「良いです」バットマン ビギンズ 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
良いです
ホームシアターでの友人との映画鑑賞会で友人が持ってきたので、ビギンズからダークナイト、ダークナイトライジングの3部作を観ました。
いたく気に入って、僕もBlu-rayを買ってしまいました。
ちゃんと3部作全部繋がっていますし、登場人物のやりとりがカッコいいです。
警察官のゴードンの前に初めてバットマンが現れた場面の、ひとりで立ち向かうのは無理だと言うゴードンに向けられた「君がいる」というセリフと、ブルースが執事に「僕を見放さないのか」と尋ねて執事が答えるのを英語音声で「Never」っていうのが最高にしびれました。
主人公のブルースの幼少期、両親を強盗に殺されて警察に保護されたときに彼の肩に上着を掛けて「大丈夫だ」と言ってくれた良い警察官がゴードンだったのですね。
影の同盟で忍者の修行をしてゴッサムシティーに戻ったブルースはゴードンの写真の入った資料を見ていたから、一緒に街を救ってくれる良い警察官を探していたのでしょう。
ゴードンはゴードンで、同僚が悪事に手を染めているのを知りながら、その同僚に「密告はしない。この汚職まみれの街で誰に密告すればいいんだ」っていうのですから、正しいことをしたいのにできない、声を上げてもどこにも届かない状況に苦悩しながら、きっと半分諦めながら、それでもやっぱり犯罪のない街を望んで、良い警官をしていたのでしょう。
ゴードンの元に装甲服に目出し帽の怪しいコスプレ男が現れて、珍しい良い警官だと言ってくれる。
検事や裁判官などの公権力まで巻き込んでいる巨大な悪と戦おうとしているその男が、1人じゃない、君がいる、一緒に戦ってくれるだろ?って言ったら、しびれますよ。
頭のイカれたコスプレ男かも知れない、でも、マトモな人は一つの街の社会そのものを相手に戦ったりなんかできない。
ひょっとしたらと期待してしまいます。
だって救いがなくて悶々としているところへ、うっすらと光が差したかも知れないのだもの。
その上、ダークナイトライジングの最後で街を救うために爆弾を海上まで運ぶ場面で、命と引き換えに街を救うヒーロー、バットマンにゴードンが正体を尋ねて、誰でもバットマンになれる、傷ついた少年の肩に上着を掛けて「大丈夫だ」と言ってやるだけで良いのだってバットマンが答える。
ブルースは色々な装備を整えるだけの財産があって、忍者の修行で身に付けた悪に対抗しうる強い力もあるけれど、ブルースのバットマンはシンボルに過ぎず、街を良くしようとする一人一人の正義感や優しさが犯罪のない街を作る大きな力になって、両親を失って傷ついた少年ブルースにとって、優しい警察官がバットマンだったのでしょう。
だから、ゴードンに向けられた「君がいる」には大きな信頼があったのだと思います。
友達と3部作を全部見た後、1人で見た2回目の「君がいる」はゾクゾクするくらいカッコよかった。
それに、執事の「Never」。
同じやりとりをビギンズの劇中で2回やっていて、1回目はブルースの両親を殺した路上強盗犯の裁判の公聴会へ行く前、父が遺したウェイン家の屋敷を、粉々に無くなってしまえばいいと言うブルースに、執事はウェイン家が6代にわたって住んできた屋敷だと言って止める。
お前には関係ないじゃないかと言うブルースに、旦那様から大切な坊ちゃんを託されたのだから関係はあると答える。
その後の場面で「僕を見放さないのか?」と尋ねるブルースに、執事が「Never」と答える。
2回目は、ブルースの誕生日のパーティーに悪役の影の同盟のメンバーが姿を現してパーティーの客に失礼なことを言って追い返した後。
影の同盟に家を燃やされて、1回目のときに粉々になくなればいいと言っていた屋敷がホントに焼け落ちて無くなってしまって、執事とブルースが地下の秘密の施設へ逃れたリフトの中で。
人はなぜ落ちるのか、それは這い上がるためだと、ブルースの父の言葉を執事が言う。
家名に傷をつけ、屋敷を灰に変え、どん底まで落ちたブルースが「『まだ』僕を見放さないのか?」と尋ねて、それでもやっぱり執事の言葉は変わらない「Never」。
旦那様が遺したのは屋敷だけじゃなくて、この旦那様の大切な坊ちゃんをも遺された。
この子がどんなに落ちても、きっと這い上がるから、決して見放さないで助けるのだという執事の「Never」はしびれます。
3部まで全編通して、登場人物のやりとりがカッコよくていいです。
これは繰り返して観るのがいいと思います。
素晴らしいです。