「わたしはタコになりたい」動物界 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
わたしはタコになりたい
北欧映画かとおもったらフランス映画。予告編でヨン・アイブィデ・リンドクビスト原作·脚本の「ボーダー 二つの世界」と同じような匂いがした。
やはり、現代の寓話だった。
母親はなんの動物とのキメラだったのか?アザラシみたいな顔だったが、千と千尋の神隠しのカオナシみたいなからだつきだった。監督はもののけ姫に強く影響を受けたらしい。
ADHDだと自分から名乗るクラスメイトの彼女。エミールがオオカミに変わりつつあるのを分かったうえでのあの行動。単に好奇心が強いからだとは思いたくない。異端同志のSYMPATHYに裏打ちされた愛だと思う。とても印象に残る素敵なキャラだった。
憲兵隊の女性曹長役はアデル ブルーは熱い色のアデル。新生物に対する軍隊の対応に疑問を抱き、フランソワに同情し情報を流す。フランソワも熱い男だったよ。ポテチをめぐる息子との確執のシーンで彼が反体制側の人間であることがなにげなく描かれる。そしてラストにつながる。
ワシになってゆく青年の苦悩は何者かになることを運命付けられた青年の苦悩そのものだ。翔べるようにならなきゃバカにされるだけだ。それを応援するエミールの友情にも大いに泣けた。
予告編にも出てきたが昆虫のナナフシになった人間が夜の街を彷徨する。これは何かに擬態しながらひっそりと生きてゆく人間の象徴か?
特異な状況設定に最初は違和感を覚えたが、それが氷解する親子のラストシーンがまた素晴らしい。
セザール賞で落下の解剖学にノミネート数で上まった今作。VFXの質には低予算の悲哀を感じたが、ただ胸糞悪いサスペンスもどきの落下の解剖学と比べ、意欲的で、格段にチャレンジングな良作。
スーパーマーケットのタコ人間のシーンは素晴らしかった!タコはチンパンジーと同じくらいの知能を持つ高等動物。身体能力も高いので、どうせ変身してしまうならタコ人間になりたい。魚好きだし。ウツボ人間との死闘に備えて、カウチポテトはやめて、明日からトレーニングしなければいけないね。
追記
マダコは男親が巣の中で外敵の侵入を防ぎながら、飲まず食わずで卵に酸素を送りつづけ、赤ちゃんが孵化して大海に泳いでゆくのを見届けて一生を終えます。
タコ賛成。“タコ足を食う”とはエサの少ない海域で起こる事象から作られた言葉なのですが、最近の研究によると、ストレスで自分の脚を食べてしまうらしい。2本の触手以外、食べつくしたら面白い画になりそう。