蛇の道

劇場公開日:

蛇の道

解説

「岸辺の旅」「スパイの妻」の黒沢清監督が柴咲コウを主演に迎え、1998年に手がけた同名映画をフランスに舞台を移してセルフリメイクしたリベンジサスペンス。娘を殺された父親と彼に手を貸す精神科医が繰り広げる徹底した復讐の行方を、全編フランスロケ&フランス語で描き出す。

8歳の愛娘を何者かに惨殺された父親アルベール・バシュレは、偶然知り合った精神科医・新島小夜子の助けを借りながら、犯人を突き止めて復讐を果たすべく殺意を燃やしていた。やがて2人はとある財団の関係者たちを拉致し、次第に真相が明らかになっていくが……。

他人の復讐に協力する謎めいた精神科医という難しい役どころを柴咲がフランス語で熱演し、2019年のフランス映画「レ・ミゼラブル」で注目を集めたダミアン・ボナールが復讐に燃える男アルベールを演じた。

2024年製作/113分/G/フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ合作
原題または英題:Le chemin du serpent
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2024年6月14日

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(C)2024 CINEFRANCE STUDIOS - KADOKAWA CORPORATION - TARANTULA

映画レビュー

3.5わかりやすくなった

2024年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作のオリジナル版は、昔VHSを持っていた。何気なしに買ったらめちゃくちゃおもしろくて、今でも黒沢清の最高傑作ではと思っている。それを舞台をフランスに置き換えてセルフリメイクするという。本作は復讐を描くが、誰がなんの目的で復讐しようとしているのかよくわからない。でも、そこが面白かった。今回は、フランスを舞台に日本人の精神科医が出てきて、子供を巡る復讐劇というわかりやすいプロットになっている。それによってドラマの筋書きが理解しやすくなっているが、得体の知れなさは薄れた。単純に画面がオリジナル版に比べて明るいからかもしれない。あるいは哀川翔と香川照之の何を考えているのかわからない雰囲気のなせるワザだったのか。 リメイク版も面白く見たけれど、やっぱりオリジナル版の異様さは抜ききんでいる。オリジナル版は、わかりにくいんだけど、わからないから余計怖い作品なので。 でも、このオリジナルと本編を比べるとやっぱり映画って面白いなと思う。同じ題材でもこんなに違う。同じ作家が作っているにもかかわらず。映画は何にでも変化できるんだなとその可能性の広さに気がつける。

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杉本穂高

3.5得体の知れないシュールな不気味さに推進力が加わった

2024年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

私の中でオリジナル版『蛇の道』は、シュールな繰り返しによって観客を得体の知れない不気味さへと導いていった作品として記憶に焼きついている。このシンプルなれど核心を突く構造が国境を超え、かくも巧みに言語や文化が変換、翻案されたことにフレッシュな驚きを禁じ得ない。題材が噛み合ったのも意外だが、その分、映画の印象はガラリと変わり、物語のベクトルや力学すら大きく変わった。主演が柴咲コウ(流暢なフランス語の台詞回しに驚愕!)とフランス人俳優に置き換わったことで作品が持つ表情や人間味も増したように思う。オリジナルのシュールさや笑いは減ったが、代わりにどこかメルヴィルを思わせる硬質な色味、倉庫感、観客を突き放す孤高のタッチを迸らせ、そこにやはり黒沢清ならではの、肝心なものを見せずして感じさせる演出が際立つ。オリジナルかリメイクかで好みは分かれそうだが、これすなわち双頭の蛇として、いずれも等しく堪能したい。

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牛津厚信

3.5To the Ends of the Underworld

2024年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

Serpent recalls Creepy in terms of grisly rural captivity. This time the good guys find themselves in Mr. Vengeance predicaments as they get to the source of a child's murder. The director's signature style might remind one of the chilling abstractions in his horror film Cure. French actors Almaric and Dazi's performances show Kurosawa's destined for international ensembles. Not a happy one.

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Dan Knighton

4.0黒沢清監督の巧みなセルフリメイク。柴咲コウのアクションも意外に良い

2024年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

ポスターとフライヤー用の縦長の画像(当サイトのフォトギャラリーでは14枚目)のアイデアにまずうならされる。本編を観た人なら、小夜子(柴咲コウ)とアルベール(ダミアン・ボナール)が引きずっているのが拉致した男を押し込めた寝袋だとわかるが、この黒い寝袋が禍々しい大蛇に、そして草むらを引きずった跡が「道」に見えるではないか。 高橋洋脚本・黒沢清監督のオリジナル版「蛇の道」は、たしか2000年代前半に知人から哀川翔主演「DEAD OR ALIVE」シリーズを推薦されたのがきっかけで哀川出演作をVHSでレンタルして観まくった中の一本。それっきりなので細部は忘れたものの、復讐のため拉致した男たちを廃屋に監禁してビデオを見せ精神的に追い詰めていく閉塞感が、今回のセルフリメイク版でも効果的に再現されたように思う。 かつて哀川が演じた役を女性に置き換えて柴咲コウに演じさせるというのは、黒沢監督にとっても柴咲にとってもチャレンジだったはずだが、結果的にうまくはまったと感じる。フランスの病院で働く精神科医(夫は日本に戻り別居中)が幼い娘を惨殺されたアルベールの復讐の手助けをするという設定は、ホモソーシャルなコミュニティーにおいて男性に頼らず自立した女性という面で現代的なアップデートにもなった(さらに推測するなら、外国人男性からは日本人女性がより謎めいて見えるという効果もありそう)。柴咲コウがアクションでも健闘していて意外だったのだが、フィルモグラフィーを見たら2008年の「少林少女」でカンフーアクションを披露していたのを思い出した。それでも現在40歳代前半でこれだけ動けるなら、シャーリーズ・セロンやジェシカ・チャステイン、あるいはだいぶ年上だが「エブエブ」のミシェル・ヨーらの出演作のように、熟女アクションを目玉にした企画がこの先続いたとしても不思議はない。 黒沢監督にとって初の海外作品「ダゲレオタイプの女」は、新しいことにチャレンジする意気込みが伝わった反面“よそ行きの顔”を見せられたようなさびしさもあったが、今回の「蛇の道」は海外作品でも“黒沢清らしさ”が随所に感じられてとても嬉しい。

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高森 郁哉