「◇空とスクリーン―物語は果てしなく」アビエイター 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)
◇空とスクリーン―物語は果てしなく
私がハワード・ヒューズという人物を初めて知ったのは、#ジェイムズエルロイ #JamesEllroy の『アメリカン・タブロイド』という小説でした。そこでは、欲望、金、支配、そして恐怖——それらを濃縮したような異形の者であり、アメリカという国の妄執を体現する人物の印象でした。一方でこの作品では、その狂気の奥にある人間らしさを克明に綿密に描き出しています。
私は、人物を描くときにやや冗長になりがちなスコセッシ監督の作風が好きです。ダラダラモードのリズム。人物の癖や逡巡を細かく積み重ねることで、時間が滲み出るような感覚になります。
屈折した人間を演じるレオ様にもまた共鳴してしまいます。彼の演技からは、理想や恐怖、孤独といった矛盾した感情が自然に漏れ出しており、それが人間臭さとしてダイレクトに伝わります。無意識の中に潜む自我の曖昧性を炙り出されるような落ち着かない気持ちになります。
人は誰しも、光と影、理性と衝動といった相反する性格を持ち合わせています。その多様性こそが人間らしさであり、この作品は、まさにその“人間のゆらぎ”を映画の中に定着させていると感じます。夢を追う者の栄光と孤独、その両方を忠実に再現しながら、アメリカン・ドリームの光と影を描き出しています。
大空、無限の拡がり、晴やかさ。
スクリーン、華麗なハリウッドの世界。
それぞれが憧れの対象である舞台です。
その光が明るければ明るいほど、人の心が秘める本姓の起伏を必要以上に照らし出し曝け出していくのでした。
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