劇場公開日 2024年10月25日

「みんなで観まっしょい!」がんばっていきまっしょい おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0みんなで観まっしょい!

2024年10月28日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

萌える

原作未読で、過去に映像化された実写映画もテレビドラマも観たことはありません。でも、予告の清々しさやみずみずしさに惹かれ、主題歌に熱くこみ上げてくるものを感じて、公開を待ち望んでいました。本当は公開初日に観に行きたかったのですが、舞台挨拶中継付き上映回のある3日目まで我慢して鑑賞してきました。

ストーリーは、がんばることを諦め、退屈な毎日を送っていた高校生・村上悦子が、廃部となったボート部の復活に強い関心を示す転校生・高橋梨衣奈の強引な誘いにより、幼なじみの佐伯姫とともにボート部にしばらく籍を置くことになり、そこに加わった兵頭妙子、井本真優美らとともにスタートした練習、初めての大会での惨敗、仲間との交流、ライバルとの出会いなどを通して、成長していく姿を描くというもの。

目標に向かって励む中で味わう喜びや挫折を通して、主人公の成長や仲間との友情を描くという王道ストーリーですが、それゆえにストレートに伝わってくるものがあります。悦子が流した汗と涙、手に入れたかけがえのない仲間、忘れられない青春の日々は、がんばったからこそ得られたものばかりです。これらはこの先も悦子の支えとなっていくのでしょう。

努力が必ずしも報われるわけではなく、むしろ報われることのほうが少ないとさえ思います。でも、そのがんばりは必ず自分を成長させ、巡り巡って形を変えて報われるのです。がんばることそれ自体に大きな意味があることを、多くの大人は知っています。だからこそ、今この瞬間に行き詰まりを感じている多くの若者にぜひ本作を観てほしいし、がんばる経験を積み重ねてこれからの人生の大きな礎としてほしいと思います。同様に、心が折れかかり、がんばることを忘れた大人たちの心にも、深く響くものがあり、もう一度立ち上がる力を与えてくれる作品でもあると思います。

全体的には、悦子を中心としたボート部員以外の周辺人物を極力描かず、終始5人の関係性にフォーカスし続けているのがいいです。5人の漕ぐオールに気持ちのズレが如実に表れていて、それがしだいに一糸乱れぬ動きとなっていく様子に涙がこぼれます。「一艇ありて一人なし」という格言が本当にぴたりとハマり、とても印象的です。多少の恋愛要素は入れつつも、それが物語の主軸を揺さぶるようなことはなく、あくまで青春の1コマとして主人公の心情に波紋を投げかける程度なのも好印象です。青春の煌めき、その尊さを噛み締めることのできる良作だと感じます。

キャストは、雨宮天さん、伊藤美来さん、高橋李依さん、鬼頭明里さん、長谷川育美さん、江口拓也さん、竹達彩奈さん、三森すずこさんらで、人気と実力を兼ね備えた盤石の布陣です。

舞台挨拶中継では、主要キャスト5人と櫻木監督に加え、主題歌を担当している僕が見たかった青空(このアイドルグループを初めて知りました)から6人が登壇され、とても賑やかなものとなりました。今回は監督の「会話のテンポ感を大切にしたため、音に絵をはめていく手法をとった」という話が興味深かったです。その点においても、ボートを漕ぐ繊細な動きを表現する点においても、本作をCGアニメとしたことは正解だったように思います。

おじゃる