アプレンティス ドナルド・トランプの創り方のレビュー・感想・評価
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兄ちゃん
TWAのパイロットという立派な仕事に就きながら、父から蔑まれ息子のうちに数えてもらえなかった、トランプの兄ちゃんにいちばん感情移入してしまった。ロイ・コーンというトランプの人格を作り上げるに影響大であった人物との付き合いも、兄ちゃんの後押しあってのことだったんである。どこか兄ちゃんに支えられながら、父に勝ちロイ・コーンに勝つためには、兄ちゃんの情緒的で優しい部分は切り捨てられなければならなかった。/killerとしてのトランプも父もロイ・コーンも、肉体に裏切られるというところも面白かった。/アメリカ的男性性の毒を描いた作品として、『アイアンクロー』と合わせて見たい作品だと思った。/セバスチャン・スタンの“トランプになっていく”演技がうまかった。
面白かったです。
事件屋見習いのトランプの成り上がり
アプレンティス トランプの創り方
栴檀は双葉より芳し、と言うより、
負けない弁護士ロイの勝利の法則を実践して成功しているトランプは、
マッチポンプの事件屋だから如何しようもないに尽きる。
物事の表裏を知った弁護士社会の勝利の法則を、
何でもかんでもビジネスライクに処理して行くトランプに危うさ感じざるを得ない。
そんな見習い事件屋に足りないこと、
それは法ではなく人なのだと気づかせたロイとの誕生日会にはホッとさせられたが…
それにしてもアル中の兄への冷遇と死亡、家族の信託書換えになど一途に勝利のために手段を選ばない怖さを予知させている。
自分のビジネスの勝利のためにコンプライアンス遵守など一つもない。
真実とは一つではないから何をやっても勝たなければならない。とは、賭博師だよね。
ニクソンの盗聴事件はロイ法則と全く同じではないか?
トランプの議会襲撃事件もそれと同じ?
不動産ビジネスと国家運営とは全く違うと思うのだけれど、
如何だろうか?
アメリカ再富国強兵、殖産政策後のクツワの音が聞こえて来る。
( ^ω^ )
アプレンティス ドナルド・トランプの創り方
「ボーダー 二つの世界」のアリ・アッバシ監督が「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタンを主演に迎え、実業家で第45代アメリカ合衆国大統領として知られるドナルド・トランプの若き日を描いたドラマ。
成功を夢見る20代のトランプが、伝説の弁護士に導かれて驚くべき変身を遂げ、トップへと成りあがるまでの道のりを描く。
1980年代。気弱で繊細な若き実業家ドナルド・トランプは、不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ破産寸前まで追い込まれていた。
そんな中、トランプは政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き弁護士ロイ・コーンと出会う。
勝つためには手段を選ばない冷酷な男として知られるコーンは意外にもトランプを気に入り、
「勝つための3つのルール」を伝授。
コーンによって服装から生き方まで洗練された人物に仕立てあげられたトランプは数々の大事業を成功させるが、
やがてコーンの想像をはるかに超える怪物へと変貌していく。
弁護士コーン役に「ジェントルメン」のジェレミー・ストロング。2024年・第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
アプレンティス ドナルド・トランプの創り方
劇場公開日:2025年1月17日 123分
「トランプ圧勝」「レッドシフト」と言われる事の事実関係
・2024年大統領選でトランプは初めて民主党より得票数で上に立った(7800万票近く得票)。ハリスに対して280万票程度上回った。
・なお民主党は2020年8120万票に対して7500万票まで減った。トランプは激戦州で80万票超の新規投票者獲得をした上で200万票超を民主党から鞍替えさせた。残り400万票近くは投票放棄という形で減った(なお第3政党・独立系立候補者が260万票ほどとっているがここも50万票近く減っている)。
・選挙人団の州人数配分は連邦上下院定数を合計したものになっている。この関係で人口の少ない州は最低3人の枠を持っており人口の多い州の意思が通りにくくできている(ワイオミング州だと人口58万人で選挙人団3人。カリフォルニア州は人口4000万人近くで選挙人団54人)。人口の少ない州は大抵共和党支持なのでトランプは16年選挙でクリントンより280万票少ないにもかかわらず「圧勝」した。ゲームのルール、勝者を決める仕組みとしてはわかっている話なのでいいんですが、ただこれを「圧勝」と呼ぶのはデータ見てないだろというしかない。ちなみに2016年と2024年の得票差は近い数字です。
・2024年選挙は投票数が大きく減っていて、それは民主党側の支持層が起こした反応だと見られる。「レッドシフト」と言われるが実態は投票数の減少=民主党支持指標の減少が大きくて得票率の変動はこれに影響されている。ハリスも嫌だがトランプも嫌だという人が400万人近く出た事が「レッドシフト」を大きく見せている。
・『アプレンティス』いうまでもなくトランプが「お前は首だ」で有名になったリアリティショー番組のタイトルでもある。
・トランプの調査報道をまとめた本が訳されている。文芸春秋社『トランプ』(2016)。ロイコーンの話を含めて詳しいのでおすすめです。
むしろトランプ支持者が増えそう
ピカレスクロマン(悪漢物語)としてそれなりにつくられているので、むしろトランプに感情移入する人も多そうな出来上がり。
トランプが嫌いな人は批判的に見られるだろうけど、そうでない人や元からの支持者には、困難を乗り越え、父や恩人さえ蹴落としてのし上がっていくヒーローに見えるでしょうね。
演技陣はいいです。とくに主役は、あのトランプがちゃんと映画の中にいる感じがします。風貌や喋り方までよくコピーしています。
トランプがロイ・コーンの戦術を学んでつくられていったというあたりがストーリーの中心なんでしょうけど、こういう人であることは知ってるし、過去に悪どいことをやってきたのもだいたいわかるので、これならドキュメンタリー映画にした方がよかったのではという気もしました。
ただ、ロイ・コーンが落ちぶれ、信頼できる人が周りに誰もいない状態の末路をたどったのが、将来のトランプの末路だといいたいのかもしれません。
イメージと違いました
映画として観れないひとは観ない方が良い
それにしてもアメリカは・・・
以前からなぜトランプはYMCAで踊りまくるのか、自分の支持層を考え...
もうすぐ始まる
~ネタバレ~
勝つためには手段を選ばない師匠に若きトランプは言った。
「それは違法では?」
師匠は答える。
「アメリカ!!」
「アメリカの国益の為ならどんな行為も許される」
~~~~~~~~~~~
今「アメリカファースト」を掲げる大統領が生まれようとしている。
彼が何をするか推して知るべし。
ロイコーンの強烈なキャラクター
トランプの若いころの映画らしい
時代的には70~80年代のアメリカという感じ
本作では個人的にもトランプよりも
トランプの師匠であったロイコーンのほうがキャラが強烈だと思った
彼は「赤狩り」でローゼンバーグ夫婦を電気椅子に送るために
違法な手段まで使った悪徳カリスマ弁護士らしい
勝利のために以下の三つのルールをトランプに教える
1攻撃 攻撃 攻撃
2非を絶対認めるな
3どんな苦境でも勝利を主張し続けろ
このルールはネット社会になった現在では
さらに世間で有効になったように思う
バズった政治家とか普通に使いそう
ロイコーンの言葉はいろいろ強烈で
それによってトランプが大物になっていくという感じだが
トランプは成功するために行動をしている感じになっているが
信念みたいなものはあまりないので空虚な感じがする
ロイも危ない道をわたってまでトランプを助けようとした理由がよくわからない
トランプがビッグマウスで「税金を免除してもらう」というところは
ロイは助けなくてもよかったよなと思った
ロイは筋トレでストイックだったりするが
トランプはカネと医療によって
コンプレックスを解消しようとする部分が
二人の対比をしていると感じた
ロイはゲイであり、晩年エイズになって亡くなってしまうが、
そのことをインタビューで最後まで認めなかったのは
3つのルールを最後まで守ったことになるのか?
彼は「赤狩り」の急先鋒だったり
当時は共産主義に対して相当な危機感があったので
反左翼、反共産主義がアメリカのためになるという
信念がかなり強いように思えた
トランプはイヴァナに相当ぞっこんだったのに
まったく興味を持てなくなってしまう
トランプの裁判の発端は
黒人を入居させなかったことから始まっているが
差別主義者としては描かれていなかったので
妻へのハラスメントなどは衝撃だった
ロイがエイズになったときに
距離をとっていたときがあったのは
エイズが怖かったからなのかなと思った。
そのあと、普通に接していたし
最後にトランプは3つのルールを
語るがそれを「自分でつくった」ようにふるまうが
トランプは過去を詮索されるの露骨に嫌がるのは
ロイとの関係を隠そうとしているように感じる
トランプ嫌いのトランプ嫌いによるトランプ嫌いのための映画
2025年劇場鑑賞21本目。
エンドロール後映像無し。
ただの金持ちのジュニアだったドナルド・ジョン・トランプが、弁護士ロイ・コーンに色々叩き込まれ今の悪魔になったという話。この映画ではトランプは徹底的に非人間として描かれており、ちょっと好きになる余地を一切排除していてトランプ嫌いがますますトランプ嫌いになるよう作られています。これはさすがにトランプが上映中止に動くのも無理ないですね(笑)
でも冒頭のニクソンの「大統領が不正していないか調べる権利が国民にはある」という実際の会見の言葉が全て物語っているように、あんな奴大統領にしちゃダメだよ、ということを思っている身としてはアメリカ国民全員に選挙前に見て欲しかったなと思わすにはいられません。
【”ドナルド・トランプという怪物を生み出したモノ”ひ弱な若きトランプが周囲の人のエキスを吸ってドンドン怪物になって行く様と、演じたセバスチャン・スタンが、ドンドントランプに見えてきた事に驚いた作品。】
ー 私は、ドナルド・トランプという男が大嫌いである。だが、今作は何故にあのような怪物が出来上がったのかを、明瞭に描いていて大変に興味深く鑑賞したモノである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・20代に厳しい父の跡継ぎとして不動産業を任されたトランプが、ローゼンバーグ夫妻をソ連のスパイとして死刑に持って行った悪徳弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング:一切、笑顔を見せない怪演は素晴らしかった。)に多大なる薫陶、影響を受けて行く様は、実に見応えがあった。
特に、ロイからの三つの教えである。
1.攻撃、攻撃、攻撃
2.自分の非を絶対に認めない
そして、”一番重要なのだが・・、”というフレーズの後に告げられる
3.自分の勝利を主張し続ける
これ、今のトランプそのモノじゃない!
トランプが、元々は”中身のない空っぽな男”であり、彼が怪物になって行った大きなきっかけが悪徳弁護士ロイ・コーンに、気に入られたという事が明瞭に分かるのである。
・更には、最初に一目ぼれしたチェコスロバキア出身のモデル、イヴァナ(マリア・バカローヴァ)への猛アタックシーンの数々。部屋中が一杯になる程の薔薇を贈り、スキー場まで追いかける姿。彼女が結婚していたにもかかわらず。マア、ドッチモドッチ夫婦である。そして、豊胸手術までさせておいて飽きると浮気をする。人間として駄目駄目である。
・兄が困窮してやって来ても、部屋には入れずにハイアット・ホテルに部屋を取る姿。で、兄は急死。
序でに、老いたロイ・コーンから何度も電話がかかって来ても出ずに、ロイからの教えをインタビュアーに自らの考え方の様に、滔々と述べる姿。
漸く、エイズに罹患している可能性があるロイを海が見える別荘に招き、彼の59歳の誕生日を祝うシーンでの、ロイが、初めて見せる涙。あれは、嬉し涙ではなく悔し涙であろう。そして彼が亡くなると、トランプは、さっさと部屋中を消毒させるのである。
・彼の肉体改造シーン。アンフェタミンを常用していたために腹が出て来て、髪も薄くなった時に、脂肪吸引、頭皮切除するシーンも凄かったなあ。
今でも、色々とアヤシイ薬を飲んでいるのかな?
<今作は、ひ弱な若きトランプが周囲の人達のエキスを吸ってドンドン怪物になって行く様を見事に描き出し、且つトランプを演じたセバスチャン・スタンが、ドンドントランプに見えてきた事に驚いた作品である。
今後の世界、大丈夫かな。それにしても、この映画を良く上映したモノだなあ。>
「ハゲ」は地雷ワードw
「ボーダー 二つの世界」「聖地には蜘蛛が巣を張る」の2作で自分の心をガッチリとワシづかんだ鬼才アリ・アッバシの最新監督作。
米国と対立関係にあるイラン出身の彼のトランプに対する視点は同じ非アメリカ人としても非常に興味があった事もあり凄く観たかった作品。
トランプの傲慢で自己中心的な性格は父親の教育方針から培われたものとばかり思っていたが、そんなのは全然甘く、攻撃的でどんな手段を使っても勝ち続けることに拘る歪んだ帝王学はロイ・コーンという弁護士の影響が大きかったというのは知らなかった。
トランプタワー完成以降すっかり自信を持ったトランプがコーンを超え、コーンや身内に対しても非情な態度を取る、まさに「悪魔」となっていくさまが極端だがドラスティックに描かれ興味深かった。
また若い頃の話を聞かれると「過去をあら探しされるのは大嫌いだ」とあからさまに嫌悪するのは弱かった自分がよほど嫌いだった事だけでなく、イリーガルなビジネス手法が世に知れてしまう事を避けるためだと思う。
常に髪型を気遣ったり、イヴァナに豊胸させたとか、デブや醜いと言われても怒らなかったがハゲと言われてブチ切れたり、自身の脂肪吸引とハゲてる頭皮を切り取る手術などのシーンは皮肉が効いてて面白かった。(怒られないのかなw)
トランプ役のセバスチャン・スタンは後半になるにつれだんだん似てきた。
イヴァナ役は本人より綺麗ではないという映画では珍しいパターン。(主観です)
ロイ・コーン役のジェレミー・ストロングと多分後添え役のマーラ・メープルズ役の女優さんはそっくり過ぎて驚いた。
上映館もっと増やした方が良いのでは、と思うほど錦糸町はおじさん、おばさん達で満席だった。
目を背けたくなるシーンあり。
面白おかしくドラマを作っているだろうが、強調されるから、ちょっと、目を背けたくなるシーンも何ヵ所かある。ご本人サイドも、この映画をフェイクと訴えているらしいが、妻のイヴァンカに後ろから襲いかかるシーンはグロテスクだ。亡くなったイヴァンカの自伝にあるということだが、ドアップで劇場で、それも若くもなくロマンスでもなく、他人のご夫婦の情事を見させられるのはちょっと、ストーリーとは関係なくきつすぎる!フェミニズムの観点からトランプはひどいやつだという印象操作だろうが。敢えてこういうのを入れる所が、反トランプのプロデューサーが作っただけある映画だ。
師匠のロイが、結婚して離婚するときは夫から妻へのプレゼントを返還せよと、イヴァンカに婚前契約の文言をいれたが、晩年に、トランプからウソモノのTIFFANYのジルコニアを贈られ涙するシーンがあった。人間は身体が丈夫なときはいいが、不健康になったら自分がトランプに教えた事が堪えるものだなぁ。(苦笑)
これからのトランプと、我々日本人も共に同じ時を過ごすのだとおもうと、全く関係ない場所に住んではいるが、自分と同じ時代にいきているってすごいことだなぁ。ちょっと怖い。
楽しくない
この手のピカレスクロマンは主人公が成り上がって行くところが破天荒でわくわくさせてくれないと話が成立しない。「ウルフ・オブ・ウォールストリート」とか「スカーフェイス」など、主人公があくどい手を使いながらものし上がっていくさまが楽しかった。
ところがこの映画はそこがさっぱり。
参謀役がちょっと議長を脅したからあっさり成功するし、途中市長と対立するところでもどうやって回避したかさっぱりわからんままトランプタワーが建ってしまう。これでは興奮しろと言うのが無理だ。
中盤以降はあれこれ要素はあるが消化不良のままどんどん進んでいく感じ。父親を騙そうとしたくだり、あれはどうなったんだとかね。金に困り始めてたけど、それがどうなったのかも描かれない。アトランティックシテイの話もね。たぶん失敗したんだろうがこれまた投げっぱなしのまま。
制作者はピカレスクロマンの文法をきちんと研究すべきだった。やりようはいくらでもあったと思うけどね。
非アメリカ人が描くアメリカ
本作を描いたアリ・アッバシ監督はイラン系デンマーク人である。祖国であるイランがアメリカと仲が悪いことは有名だが、その理由をよく調べてみると、1979年のイラン革命によって起きたイランアメリカ大使館人質事件がきっかけになったらしい。翌年に国交を断絶して、これが現在まで続いている。さらに、彼は非アメリカ人でもある。それだけにトランプという人物の枠を超えて、アメリカという国、そして、その国の資本主義システムに対して批判的である。代表作「聖地には蜘蛛が巣を張る」は未見だが、″スパイダー・キラー″と呼ばれる娼婦連続殺人犯サイードが、聖地を浄化する英雄として祭り上げられていくプロセスを生々しく描いているという。これは、イスラム社会における女性蔑視・男性支配を鋭く暴いているようだ。つまり、アッバシ監督は、トランプやサイードという怪物を描き出すだけでなく、その根底にある社会システムの歪みを批評するという映画をつくっている。
本作は、70年代から80年代のニューヨークを舞台に、ドナルド・トランプとロイ・コーンの師弟関係に焦点をあて、ビジネスマンとしての若きトランブの実像を赤裸々に描く伝記映画である。ロイ・コーンとは、ジョセフ・マッカーシー上院議員の主任弁護士として赤狩りを主導した政治フィクサーである。常に攻撃し、決して不正を認めず、負けても常に勝利を主張するという「勝つための3つのルール」をトランブに伝授し、彼をモンスターとして洗練させていく。とにかく攻撃的で、自らの非を認めずに徹底するコミュニケーションの仕方は、現代においては、アメリカという国の特有の考え方ではなくなり、SNSなどでは今やありふれた光景になっている。
選挙の結果はご存知の通り、トランプが圧倒的勝利をおさめた。この映画のメッセージは、届けたかった人たちに届かなかったということになる。そもそもこういう内容の作品を鑑賞する人たちは、トランプ支持層には少なかったのだろう。
あくまでも客観的
SWなどの世界同時公開作品を除いて洋画の公開が世界一遅い日本(嘘)、クリスマス映画を夏にやったりしているが、今作に関しては本人の大統領就任とほぼ同時というまさにグッドタイミング。そのおかげで日本では映画好き以外は知らない俳優しか出てないのに場内満席でビックリ。
話はトランプがまだ青年の頃からあの悪趣味なトランプタワーを建てるあたりまでを決して批判的でも好意的でもなく描いている。
トランプは次男坊でお兄さんがいたんだね。父親も権威主義者でそれが合わない長男には悪影響だったが、兄を反面教師にこそしていたとしても人格形成に影響を与えるほどにはトランプは高尚な人間ではないと見た。
セバスチャン・スタン自身の顔がパッと思い浮かばないせいもあってか、演じているトランプを「誰かに似ているなあ」と思いながらずっと見ていた。誰だ、タカアンドトシのタカ?いや、似ているのはトランプか。
しかし、こんな品性下劣なヤツが単なる不動産王じゃなくて政治家というか一国というか大国の大統領って、ほんま世界は終わってる。
プロパガンダか、問題提起か? これがトランプの実像なのか?
日本橋の映画館は公開3日目でほぼ満席。最前列での鑑賞となった。アメリカ新大統領、そしてこの映画への関心の高さを感じる。
鑑賞前の懸念は、多くの報道やメディアで知識人たちが強調するトランプの「悪魔性」を一方的に強調するものではないかということだった。多くの問題を抱える毀誉褒貶の激しい人物であるのは周知のことだが、2回の民意の支持を受けた人物である。そこには、多様な価値観の渦巻くアメリカの複雑な人々の意思が反映されている。
単純に断罪する視点で描くのは、彼に託された民意を矮小化するものになりかねない。そんな映画だとイヤだなと思ったのだ。
イラン出身のアリ・アッバシ監督のこれまでの作品は未見だが、調べてみると、単純な善悪の二元論でわかりやすく描く監督ではなく、「人間の複雑性」や「真実と言われるものの曖昧さ」を描いてきたという評価のようだ。期待を高めつつ、座席に座った。
冒頭で、弾劾され辞任したリチャード・ニクソン元大統領の記者会見を引用し、明快にテーマが提示される。
「もし、大統領が悪魔なのであれば、国民はそれを知る権利がある」
そして若き日のトランプの物語が始まる。
序盤では、権力とお金にしか興味がない若き日の彼の姿が描かれる。デート相手の女性が彼の軽薄さに嫌悪感を抱き、トイレに向かう姿が象徴的だ。
記録映画と見紛うほどトランプ本人にそっくりな主演俳優の演技がリアルで、エピソードも戯画化されつつリアリティ抜群だ。
物語は、資産家2世としての初々しい野心を持った若者のトランプが、悪魔的な能力を持つ弁護士ロイ・コーンに気に入られるところから進む。コーンはトランプに勝利の方程式である「3つの原則」を叩き込む。
1. 攻撃は最大の防御である
2. 決して謝罪するな
3. 現実を作り出せ
トランプはこの行動原則を武器に、欲しいものを次々と手に入れる。障害となる人物を社会的にも経済的にも「抹殺」することにためらいはない。
映画で描かれるトランプの実像は、徹底的に醜悪だ。恩師も、父母も、兄妹も、妻や子供すらも愛せない人物として描かれる。そして、自らの醜さを覆い隠すために整形手術を受ける場面では、その醜悪さがさらに強調される。
彼にとって「愛」や「絆」は重要ではなく、「3つの原則」のみが彼の人格を形作っているという印象が残る。
また、映画では政治家になる前の彼のルーツが描かれるが、何らかの社会課題認識や志に基づく政治的野心の原点は描かれない。本当に何もない空虚な人物ならば描きようがないのかもしれないが、これまで「人間の複雑性」をテーマにしてきたという監督の作風とは異なるのではないか。紋切り型に善悪の二元論で描く、ピカレスクエンタテイメント作品と私には見えた。
ラスト近く、伝記作家と思われる人物とのインタビューシーンで、トランプには語るべきルーツも思想もなく、彼の中にあるのは『3つの原則』だけの空虚な人物であることが重ねて描かれ、映画の締めくくりとなっている。
最後まで飽きさせない、強烈に面白い映画であった。
しかし、アメリカの複雑な民意を反映して選ばれた人物としてのトランプには一切触れられない。もちろん、政治家になる前の彼のルーツを描く映画だから、触れようもないのかもしれない。現代アメリカの複雑な現実に触れることなくストーリーが終わる点は物足りなさを感じるが、それこそが監督の狙いでもあったのだろう。
冒頭で投げかけられた問い――「もし大統領が悪魔ならば、国民はそれを知る権利がある」――は、映画全体を通じて、その悪魔性が補強される。
一方で、この映画には監督自身が「自らにも繰り返し問いかけた」作家的な深い問いではなく、観客を啓蒙しようとする意図が感じられた。まるで、「愚かな大衆の1人であるあなたにも、これでわかったでしょう?」と言われているような気さえした。
この映画を見たトランプ支持者はどう感じるのだろう? 本作は対話を生まず、分断を加速するのではないか?
とても面白く、よくできたプロパガンダ映画だ。これが観賞後の率直な感想である。私は何かを見落としているのだろうか?
明日就任するのは本当にこの人?
大体の悪徳弁護士ものは、倫理的にどうなの?とか、違法すれすれ!というものだが、ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)は完全に違法。
それでも、挙げられないのは、声を上げれば自らも破滅してしまうという人間の弱みをがっちり掴んでいる「勝者」だからなのか。ウツボのような澱んで微動だにしない瞳が恐ろしい。
そんなコーンに助けを求めたトランプ(セバスチャン・スタン)は、ウツボに飲み込まれて消化されてしまうのかと思ったら、大き過ぎてウツボがゾウの形に変形していく。
水をちびちび飲みジジババ相手に集金していた冴えないトランプが徐々に自信をつけていくところは応援したくなるような部分もあったが、増長し過ぎた彼は人間として醜悪極まりない。ラスト近くの手術はあえてグロテスクな描写が、フランケンシュタインのような怪物を作っているようにも見えた。
彼が超大国の主となるこれからの4年間、日本も相当強く出ないと滅茶苦茶にされてしまう。それにしても、次期大統領になろうという人を題材に日和らず忖度せず、よくこういう映画を作れるな、とアメリカの表現者たちのバイタリティは本当に尊敬に値する。
それにしても、コーンはどうしてあんなに力をなくしてしまったのかが分からず。年と病気が原因としても、愛人1人良い施設に入れられないなんて、お金は使い果たしちゃったの??
終わりがあっさりしすぎて、もっと見たかったので少し物足りなかったけれど、全体として怖さとストーリーがしっかりしており、見応えあり。ジェレミー・ストロングとセバスチャン・スタンの演技も素晴らしかった。
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