劇場公開日 2024年11月29日

「信じてみようと想う心の話」正体 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5信じてみようと想う心の話

2024年12月7日
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鑑賞方法:映画館

感想

藤井監督は染井為人氏の原作である真実の証明を命懸けで果たそうという囚人である主人公の、点を線で繋いでいく物語の過程で登場する人物とその時々のシチュエーションとエピソード毎に丁寧で細やかな演出とエッジの効いた、卓越した映像センスをもって描いており重厚で深淵な人間の尊厳と法の問題をよく纏め上げデフォルメしながら上質なサスペンス作品に仕上げていた。原作は不遜であり情報に疎く未読であったが、砂の器以来久々にあらためて小説としても読み直したいと感じる。◎

主演の横浜流星氏の渾身の演技が特に素晴らしく彼の代表作品となったと感じる。◎

人が人を信頼することとはどういう事なのか。その人が正しい人なのか否かを判断するためには、その事に対する行動や判断を人が正しく判断出来なければならない。当たり前の事だか公正な判断を下すという事はとても難しいことで様々な角度からの状況判断、またはあらゆる視点を持ちながら関わる人々が各々一つ一つ検証し証拠を固め積み上げて判断し、結論を出していくいわゆるあらゆる根拠と証明が重要なのである。この当たり前な事を成していく事がいかに時間と労力が掛かり大変な作業であるか。という事も本作でのテーマの一つであったと感じる。被疑者のどの様な主張をも聞き受け時間的にも検証内容についても端折る事なく法と照らし合わせ公正な判断が出来る成熟した法治社会システムであり法曹でなければいけない。それを創り上げるためには関係者一人一人が問題は何処にあるのかを強く感じ、願い、世論を形成できるように発言すること。またマスコミと法曹界は社会的責任を以って公正な実務を実践していく事を肝に命じる事で新たな時代に合致する判例を創り、積み上げる事が大切であるのだと感じる。また法治を司る警察機構もそう簡単に変わる事は難しいと思うが柔軟な視点と発想を以って行動するべきだと感じる。

現代の警察の捜査方法がいかなる方法でどのように犯罪であるとJudgementするのかは詳しくは知り得ないが、つい最近まで本作に描かれるような警察の杜撰な人権を軽視し偏在した思考と視点により被疑者へ脅迫強要する方法で本当に無実の者が罪に問われ、罪が確定してしまい拘留施設での刑期執行満了、あるいは執行処刑されてしまった事件は人知れずかなりの数存在したのではないかと想像させる。更に本作においては被疑者が身寄りのない未成年者であった事が被疑者の弁護の必要性をより低くする事に繋がり具体的自己弁護の余地をほぼ講ずる事なく当然であるべき被疑者の権利主張を警察が軽率に扱ってしまった事が問題の根本原因だと考える。自己弁護能力が低ければ低い程、能力ある国選をも厭わない弁護士を付ける事が必要であり、重要になってくる。

本当に無実の者が主張できる機会が日本の司法制度においては刑確定後には全く無い。法制度そのものが硬直化し見直しに時間ばかり掛かるのも問題であり現在の法治システムの詳細な見直しが叫ばれる話があるというのも頷ける。

演出と横浜氏の演技が素晴らしく優れており本日現在、今年度最優秀の日本映画と感じたので
⭐️4.5

Moi
みかずきさんのコメント
2024年12月7日

みかずきです

十一人の賊軍を始めとして多くの共感を頂きありがとうございます。

本作、仰る様に横浜流星のイケメン俳優というイメージを捨て去った渾身の演技が素晴らしかったです。彼の代表作になると思います。

終盤の裁判官が判決と判決理由を述べるシーンを無音にしたのは、傍聴席にいた人々の表情で結果を示す演出だと理解しましたが、詳細な判決理由を知りたかったです。袴田冤罪事件再審無罪の判決理由と比較したかったです。

ー以上ー

みかずき