「痛快という人もいるかもしれませんが」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 greensさんの映画レビュー(感想・評価)
痛快という人もいるかもしれませんが
この作品は、現アメリカ大統領のドナルドトランプ氏が、ロイコーンという(悪辣な)弁護士と出会い、彼を師と仰ぐことで、ついには彼をも凌ぐモンスターになってゆく過程を描いています。
他の方も言っているように、この作品で描かれたロイコーン、ドナルドトランプが、実際の人物にどれだけ忠実かはあまり考えずに観た方が良いと思います(もし80%忠実だとしたら、、それはなかなか空恐ろしい気も、、、)
ロイコーン役を演じたジェレミー・ストロングさんへ文春オンラインが、役作り等についてインタビュー記事を載せていて興味深く感じたので、観に行ってきました(ちなみに、ストロングさんの役作りの仕方は、何か建物を建てるかのような面白い捉え方でした)。
小さい映画館がほぼ満席でしたが、テーマがテーマなので、観客は年配の男性が多かったです。
作品中のロイコーン弁護士も、トランプ氏も、自分が勝利するためには汚い違法行為をも辞さずに勝ちにいく人物として描かれています。
ストーリーの序盤は、トランプ一家が、経営する不動産へ黒人の入居を拒んだという理由で政府から不当?に訴えられたところを、ロイコーン弁護士が、政治家のセックススキャンダルを使ってゆさぶりを掛け、封じ込める話が描かれます。不当な裁判をひっくり返し、それをきっかけに不動産王への道を爆進する、ということで、ある種の痛快さを感じる人もいるかな、とは思いましたが、、、やはり汚い手を使ってでも勝ちに行くという、後ろ暗い生き方のグロテスクさは、作品全体を通して表現されていたように思いました。
う〜ん、こういう生き方は自分はしたくないなあ、、の一言につきます笑
自分が置かれた環境によって、そういう生き方をしないで済むのならば、それに感謝しないとね、、。
今の時代、人は何歳まで生きるのか分かりませんが、仮に自分が人生の前半、ロイコーンのような激しい人から足を払われたり、利用されたり、理不尽な目に会ってばかりいたとしても、人生の後半、そういうことと無縁で(やられず、やらず)生きられるなら、人生万々歳かな、と思いました(ああいう世界に一生生きるとか、ムリ!笑)
この世で大事を成す人は、本当に全てこのように清濁併せ呑む人ばかりなのでしょうか。
役作りのインタビューに興味を持って観に行きましたが、自分には毒気が強すぎた感じです(身体にこたえたのか、今日になって熱が38.5℃でて、未だ下がらず、、、シンドイ、、)
俳優さん達は名演技だと思いましたが、
作品が描いているものがしんどかったので(どこかに救いがあったら良かったけど、無かった) 評価は3点にさせて頂きました。
ただ、救いといえば、、、作中でトランプがAIDSを患うロイコーンを別荘に招いてもてなすシーンがありましたが、そこが唯一救いといえば救いだったかな、、(ただし作中では、トランプがロイコーンにカフリンクをプレゼントし、ロイはそれをとても喜ぶのですが、トランプの妻がロイに向かって、それは金メッキにジルコンの安物だと言って彼の気持ちを奈落の底に突き落としますが、、)
追記: レビューを書いていた時、高熱が出ていたもので、平熱に戻ってから「何か変なこと書いてなかったよね、、、」とつらつら考えていましたら。
この映画では、トランプとロイコーンのみっともないところ、なりふり構わず、いかなる手を使ってものし上がろうとするところなど、人間の持つ悪の面だけに90%以上フォーカスしていることに今更ながら気づきました(気づくの遅っ! 笑)。 人間は100%の天使でもなければ100%の悪魔でも無い訳で、人物像を立体的に描こうとするなら、善の部分も描いてよいはずなのかなと思いますが、そこの描写が極端に薄い作品だと思いました。他のレビュアーさん方も本作品は、反トランプのネガティヴキャンペーン的作品、とおっしゃっているのは、そういう理由だと思います。「誇張抜きでこの醜悪さが2人の実像だと思うから、この作品でフォーカスして描きたかった」と言われればそれまでですが、私自身は、だから「この作品には救いの部分が無い、、」と感じたのかな、と思います(世も末な感じしか残らない泣) 。