「今の世だと、上級国民が自分のために徳政令を悪用しているので、そろそろ何かが起きそうで怖いですねえ」室町無頼 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
今の世だと、上級国民が自分のために徳政令を悪用しているので、そろそろ何かが起きそうで怖いですねえ
2025.1.17 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(135分、PG12)
原作は垣根涼介の同名小説
実在の人物・蓮田兵衛の徳政一揆を描いたアクション時代劇
監督&脚本は入江悠
物語の舞台は、1461年(寛正1年)の京都
疫病と飢饉に見舞われた日本では、食うに困る者が続出し、重税によって人々はさらなる困窮に喘いでいた
悪党・骨皮道賢(堤真一)が洛中警護をする有様で、贅を尽くす貴族は洛中にこもって好き放題を行っていた
ある日のこと、借金を返せない家に押し入った金貸の僧兵・法名坊暁信(三宅弘城)は、落武者の倅・才蔵(長尾謙社)に主人を殺すように命じたが、彼には殺すことができなかった
その後、酒宴で泥酔する僧兵たちだったが、そこに道賢一味がやってきて、皆殺しにして金を奪ってしまう
才蔵も連れ去られ、彼らの所有物と成り果てた
そんな彼らの元に、道賢から呼び出された蓮田がやってきた
道賢は一揆を未然に防げと命じ、蓮田は才蔵を引き受けることになった
ひと仕事終えた蓮田は才蔵を解放しようとするものの、その強さに惚れ込んだ才蔵は弟子入りを志願する
蓮田は「1年命を預けろ」と言い、知人の唐崎の老人(柄本明)に彼を預けることになった
映画は、才蔵が老人の修行に耐え抜く様子を描きつつ、着実に一揆の準備をしていく蓮田が描かれていく
そして、才蔵の皆伝と共に手駒が揃い、決行日を決めることになった
馬借たちがふれ回るものの、隠密によって道賢にバレてしまい、彼は蓮田の元に直談判にやってくる
だが、蓮田は人々の証文を燃やすために半日だけ動くのを待ってほしいと頼み込んだ
物語は、蓮田と道賢の因縁を主軸として、2人の男を渡り歩いた高級遊女・芳王子(松本若菜)の視点も導入される
彼女は道賢の元カノで、蓮田の今カノなのだが、どちらかの子どもを二人育てているように思えた
また、才蔵を成長させる役割も担うのだが、蓮田の信念を継ぐ者として、彼の生き様を彼女に伝える役割も担っていた
ラストシーンはその伝達になると思うが、その先は察してねと言う感じに描かれていたと思う
映画は、才蔵がアクション担当という感じで、蓮田と道賢にもそれぞれ見せ場がある
勧善懲悪的な内容で、幕府を倒すまではいかないが、吉坂郷を攻撃した大名・名和(北村一輝)を簪で刺し殺すシーンは胸熱展開だったと思う
わかりやすい武士道の表現であり、民衆の我慢の限界とその打開がいつの世も変わらないことを描いていた
蓮田は御所の門に「無頼」の文字を貼り付けるのだが、これは「幕府不要」を意味するものだと思う
その後、徳政令が発布されるのだが、現代でも通じる金融のあり方と弱者救済を描いているので、アップデートをするならば「奨学金問題」あたりが何らかの動きを作りそうに思える
また、税負担の負担が収入の半分を超えてきて、それでも是正をしない政府を見ていると、令和版の一揆というものがいつ起こってもおかしくない
民衆はこのまま黙って死ぬならという思いと、施作によって犠牲になった者の無念を背負っていくので、室町の出来事だと高を括っていると、歴史の悪役になりかねないのかなと感じた
いずれにせよ、本作は「剣の達人を大泉洋が演じることをどう思うか」というところに分水嶺があり、それが評価軸になりかねないところがある
だが、一揆を企て、民衆をまとめる力であるとか、人懐こい性格で人気を得ていく素の部分においては、このキャラは合っていると思う
キャラもたくさん登場し、パンフレットでは主要な人物はほぼ網羅されているので参考になるが、モブのキャラについてはさすがに本人発信のSNSでもないと見分けるのは不可能に近い
同じような格好をして特殊メイクで顔がほとんどわからないし、瞬間芸のような登場をするキャラがたくさんいるので、キャストロールは「登場順」にでもしておいた方が良かったんじゃないかなあと思った