「タイトルなし(ネタバレ)」室町無頼 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
室町時代(15世紀)中期、大飢饉と疫病が国を覆っている。
京の洛外、加茂川の畔では、毎日のように大量の死体が焼かれている。
が、洛中では民のことなどお構いなしの生活。
比叡の僧たちは民々に高利貸しをし、返せないとなれば、人身売買や奴隷労働が常だった。
そんな中、河内の郷では一揆の支度が進められていると知った洛中洛外警備の長・骨皮道賢(堤真一)は、無頼の武芸者・蓮田兵衛(大泉洋)に一揆の阻止を請け負わせる。
蓮田は、骨皮から受け取った銭を郷の者たちに渡すとともに、いまは時期ではないと諭して、一揆を未然に防ぐ・・・
といったところからはじまる物語。
史実として、一揆があり、一揆勢の大将は蓮田兵衛との名があるのみ。
ストーリーはフィクション、とみるのが正解だろう。
大飢饉と疫病に覆われた民草の凄まじい状況が描かれる冒頭から、あっと言わされる。
セットや美術が素晴らしい。
また、主人公がなかなか登場しないあたりもいい。
劇伴はマカロニウエスタンか「必殺」シリーズのそれで、このあたりも含めて、東映時代劇のごった煮感がある。
ごった煮感はその他、主人公の弟子となる「蛙」と呼ばれる若者(長尾謙杜)を準主役にして、彼が六尺棒使いの武芸者になるまでのサイドストーリーを盛り込む。
若者を実際に指導するのは、正体不明の老人(柄本明)であり、老人の補助にふたりの朝鮮渡来の武芸者男女を配している。
このあたりは、かつて東映が本邦へ紹介したジャッキー・チェンの「○○拳」シリーズのよう(女武芸者は志穂美悦子ね)。
クライマックスは、主人公率いる一揆勢と骨皮率いる警護勢との衝突。
東映お得意の集団抗争へとなだれ込む。
一揆以降もアクションシーンが続くのだが、そこはちょっと長いなぁと感じる。
ひとつ前ぐらいで終わらせて「続編に期待!」の手もあったようにも思えた。
主人公・蓮田兵衛は大泉洋の個性も活かされ、魅力あり(『探偵はBARにいる』シリーズとあわせて、大泉洋と東映の組み合わせは良い感じ)。
骨皮道賢演じる堤真一も悪くない。
「蛙」演じる長尾謙杜は、アイドルグループの一員ということだが、顔つきがアイドルっぽくないあたりはいい。が、やはり、ここは若い頃の真田広之レベルがほしかったかなぁ。
その他、前野朋哉や芹澤興人など、一揆勢の面々の面構えや好し。
お、続編は無理でも前日譚なら作れるね。
『蓮田登場』だね。