「泥臭さと迫力あるアクションの両立を目指した、意欲的な一作」室町無頼 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
泥臭さと迫力あるアクションの両立を目指した、意欲的な一作
大泉洋は様々な作品に主演していますが、本格的な剣術アクションは本作が初めてとのこと。確かにこれまでの彼のイメージからは、ものすんごいアクションを見せるという場面がなかなか想像しづらかったので、予告編のちょっと雰囲気の異なった彼の姿に興味津々でした。
彼が演ずる蓮田兵衛は、剣の達人である一方でどんな難局も受け流す飄々とした軽やかさも持ちつつ、しかしどこか腹の底を見せないしたたかさも垣間見せ、さらにそれでも隠しようのない人間味と誠実さがにじみ出ている、という、多様な側面を持った人物で、これはまさに「アクションができる大泉洋」のためのキャラクターといえますし、実際のところ緩急のついた彼の動きは見ごたえ十分で、剣豪としての人物像に強い説得力を与えていました。
ただ蓮田兵衛はどちらかというと、ある目的のために仲間を作っていく、という『七人の侍』(1954)における志村喬のような役回りであって、多くのアクション場面では脇を固める俳優たちが多彩なアクションを披露し、それが本作の見せ場となっています。中でも才蔵演じる長尾謙杜は、荒っぽい自己流棒術から修業を経て一流の棒術使いに成長していく様を様々な場面で披露していました。”汚れ”も厭わずぶつかっていく演技は絶賛したいところですが、彼と蓮田兵衛が出会う場面はなかなか衝撃的で、ファンは悲鳴を上げそう…。
通りを埋め尽くす群衆と彼らのたいまつのきらめきを俯瞰でとらえたショットは、シンプルさの中に壮観さを体感させる創意工夫がなされていて、某インド映画と空見しそうになったほど!
リアリティというよりはアクションの見せ方に重点を置いた作品ですが、それだけに例えば、『SHOGUN 将軍』と並行して時代劇としての描写の方向性の違いを味わうなど、楽しみ方の幅が広がりそう。
『十一人の賊軍』(2024)に続いてこれだけ本格的なアクション時代劇を鑑賞できることはうれしい限りです!