「なんか羨ましかったんだよ、真っすぐでさ。」ぼくのお日さま 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
なんか羨ましかったんだよ、真っすぐでさ。
まず、エンドロールについて触れなければ始まらない。エンディングでハンバートハンバートのメロディが流れてきて、あ、これ「ぼくのお日さま」だとすぐに気付いた。映画のタイトルと同じじゃないかと。そして歌詞が画面に。〽ぼくは言葉がうまく言えない。はじめの音でつっかえてしまう~。そうだ、この歌の主人公も吃音だ、そう思ったとき、ぼろっと涙がこぼれた。もしかしたら歌にあわせてシナリオを書いたのだろうか。だとしたら見事だ。しかも、吃音を苦にしながらも青春を謳歌している。その姿に、ついぽろっと涙が誘われた。
この映画は、スクリーンのサイズがほぼ四角(あのサイズをなんと呼ぶのか詳しくないが)。だから人物の上部が広く空いていて、空が高く見えた。それがなんとも解放感があった。おまけに淡い映像。それはこの映画の設定がおそらく20年か30年くらい前だからなのだろう。まるで、ポラロイド写真のようだ。だから、なおさらノスタルジックな気分にさせられるんだろう。
おまけにカメラがいい。やさしいまなざしのようだ。光を取り込む映像も、スケーティングする二人に寄り添うようなカメラワークも、とても愛情がこもって見えた。そのスケーティングといえば、子役(という歳でもないないか?)の二人はオーディションでその経験済みの役者を選べばいいだろうけど、池松も以前スケートの経験者なのだろうか?と思わせるほど、滑りもスムーズだしポーズもきれいだった。不自然さを感じさせないほどに、様になっていた。
なにより、湖で屋外練習をする三人の幸せな姿が、微笑ましく、羨ましく、美しかった。春になって雪が解けたらあんな大きい湖だったとは思わなかったが、そこがまた雪に閉ざされた冬の慎ましやかな出来事と思わせる効果があった。
そして少年の恋物語かと思わせておいて、同性愛をぶっこんでいる。池松(荒川)と若葉竜也(役名知らず)の距離感が親密で、ダブルベッドに枕が並んで見えた時には確信となった。だけど、サクラの洞察力はすごいな。アイスを食い戯れる二人で、それに気づくのだものな。それは、荒川に恋心を抱いていたからなのかな。「気持ち悪っ」の捨てセリフには、裏切られた感情がこもっているように思えた。でも、母親はおそらく辞めたい理由を、荒川からのセクハラとかと思っているのだろうけど。荒川は、そうした世間で生きてきたし、これからも生きていく。たぶん、この時代は今ほど同性愛に理解がない時代だ。土地から離れられない恋人の地元で生きていく覚悟をもってやってきたのに、なにかしらの理由で、その土地を離れていく。また、新しい理解者を見つけるのか、孤独に生きていくのか。それに慣れていると言わんばかりの、船上から港を眺める荒川の寂しげな姿に、胸が苦しくなった。
そうだ、この監督は「僕はイエス様が嫌い」の監督か。たしかに、通じるものがあった。