフォーマンスだと思う。彼女演じる弁護士の変化もまた面白い。人の本質と変化について非常に深いところまで切り込んだ作品だと思う。
日本が舞台だと仮定したら、トンチキっぷりがわかりやすい
冒頭から想像していた以上にガッツリミュージカルであり、なおかつ見せ方としてとても面白く、いったいどこに連れて行かれるのかと期待が膨らむ。
お話としては、まあメキシコで批判が噴出したという話もわかるが、正直かなりのトンチキっぷりというか、これを日本のヤクザの親分を主人公にしたものを想像してみると(日本ではあまり怒られたりはしない気もするが)、結構なトンチキ映画であることがわかってもらえるのではないか。
なので、ずいぶんなトンデモ話に、本気の演技、本気の歌と踊り、そして愉快なミュージカル演出が乗っかっている表現のオモシロさを満喫したし、それ以上に深刻なものとして評価をしようという感じにはなれなかった。エミリアのあっけない最期も含めて、監督もいろいろ混ぜっ返して突き放すみたいな遊びをやってると思うのだが、まあその辺はこちらで勝手に解釈しました。
殻を破って突きつける予測不能なストーリー
これはギャング映画か、それとも社会派、もしくは性差を超えた人間ドラマか。そんな線引きはどうでも良い。重要なのはすでに名匠の地位を獲得したオーディヤール監督がこの映画でさらに豪快に殻を破ろうとしているということだ。序盤からの予測不能ぶりには「あれ?オーディヤールではなくアルモドバル作品だったかな?」とクレジットを見返したくなるほど。しかし人が境界線を超え、過去と決別していく姿は彼の作品で絶えず描かれてきたテーマであり、今回の「彼女たちの物語」にも同様の気迫がみなぎる。その上、本作は時折、登場人物の心情をリズミカルな振り付けや歌声で吐露するミュージカルの側面も脈打つ。ゾーイ・サルダナの身のこなしや真っ直ぐな目線も本作の欠かすことのできない推進力だが、それに輪をかけてエミリア役のガスコンの人間的な迫力には圧倒されるばかり。賞レースの結果を意識しすぎることなく、ただただ身を委ねて楽しみたい一作だ。
犯罪王か聖母か、贖罪か慈愛か
今春開かれたアカデミー賞もバラエティーに富んだ作品が並んだ。
最多12部門13ノミネート、ゾーイ・サルダナの助演女優賞と歌曲賞で受賞を果たしたのが、本作。
カンヌ国際映画祭でも審査員賞とメイン4人で女優賞を受賞。
一見世界中で高い評価を得たように思えるが、実際は賛否両論激しい。
舞台のメキシコでは酷評。米評価も作品賞ノミネート10本の中では最も低い。(作品賞受賞『ANORA/アノーラ』はRotten Tomatoes支持率93%に対し、本作は71%)
確かになかなかに取っ付き難い題材。メキシコ裏社会、性転換、多様性、ミュージカル…。
個人的にも、力量は認めるがジャック・オディアール監督の作品があまりソリが合わず…。
以上の事から作品賞ノミネート10本の中でも期待値は低め。
自分には合わないかも…と思って見たのだが、意外と思ってたよりかは。
まず、そもそもの設定が特異。
メキシコシティで弁護士をするリタ。手腕や名声は順調な一方、時に意に反する弁護に悩んでもいた。
そんな彼女に謎の依頼人。麻薬カルテルのボス、マニタス。麻薬売買、殺し…多くの犯罪歴を持ち、恐れられている。
その弁護かと思いきや、依頼は驚くべきものだった。
兼ねてからマニタスは、自分の中に男性としての自分ともう一人、女性としての自分がいる事を知る。やがて女性の自分の存在は大きくなり、決心した。
これまでの自分や人生を捨て、性転換して、女性として生きる。手術や新しい身分、暮らし…その全ての手配をしてくれ。
麻薬王が首尾よく逃げようとしているように思えるが、本人は真剣。
罪多き人生を捨てたい気もあるが何より、女性として、ありのままの自分として、生まれ変わり生きたい…。
リタは高額報酬と引換に承諾。
しかし、仕事内容は難題。
秘密を守り、性転換手術をしてくれる名医を探す。
メキシコやアメリカ以外で安全に暮らせる場所。
マニタスには妻ジェシーと2人の子供がおり、彼らの事。マニタスが敵に狙われ、安全の為にスイスへ。その説得。
また、“マニタス”の死の偽造。
問題起こる事なく捌き、マニタスも手術を。
全てを終え、泣くリタが印象的。安堵からか、また意に反したからか…。
特異な設定、始まり。
これからどう展開するのか…?
予想も付かない…と思いきや、テーマやメッセージは重たいが、意外とストレートな話や展開。
4年後。ロンドンで暮らすリタ。
とあるクラブで、エミリア・ペレスという女性と知り合う。
同じメキシコ出身という事もあって気が合うが、リタはその場で気付いた。
エミリアは、あの性転換したマニタス。
女性として新たな人生を歩んでいる。
しかし、何故こんな所に…?
マニタス…ではなくエミリアは偶然と言うが、そうではないのは賢いリタには分かる。
エミリアから今度は“依頼”ではなく“頼み”。
察しは付いた。
新しい人生を歩んでいるが、家族をそうそう忘れられない。また一緒に暮らしたい…。
あれっきりと思ったのに、リタはまた関わる事に…。
リタはメキシコシティでエミリアがジェシーと子供2人と暮らせるよう手配。3人をスイスから、もう安全とメキシコに呼び戻す。
エミリアの事はマニタスの遠いいとことして紹介。
郊外の豪邸で使用人たちと暮らすエミリア。初めて会うお金持ちのおばさん…という設定。
夫/父を亡くし遠方に追いやられ、母国に戻り、親切なおばさんと裕福な暮らし…というと幸運に思えるが、ジェシーと子供たちは当初は浮かない。ぎこちない。
しかし、次第に…。
別人となって家族と…。何だかちょっと『ミセス・ダウト』を彷彿させた。
家族との暮らしを再スタートさせたエミリアに、もう一つ新たな出来事が。
行方不明の息子を探す母親を知る。
エミリアは獄中の元カルテルメンバーの人脈から行方を探す。
すでに亡くなっていたが、母親は息子と再会出来た事に感謝する。
これをきっかけにエミリアは、行方不明捜索と家族支援の団体を立ち上げる。
考えてみれば、皮肉な話だ。マニタス時代は自分も誘拐や拉致側だった。
そんな自分が今は救済する側に。
生まれ変わった自分に出来る事。過去の自分の罪を悔い改めたい。
罪滅ぼしだが、私はあまりその言葉が好きではない。罪滅ぼし…つまり、罪を滅ぼす=帳消しという意味合い。
犯した罪は消えない。それを受け止め、悔い、自分に何が出来るか。
行方不明者は亡き者がほとんど。
それでも遺族は再会に安堵する。
亡くなっていた事は悲しく辛いが、心労負担の安否不明よりかは救われる。
尽力するエミリアと団体はメディアに取り上げられる。
エミリアの慈善行動に感激するリタ。
エミリアは言う。あなたが私を救ってくれた。
リタは言う。あなたが私を救ってくれた。
意に反する仕事もあった。心から断言出来る。やって良かった行いだったと。
ハッピーエンドな雰囲気だが、そんな作品じゃない事は承知。
また家族を求めた結果、それが歯車を狂わす…。
団体を訪ねてきた一人の女性、エビファニア。夫を探していた。
調べた結果、夫はすでに死亡。
泣いて喜ぶエビファニア。実は彼女は夫からDVを受けていた。
もし生きていたら、この手で殺してやろうと。バッグにナイフを隠し持っていた。
てっきり、メディアに取り上げられたエミリアを見て、マニタスである事に気付き、夫行方不明に関与していて、その復讐かと思ったら…。
大胆なエビファニアが気になり始めるエミリア。このご時世定番だが、2人は恋に…。
エミリアに新たな出会いがあった一方、ジェシーにも。いやこちらの場合、再会か。
マニタスとの結婚生活末期、夫とは別に関係を持っていた男性がいた。すぐ別れたが、メキシコに戻ってきた事でヨリを。
ジェシーは子供たちを連れてその男と暮らす事を選ぶ。
つまりそれは、この家を出る事。子供たちと引き離される。
猛反対するエミリア。相手の男をヒモ呼ばわり。
ジェシーも積もった苛立ちや不満を爆発させ、激しい口論。
激昂したエミリアはつい言ってしまう。“私の子供たち”と。
呆れ、さらに激しく罵るジェシー。
せっかく子供たちもここでの生活に馴れ、また家族と一緒の日々を取り戻した…筈なのに。
ジェシーも我が強いが、エミリアも自分本位。
ハラハラしてきた。エミリアが慈善を自滅させるような愚かな行いをするんじゃないかと。
即ち、昔の仲間を使って相手の男を…。
実際、襲わせた。が、町から出ていけと脅しだけ。
またかつての自分に戻るような愚かな事はしなかったが、強硬手段に出たのはジェシーの方だった…。
エミリアにより銀行口座などを凍結させられたジェシー。
男と組んで、何とエミリアを誘拐。切り落とした指を団体事務所へ。
絶句するリタ。
“精鋭部隊”を使ってエミリアを捜索。探し出し、救出。
その緊迫の中、エミリアは被弾。
朦朧とする意識の中で、エミリアはジェシーとの出会いや結婚を思い出し、語り掛ける…。
自分とマニタスしか知らない事を何故エミリアが…?
やがて気付いた時…
苦手意識のあったジャック・オディアール監督だが、本作は意外にもエモーショナルなドラマもあり、好感触を感じた。
本作は多様性ドラマであり、犯罪サスペンスであり、ミュージカルである。オリジナルの楽曲がふんだんに。
いずれも登場人物たちの心情を謳うものになっている。中でもインパクトあったのは、慈善パーティーに集まった偽善者たちをリタが心の中で痛烈に糾弾するシーンの曲。後で調べたら、これがオスカー歌曲賞だったのか…!
それらを奏でる女優たちのアンサンブル。
カルラ・ソフィア・ガスコンはエミリアだけではなく特殊メイクでマニタスも。マニタスは凄みを滲ませ、エミリアは温情と寛容さを。演じ分け、トランスジェンダー俳優として初ねカンヌ女優賞&オスカーノミネートの栄誉。それらは素晴らしいが、さすがに例の一見は看過出来ないかな…。
セレーナ・ゴメスも感情激しい役所を熱演し、アンサンブルに徹している。
MVPはやはり、ゾーイ・サルダナ。これまでエンタメ系の作品が多かったが、実力を見せ付けた。本作はエミリアの贖罪と数奇な運命のドラマだが、リタの物語でもある。エミリアの人生に関わる事になり、アドバイスやフォローや自身への影響も。傍観者的な立場だが、なかなか巧みな役所。パワフルな歌声や見事な美声も披露。オスカーも納得。電話でエミリアとジェシーの板挟みになり、感情むき出しで説得しようとするシーン、何故だかネイティリに見えちゃって…。
最後は悲劇的。
残された子供たちは…?
リタは…?
エミリア・ペレスは何者だったのか…?
聖母…?
泣く子も黙る犯罪王…?
家族を愛し、隣人に救いの手を差し伸べた。
家族を愛するが故にかつてに戻りそうな時もあった。
踏み留まり、慈しんだ。
彼女の数奇な人生に触れ、関わった皆々で語って欲しい。
私の心を取り戻すために
【メキシコ・クライム風味の人魚姫】
麻薬王が性同一性障害を抱え、女性となって引退する──そんな衝撃的な設定から始まる物語。
しかし当然「はい、おつかれさま」では終わらない。
物語が進むにつれ、クライム要素がどんどん濃くなり、ミュージカルシーンは減っていく。
ただ、もしこの映画にミュージカルがなかったら、ただの犯罪劇になっていただろう。
歌で描かれることで物語に寓話性が生まれ、作品は一気に格上げされている。
エミリアが本当に欲しかったものは何だったのか。
人魚姫のように、何かを犠牲にしてでも望むものを得たのか。
なにか諦められるものはなかったのか。
ミュージカルという形式だからこそ、エミリアは美しく、そして悲しく輝いていた。
そんな寓話的で切ない物語でした。
二つの「転換」を成し遂げたエミリア・ペレス。サスペンスあり、ミュージカルあり、重厚な人間ドラマあり
2024年第77回カンヌ国際映画祭にて
審査員賞と四人の女優(ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフイア・ガスコ ン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス)がそろって女優賞を受賞
2025年第97回アカデミー賞で13部門にノミネートされ
リタ役のゾーイ・サルダナが助演女優賞
歌曲賞を2部門で受賞した。
脚本・監督は多数の受賞歴で知られるフランスの名匠
ジャック・オーディアールです。
スリルあり、重厚な人間ドラマあり。ミュージカルシーンあり
あの手この手で見る者を引き付けるこの映画をぜひ見てください
【映画批評】
前半部のスリルあふれるシーンの連続と中盤以降の重厚な人間ドラマ。この映画には二つの顔があり、その二つが絶妙につながっていて途切れのないテンポをうみ、ミュージカルシーンで心境を吐露するあたり、あの手この手でスクリーンに引きずり込むジャック・オーディアール監督の手腕は見事だ。
弁護士リタは、麻薬組織の大ボスマニタスから、性転換手術の依頼を受ける。やむなく引き受けたリタは、世界各地を飛び回りやっと手術を受託した医師と出会う。ここまでの展開は、マニタスからの脅しのような期限遵守、法の目をかいくぐる、医師との何回もの折衝、性転換手術の方法のやりとりなどスリルとミュージカルシーンをあわせて緊迫した映像展開なっていた。
そして四年後。ロンドンでリタは「性転換」したエミリアと出会う。マニタスは死に、完全に別人女性エミリアになっていた。リタはロンドンで弁護士として活躍していたが、エミリアは、彼女を連れて母国メキシコへ帰り、家族と一緒に暮らすという。
メキシコに帰国したエミリアは、マニタスの伯母になり、妻と二人の子供と一緒に暮らす。そしてエミリアは、犯罪に巻き込まれて死んだ人や家族に対して、自らがおこなった悪行からまさに「転換」するように人道支援に力を入れる。
マニタスが手術前リタに言っていた「今の人生はまったく望んでいない自分だ」という言葉。マニタスは性転換のみでなく彼の人生すべてをゲームチェンジする覚悟でいたのだ。ただ一つを除いて。
すべてを捨てたのに捨てきれなかったものが家族だ。マニタスがエミリアになっても家族を愛していたことで、麻薬組織の大ボスでいること、心が女性であるのに男であることを捨てたかったのだ。マニタスの真実の心情がにじみでていた。
人道支援する際のパートナー、リタ。エミリアの真実を知るただ一人の人間でありもっとも信頼する友がいつもそばにいてくれる。恋人もできこれからというとき。あることがおきる。ラストシーンは、苦渋と真実の愛の発露とともに消え去るはかなさをかもしだしていた。エミリアは二つの「転換」を成し遂げたのだ。
ギャングなボスが性転換するという大胆な世界観に、ミュージカルと独創...
トランスジェンダー女優とラテン系俳優総出演のエネルギー溢れるクライム映画
内心では、
“お父さんは今日から、お母さんになったから“
で、済む話し・・・そうすればこんな大騒動にならないのに、
とか思ってしまいました。
この映画は特殊な設定です。
主人公は大金持ちの麻薬王マニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)
(大悪人で殺人をしてバラバラにしたり、溶かしたりは当たり前)
そんな彼が彼女になるために雇ったコーデュネーターは弁護士のリタ
(ゾーイ・サルダナ)でした。
医師の手配、偽造パスポートの入手、偽の名義の銀行口座の新設・・・
などの事務処理に手腕を発揮して(これって違法行為ですね)
4年後マニタスはエミリア・ロペスとしてリタの前に現れます。
“妻子を呼び寄せて一緒に暮らしたい“
身元は話さずに、親戚のお金持ちのエミリアおばさんとして
育児を手伝い、生活費を賄うことになります。
★性適合手術で別人になるためには、ヤバイ麻薬王のマニタスは
この世から消えます、殺されたことにしました。
(誰かがマニタスの死体に代わりになりました=殺人)
この映画がとてもユニークで楽しくて、展開が早くて面白い。
★ミュージカルなので、歌い踊ります。
マニタスの妻ジュリア役はセリーナ・ゴメス。
れっきとした大物歌手ですから、歌も踊りも抜群でオーラ全開。
おまけに若くて美しい。
★歌の歌詞が心の中を端的な言葉で伝えるので、場面転換の速さに
拍車をかけています。
メキシコシティ→スイス→ロンドン→メキシコシティ。
この移動も展開の速さを補っているし、
ミュージカル仕立ては大成功。
★妻が浮気して子供の奪い合いになる展開も、
★過去は捨てても性別を変えても、子供を愛する気持ちは
偽れない。
しかし、今までの悪が地獄まで追ってくる。
ラストはやはりギャング映画らしくエミリア、リタ、ジェシーを、
巻き込むドロドロの銃撃戦。
物騒で治安の悪い悪人天国メキシコ
(この辺がメキシコ人にはカチンときたらしい・・・)
ラストの悲劇は当然の報いで、想定内の、
それはそうだろうなぁ、・・・ですよ。
大悪党の麻薬王が慈善事業でチャリティー、
とか偽善も良いところ。
役者よし・・・本気度、華やかさ、
脚本よし・・・想定内でも展開の速さ、構成に驚く、
監督よし・・・フランス人のジャック・オーディアール。
アカデミー賞歌曲賞を受賞した
歌も、もちろんよし・・・バラードあり、ラブソングあり、
よく考えると馬鹿馬鹿しいけれど面白い映画でした。
腕力と、ラテンのエネルギーと、迫力に圧倒されました。
ジャンルをこえた超エンタメ映画
とりあえずめちゃくちゃ面白い。どんな作品か全く知らずに見に行ったら、わりと序盤でミュージカルシーンが始まったので、あれ?ミュージカル映画だったのか。と思ったらそんなことも無くて。ここだってポイントだけミュージカルシーンが挟まれる時もあるぐらい。しかも、めっちゃいい。主人公の人生も本当に変わってるし設定が面白い。ジェンダーなメッセージが強めの作品かと思ったら、あるにはあるけど、特別そうという訳では無い。激しい銃撃戦もあったりもする。とにかくめちゃくちゃ面白くてワクワクする。それでいて最終的にはメッセージ性もあったりもして感動もそれなりにする。アカデミー賞の時期は発言なんか色々と良くない話もあったが、作品に罪は無いので、興味ある人は是非1度見て欲しいですね。おすすめの作品です🥺
自分を大切にすることの大事さを教えてくれる
様々な映画祭で高い評価を得ていて早く見たいと思って公開の翌日に見に行きました。ありのままの自分で生きる人生と信念を貫くことがいかに大切なことであるかを思い起こさせてくれる作品でした。ミュージカルではありますが歌と踊りの楽しい映画ではなく、主人公の置かれた状況や心情をそのまま演者の演技で伝えさせるよりも詩的に歌で表現していく方が嘘っぽくなく、見る人の心にダイレクトに強く伝える手法としてのミュージカルと思います。そのせいかとても心に響きました。日本の人にとって、周囲に合わせるとか、他人を慮り自分の正しさを引っ込めてしまったり、それで自分自身を見失うという経験はあると思います。一歩踏み込む力、勇気をこの映画は与えてくれるかもしれません。特に若い人には自分を大切にすることをこの映画を見ることでもっと考えてほしいと思いました。エンドロールに流れる歌詞はとても心に残りました。若い人には是非見てほしい作品です。
罪滅ぼしといいつつ身勝手
鑑賞した頃アプリが不調で書き込めなかったのですが、意外なほど高評価が多くてびっくりしました。
「リリーのすべて」や「わたしはロランス」もそうだけど、結婚してから昔からの気持ちが抑えられなくなってトランス手術する男の言動が、あまりにも身勝手で女性としてイライラします。
おまけにエミリアは過去の醜い所業で得た莫大な富を罪滅ぼしに慈善事業に乗り出すのはいいけど、そこで感謝とかされるのもなんだか納得できない。
自分は新しい恋のお相手とルンルンするくせに、嫁が他の男と結婚しようものなら相手を殺す勢いなのは、術前の医師と弁護士の会話「姿を変えても本来の人間性は変わらない云々…」というのが伏線になってたかな?所詮独占欲の強いチンピラにしか見えなかった。
最後も対立するギャングとか政治家に誘拐されるならまだしも、なんじゃそりゃな展開だし。
いきなり雪国に行かされたかと思えば呼び戻されて束縛されたり、嫁と子供が可哀想で仕方ない映画でした。
アカデミー賞取らなくて良かったです。これが取ったら怒り心頭ですよ。
ゾーイ・ザルダナとセレーナ・ゴメスがとても良かった、ダンスシーンも、それだけは良かった。
エミリアの生き方は魅力的でした
気の強そうな中年の女性の顔がアップで、まっすぐこちらを見ている。
そんなポスターを遠巻きに見て、「自立する女性の人生賛歌」を描いた普通の人の日常を描いた物語だと思い込んでスルーしていました。
しかしポスターの文字をよく読むと「彼女はかつて、最恐の麻薬王だった」とあり、がぜん興味を惹かれたものの、残念ながら既に上映終了。
今月、キネマ旬報シアターの追加上映のおかげで、ようやく鑑賞できました。
いくつものレビューを読んでから鑑賞したため、いきなりのミュージカルに驚くこともなく、エミリアの行く末もほぼ想像できましたが、数々の高評価レビューにほぼ同意です。
ただ、この映画の魅力を損ねる程の事ではないですが、麻薬王が女性の姿になって現れエミリアと名乗って以降、「性転換した麻薬王」ではなく、「麻薬王の女性親族」という印象がやや強く、性転換の設定が少しだけしっくりきませんでした。
また、全てを捨てて女性になったはずの麻薬王が、自分の子供達には執着を残していたのが意外でした。子供たちに対しては、父性というより母性を感じる愛情表現だったので、やはり心は女性だったのですね。
エミリアはお父さんの匂いがする
メキシコには行ったことはない。まぁまぁの中所得国で陽気で明るい国民性だが、貧富の差もあり犯罪発生頻度は高く特に麻薬関連の犯罪が多い国のイメージである。なのでメキシコを舞台にした映画やドラマは麻薬とそれに絡む銃撃戦ばかりが描かれる。
この映画も元麻薬王が主役だが、そのテーマは異なる。悪の限りをしてきたマニタスは2年前から密かにホルモン注射をし女性になる準備をしており、弁護士のリタをスカウトし彼女の完璧な計画により性転換と自身を死んだと見せかけ生まれ変わることに成功する。これだけで展開力だが抜群だが、それを更にミュージカル仕掛けで観せる。そして4年後、ビジネスが成功してるように見えるリタの前にマニタスからエミリア・ペレスになっていた「彼女」が現れる。生まれ変わったとは言え家族が恋しくてたまらないエミリアはマニタスのいとこと嘘をつき妻と子供と同居する。何とか秘密がバレませんと思うが、息子はエミリアが懐かしいお父さんの匂いがすると言う。さらにエミリアはかつての自分の罪を償うように慈善活動に邁進する。そしてその後、色んなことが起きて、遂にはかつての妻と悲惨な末路に、、。
自業自得の最後だったのかとも思うが、エミリアがもっと心も体も別人になり奇跡のファンタジーの世界に入っていってもよかったのかと思ってしまいます。
オスカーは「アノーラ」が獲ったが、断然この「エミリア・ペレス」の方が良かったなぁ、。
因果応報
色々と話題になっていて近所のミニシアターでやっていたので鑑賞してみた。メキシコの麻薬王のマニタスが自分の罪や敵から身を守るために男性から女性に性転換したいと弁護士のリタに頼み込むことから始まるお話し。ちょっとしたセリフを口ずさむようにミュージカル風にした演出は斬新で楽曲は耳に残るものは多いがマニタスとエミリアのギャップがありすぎてなかなか感情移入は出来ずらかった。でもゾーイサルダナは主演と言っても良いのではと思わせるほど演技力・表現力が素晴らしかった。反対にセレーナゴメスは悪いビッチな役で最期はエミリアとともにあっけない幕切れだった。因果応報というか何というかやりきれない気持ちにさせられた佳作。
えっ!?ミュージカルだったの?
封切り直後より ブックマークしていて
なるべく前情報をいれないように気を付けていた
で、今日やっと 二番館(って今言います?)シアターキノにて鑑賞。
面白かった!
まず、驚いたのが
「何これ?!?ミュージカルだったの?」
冒頭の車中のシーン、
効果音に合わせてのラップ
あれ、すごく好き
実は自分、映画以外のもうひとつの
趣味が 「裁判傍聴」なので
弁護士の台本通りに被告人が
セリフを言えなくて、イラつく
場面、 とても興味深かった
その後の展開も ミュージカルシーンが
ほどよく散りばめられて飽きさせない
いちお、フェミニズムとか
クイア映画に分類されるのか
わからんけど、
家庭を持った後 「本当の自分」に
目覚めちゃってからのその後の顛末。
思い出したのは 沖縄出身の
自殺したタレント。
身勝手なのか、我が道をいった
潔さと、捉えるのが正しいのか?
途中の性転換後の「同性」の恋人の登場。
「性自認には、58種類あんねん!」ってことか?
先日の、試写会「 We Live in Time この時を生きて」でも思ったが
セクシュアリティがこうも多様になってくると
映画は複雑で奥深く、見応えがある作品が
どんどん増えてくる
幸せとは
ゾーイサルダナとセレーナゴメス出演ということで気になってた作品。
まさかのミュージカル映画だった。
そして英語かと思ってたら、スペイン語だったし、フランス映画なんかい😂
ほぼ歌なのかセリフなのか。セリフちっくな歌は新鮮だった。
感情を表出した歌やダンスに圧巻された。
そして流石歌姫セレーナ。エンドロールで流れる彼女の曲は昔のSelena Gomez & the Sceneの楽曲に似てて懐かしさを覚えた。
彼女自身、父親がメキシコ人ということでスペイン語が話せるし、スペイン語の楽曲も出している。
音響も前半は薄く感じたが、中盤から後半にかけて響くような音響だし、スクリーンと音が一致していたのも良かった。(右から聞こえる、左から聞こえると言いたい)
カメラワークも一緒に思いを表出するようなアクセントやこれから起こる注目して欲しいところにピントを当てたりと観客にとって観やすい状態を作り出してて、観てて面白かった。
ストーリーはまさかのトランスジェンダーのお話。主演女優のカーラ・ソフィア・ガスコン自身もトランスジェンダー女優だそう。
多様性の文化と言われている今の時代に観て欲しい作品ではあった。
私は正直多様性文化に興味がなく推しているわけでも批判しているわけでもない。
当事者自身が他人に迷惑をかけないのであれば好きなようにすればいいんじゃないと思っていて、
まさにこの作品はそれを訴えているように感じた。
自分は実はこうでしたと後出しほど酷なことはない。男性としての役割を果たしておいて、でも女性になりたいというのは正直無責任だと思う。それなら納得するまで話し合いをするべきだと思った。
今海外でも同性同士で結婚して子供が欲しいから養子や代理母をとるということをよく耳にするけど、これは誰にとって幸せで誰にとって不幸なのか先のことを考えて行動しているのかと当事者たちに聞きたくなる。そう言ったことを話を変えて訴えているように感じた。だからこそこの結末はとても良かったと思う。
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