劇場公開日 2025年3月20日

「2020年代に相応しいCatholic entertainment」教皇選挙 秋房さんの映画レビュー(感想・評価)

4.52020年代に相応しいCatholic entertainment

2025年3月31日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

いやあ、映画『教皇選挙』、実におもしろかった。カトリックが混じり気なしの100%pureな教会だ、などと思っている人は、この世のどこにもおらぬでしょう。同教会の歴史は、カノッサの屈辱や十字軍の遠征、アナーニ事件に教皇のバビロン捕囚と、数々の悲劇喜劇に彩られてきた。ましてやコンクラーベ(次代教皇選挙)となれば、お家芸たる権力闘争の頂点となるのは必定。ちょっと正確な言い回しは忘れてしまったが、枢機卿たる者、自分が教皇になることを思い描かぬ者はいないという感じのセリフがあって、そりゃそうだと思った。私が枢機卿なら、私だってそう思うよ。オレだって「男」だからな。

出演者は、予想できたことではあったが、そのほとんどがオジサン・おじいさんたちである。しかし、カトリックには、もともと多様性を受け入れる素地があった。そもそも、16世紀、今から500年前に、プロテスタント旋風に対抗して、カトリックの信仰を世界に拡大すべく比喩ではなく命を賭してヨーロッパからこの極東辺境の小国にたどり着いた者はいったい誰であったか?彼らは、驚くべきことに、羅針盤と風を頼みにここまで来たのだ。もちろん、さまざまな打算もあっただろう。だが打算のみでそこまでできるほど人間は強い者ではないのではなかろうか。

だから出演者も、2020年代の現実のカトリック教会を反映して、もちろんヨーロッパ系男性が圧倒的多数ではあるが、アフリカ系やアジア系もチラホラ見られる。entertainmentとしての権力闘争を織り込みながらストーリーは進む。選ばれた者が発した教皇名には、演者同様、われわれ高校世界史選択者も微妙な笑みを浮かべざるを得ない。そして最後の展開、たぶん意外と思う人はいないだろう。驚きはするが、2020年代のコンクラーベを扱った作品の結末としては、アレには納得せざるを得ない。

いやすばらしい。山川出版社『詳説世界史』『詳説日本史』愛読者は必見だと思う。細川ガラシャや、ジュリアおたあにもみてほしい、全きエンターテインメント作品。

秋房
iwaozさんのコメント
2025年4月3日

「沈黙」と通じる、信じる道の話でしたね。^ ^
でも映像美も素晴らしく、さらに
エンタメ!って所が良かったです!
心の中に沸き起こる
疑念との葛藤!
ただ前進することのみでしか
己が道は作られぬ。
結局のところ、道は
己が道、ただ一つ。
自分で自分の生き方を
決めるしかない。
なんて事を考えさせられました。

iwaoz
ノーキッキングさんのコメント
2025年3月31日

極東、蕃族の地で布教した宣教師達の苦悩。遠藤周作の『沈黙』は川端康成に続くノーベル賞候補でしたね。だから、長崎はキリスト教会公認の巡礼地になりました。

ノーキッキング
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