正体のレビュー・感想・評価
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感動と緊張感。その『正体』をぜひ劇場で
『正体』
•長回しで撮影されたという最初の逃亡シーンや警察組織のしがらみの中で、山田孝之さん演じる刑事が葛藤していく姿、逃亡中の緊張感など、サスペンス、アクション、組織論など様々な要素が詰まったとても魅力的な映画でした。
•冤罪がこの映画の中で2つ描かれていた。
警察、裁判官の責任の中で人が人を裁くむずかしさ。
冤罪で逮捕された人々のその後の人生についても考えさせられた。
•横浜流星さん演じる逃亡した鏑木(かぶらぎ)慶一の『正体』は果たしてどんな人物であったのか、彼の側にいた人たちは何を感じ、どういった行動を起こしていくのか。
ぜひ劇場で確認していただけたらと思います。
•今年私が観た中で大好きだった映画『青春18×2 君へと続くみち』の藤井道人(みちひと)監督の作品でまたまた温かい感動をいただき、泣いてしまいました。
横浜流星
横浜流星の瞳と悲しみを微量に含む表情は圧巻
彼はなぜ逃げたのか。
役者としての横浜流星が悪いのじゃなく、キャスティングとして横浜流星ではない、と思った。それは、彼の端正な顔立ちが目立ちすぎて、いくら変装してもほとんど原型が崩れていない(工場勤務時の目元以外)から。それに、設定は二十歳そこそこ。横浜流星からにじみ出る雰囲気は分別ある二十代後半(横浜本人の年相応ではあるが)で、まったくもって物語に似合っていない。そもそもそんな若造があそこまで手配りよく逃げおおせるのか疑問がある。それでも、彼の行動のエネルギーや目的は何なんだ?の答えを見守る気分は捨てきれなかった。
だけど、最後の最後、「どうして逃げたんだ?」の問いかけの答えが、自分にはどうしてもきれいごとのようにしか聞こえてこなかった。
終始、山田孝之が彼の良心ゆえに、苦悶の表情が崩れず、時に行動に躊躇いがでるのが切なかった。
追記)
物語の展開に、物足りなさを感じてしまい、帰宅してからアマプラでドラマ版を見た。
こちらのほうが説得力があった。鏑木は32歳、これなら逃避行の度の知恵も行動も納得できる。冤罪被害の弁護士が鏑木を助けようとする動機も十分。そして目撃者が若年性認知症とはっきりと描かれているので、この事件の捜査の混乱はつじつまが合う。何より、テーマである「人を信じる」という思いが伝わってきた。ドラマは四話(×54分)あるのでディテールを描き切れるともいえるが、映画版は細部への気配りが足りないように思えた。
横浜流星にあっぱれ!
原作未読ですが、おもしろそうな予告に惹かれて鑑賞してきました。土日に時間が取れず、月曜日の仕事帰りに行ったため、観客は少なく、落ち着いて鑑賞できました。おかげで、作品世界にしっかり浸ることができました。
ストーリーは、一家惨殺事件を起こして死刑判決を受けた鏑木慶一が、病気を偽って救急搬送される隙に脱走し、さまざまに姿を変えて逃亡生活を続け、潜伏中に出会ったわずかばかりの人との交流を重ねる中、必死に逃亡を続ける理由がしだいに明らかになっていくというもの。
大筋は、囚人がある目的のために脱獄してそれを果たすという、予告から予想される範囲内のもので、そこに意外性はありません。というよりこれ以外の展開は思いつきません。最近では今年の春に放送されたテレビドラマ「Believe−君にかける橋−」がよく似たプロットだったように思います。
この手の作品の見どころは、どのような逃走と潜伏を繰り返し、どんな人と出会い、どんな関係性を築いたのか、そして逃亡の目的は何だったのかというところでしょう。その点において、各潜伏先の前後の描写がやや不足しているような気はしますが、鏑木の人物像を際立たせながら警察内部の事情をうまく絡め、テンポよく描いていたと思います。
中でも、鏑木と出会った人々が、口を揃えて「彼を信じたい」と言う姿に心を揺さぶられます。鏑木は姿や名前こそ偽ってはいるものの、出会った人に見せる優しさや誠意は嘘偽りのない彼自身であり、それが人々の信頼を得ていくことにつながったのでしょう。ラストで鏑木が逃亡理由として語る「この世界を信じたかった」という言葉との呼応が鮮やかです。
そんな鏑木の思いは、やがて又貫刑事の心をも動かしていきます。これもかなり早い段階から察しがつくベタな展開ではあるもの、警察組織の腐敗を訴え、気概のある刑事に希望を見出すという点では、それなりに見応えを生んでいたと思います。
ただ、そもそも初めからまともな捜査をしていれば、冤罪が生まれるはずはありません。鏑木には何の動機もなく、あれだけの惨殺現場でそれほどの返り血も浴びておらず、足利のゲソ痕があったはずだし、身長や利き腕の違い、飛沫痕の状態を考えても、誤認逮捕なんてあり得ないはずです。しかし、そこを飲み込まないと話が進まないので、ここは松重さんに泥を被ってもらうしかなかったのでしょう。今回ばかりは松重さんが憎々しく思え、鑑賞後に劇場ロビーに置かれた「孤独のグルメ」の等身大パネルを殴りたくなりました。笑
それにしても冤罪は怖すぎます。警察がその気になれば、誰でも犯人に仕立て上げられ、そこで人生終了です。最近では袴田事件が思い出され、憤りが止まりません。こんな全く信用できない警察や検察に加えて、安全な場所から他者を徹底的に追い詰めるSNSでの無責任な発言も、本当に大嫌いです。このあたりの内容も本作で訴えたいメッセージの一つであり、そのために安藤弁護士の痴漢冤罪事件も描いていたのだと思います。しかし、これが鏑木の事件との相乗効果にイマイチつながっていないように感じたのは残念でした。
とはいえ、そうそうたる俳優陣の魅せる演技とテンポのよい話運びのおかげで、見応えのある作品に仕上がっています。興味のある方はぜひ劇場でご鑑賞ください。
主演は横浜流星さんで、逃亡中の鏑木の心情が伝わる、すばらしい演技を披露しています。役の幅がどんどん広がり、まだまだ伸びしろを感じて、今後も期待してしまいます。脇を固めるのは、山田孝之さん、吉岡里帆さん、森本慎太郎さん、山田杏奈さん、前田公輝さん、西田尚美さん、山中崇さん、宇野祥平さん、駿河太郎さん、木野花さん、田中哲司さん、原日出子さん、松重豊さんら豪華な顔ぶれ。
生きねば。
冤罪。通りがかった高校生の第1発見者がかくも簡単に殺人犯に仕立て上げられるとは。この映画はまさに今年作られるべくして作られた作品だと思う。
生まれて初めて友達ができて、ビールを飲んで、人を好きになって、生きてて良かった。もっと生きたいと思った。
この映画の主人公・鏑木慶一のひととなりが良いからに違いないが、その信じる力が関わった人たち、自らを追い詰める刑事にさえ、影響を与えてていく。
実際はこんな風にはいかないかもしれない。
それでも、それだからこそ、信じる心、生きることを肯定するこの映画に私たちは感動する。
これが一昔前だったら、主人公が撃たれて終わり。警察組織・公権力の前に真実は埋もれてしまい、虚しい希望のない結末。
それがカッコいいと思っていた時代があった。作り手たちがいた。
今、藤井監督は観る者に希望を与えてくれる。(八犬伝を書いた馬琴のように)
映画っていいな。
亀梨バージョン
映画的な表現に溢れた傑作
冒頭から引き込まれるグロ、アクションシーン、
同じ横顔のクローズアップの構図で、
異なる相手に対して皆の短い言葉が連続的に繋がれて
最初と最後でコントラストをなす対話シーン、
先を暗示するような洗面器の排水の渦、
ワンカット長回しの逃走シーン、
映像だけで語るラストシーン、
など、とにかく映画的な魅力的な表現に溢れていると感じました。
また、登場人物は説明せず、短い会話や微妙な表情だけの画面も多いので、
その心中に対して常に想像力をかきたてられ、
集中力の途切れることなく見続けることができ、とくに最後の対話シーンは感動的でした。
とくに横浜さんは、逃走犯という設定上、
マスクをしたり、言葉も極力話せない、という制約の中で、
時々発する言葉が大仰にならず、呟くような、それでいて実感のこもった感じが本当に引き込まれました。
リアリティという点ではどうだろうと思う部分も正直ありますが、
おそらくこの映画の主題ではないでしょうし、
その映像表現、演技に圧倒されっぱなしで、まったく気になりませんでした。
そして観終わった後、”あなたは目の前の人に偏見なく、誠実に向き合えているのか”、そう問いかけられたような気がしました。
己の力で冤罪に立ち向かう男の執念の逃走劇
冤罪をテーマにした作品である。エンタメ側に振ったフィクションとは分かっていても、どうしても袴田事件の再審無罪確定という数か月前の出来事が頭から離れなかった。捜査当局の証拠捏造という画期的な判決であり、事件が発生した旧清水(現静岡県静岡市)市民としては衝撃的だった。
凶悪殺人事件の犯人として死刑が確定した死刑囚・鏑木慶一(横浜流星)は、急病を装って救急搬送中に脱走する。彼は変装し職業を転々とする。そして担当刑事・又貫(山田孝之)の追跡を必死でかわしながら無実の証に迫っていく・・・。
作品としては素晴らしい。間違いなく日本アカデミー賞に絡んでくるだろう。横浜流星が従来のイケメン俳優というイメージを捨て去って五変化に挑戦している。どの人物も違和感なく成り切っている。逃走中に出会った人達との交流を通した様々な経験で人間として成長していく姿を自然体の演技で熟している。演技者としての可能性を感じさせる。
彼は適当に職業を選んでいるわけではなく、目的があることが徐々に明らかになってくる。物語は熱を帯び徐々に核心に迫っていく。面白さを増していく。シリアス作品として観れば、ご都合主義的、予定調和的な展開もある。しかし、登場人物を演じる俳優陣に個性、存在感がある。華(吉岡里帆、山田杏奈など)もある。鏑木との絡みも巧く構成されているので、エンタメ作品として観れば上々の出来栄えである。
終盤。物語は核心である冤罪に突入する。冤罪の証、捜査当局の対応、再審要求活動、再審開始までの時間など、袴田事件の時と比べると突っ込み処は多々ある。しかし、観終わって己を信じて行動すれば道は必ず開かれるというメッセージが伝わってくる。胸を打つ。
映画は時代を映す鏡である以上、作品にとって公開時期も作品評価の一つになる。冤罪をテーマにしたエンタメ寄りの作品を公開するならば、現実社会で結実した袴田事件再審無罪確定という時期との時間差を十分に考慮すべきだろう。
信じる
感動した。涙があふれた。
目力
横浜流星の目力に引き込まれる。
目的を達成するために姿や佇まいを変化させながら目立たないように生活しているのだが、相手に気付かれそうになった瞬間の「目」にドキッとさせられる。
行く先々で懸命に生き、人のために働きかける主人公をみていると犯人ではない、ではなぜ逃げるのかと考えながらみた。
人に対して真摯に接すると自分もまた信頼される存在となる。それが、ラストに繋がっていく。
それにしても、冤罪によってしなくてもいい苦しみを味わうことになった主人公が哀れでならない。現代は大分工夫され、そのようなことはなくなったと思いたいがどうなのだろう。
原作のラストとは違うらしい。是非読んで確かめたい。
流星侮りがたし!彼の魅力でムリ目のストーリーを全て呑み込んだ🎶
きれいな顔と清純な心と過酷な運命・・の、男子
冤罪で死刑囚になった青年(横浜流星)が脱獄し、名前を変え顔を変え職業を変えながら各地を転々とする間に色々な人々と出会い・・という話だが、正直「別人」になっているとは言い難い。髭面の時以外は、顔はほとんど変わっていない。まずはその点からはじまって、ありえないと思う点が多いし、なぜ逃げた?という問いにも驚くような答えがあるわけではない。
というわけで、主人公が逃げ切れるかどうかのサスペンスを描いた映画ではない。優しい心と優秀な頭脳と美しい顔を持ちながら、考えられぬような不運に巻き込まれた青年の、文字通り生き延びるための逃走の日々。そして彼に出会い、一人の人間としての彼に好意をもち、彼の「正体」をほぼ分かっていながらその無実を信じようとし、(結果的にそうなっただけの場合もあるが)彼を応援しようとする人々の物語。
主人公は別に人を洗脳するような特殊な能力を持っているわけではなく、もともとはおとなしくて、ちょっと危ないほど他人に対して優しいというだけの普通の青年だ。しかしその美しさも含めた人間的魅力によって、出会う人々に予想外の行動をとらせ、彼ら自身の生き方にも多大な影響をもたらす。彼を追う刑事(山田孝之)も、生き方にまで影響を受ける周囲の人間の一人だ。
主人公を演じた横浜流星は、「人々がその「正体」に気づいてもなお、彼の主張を信じて彼を応援してやろうと思うほどに魅力的な人物」をつくりあげるのにギリギリ成功したと思う。それも、隠しきれない圧倒的な光り輝く魅力をもつ人、というのではなく、おとなしく控えめながら、実は顔も心も驚くほど純粋で美しい、といった人物像だ。
大人しくて顔がきれいで心が清純、でも過酷な運命に翻弄されている、・・って、古典的ドラマの悲劇のヒロインそのものである。男性(ゲイではない)がその役どころを担っているのが、2024年の映画らしい。
横浜流星はただのイケメンではないと思ってたけど、やっぱりそうだった!
映画観てからしばらく経ってからのレビューです。
どんな言葉を書いても自分の感じたことをそのまま表現できない気がするので、なかなか書けずにいました。
七変化しながら逃げていた彼を、関わった人が守ろうとしたことの意味
信じたかった彼を守りたかったのかなと…時間がかかったけれど、そう思いました。
最後の面会のシーン、涙腺崩壊です。
思った以上にいい映画です。
もう一度観たい!
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