劇場公開日 2024年6月7日

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「「そろそろ本当のお母さんを教えてくれ」が口癖だった私」かくしごと ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「そろそろ本当のお母さんを教えてくれ」が口癖だった私

2024年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

6月に映画館で鑑賞。現在12月。今年度公開作品は約50本以上の鑑賞になりそうだが、
個人的には、今年1位か2位の映画となるだろうと思われるので、書いておく。

疑似母子関係の物語。少年側の視点でたまらなくなった。

私は実母に「そろそろ本当のお母さんを教えてくれ」と常日頃、口癖のように言っていた。
酷い息子だと我ながら思うが、経済的に苦しい生活を子供の頃にしていたし、
父は飲んだくれで酒癖が悪く、身体的暴力こそなかったが、家に金を入れず、
経済的虐待と呼ぶべきものはあり、毎日のように金融業者から返済の電話はかかっていた。
それと、酒癖の悪さからくる父の暴言、
反社的な生業をしているんだかどうだかよくわからない父の存在自体が、
精神的虐待のようでもあった。

母はというと、酷い事された記憶も無いが、
この苦しい状況を打破する行動は、はたから見て何もできていなかった。
我慢して耐えるしか選択肢は無さそうで、受け身な姿勢の母も憎くて仕方なかった。

子供の頃から思っていた。美人の容姿で、凛とした気概の、
「本当の母親」が突然自分の前に現れ、
私があなたの本当の母親なの、と打ち明けに来る日を。
でも自分は、その為に家出したこともなく、
映画の主人公のように、キャンプ中に川から落ちて行方不明になることも無く、
何も行動に移すことは無かったので、そんな本当の母親は当然現れなかった。

だから、杏が拾ってきた子に
「あなたは私の子供なの」「あなたは悪い人たちにさらわれてたの」
という台詞のくだりで、ぶわっと泣いてしまった。40半ばのおっさんが。
打ち明けられた子ですら泣いていなかったのに。

そこからはもう、夢見心地の気分。幸せな気分。
息子役の子の屈託のない笑顔、はしゃぎっぷり。投影した自分を見ているかの如く。
きれいで凛とした佇まいの母親の匂いや、抱かれ包まれた時の温もり。
想像していた通りの理想の母親。幸せを感じれば感じるほど、
その幸せは、ずっと続かないんじゃないかという不安がよぎる。
そしてその不安は現実に変わる。

早くサブスク化してほしい。何回でも観たい。安藤政信が登場するまで、繰り返し何回も。

おじいちゃん役の奥田英二さん、とんでもなく良かった。
若い頃は不倫相手の男役みたいな、石田純一みたいなキザな役ばかりの印象だったが、
こんな素敵な認知症のおじいちゃんになれるとは。

良かった演者
◎奥田瑛二
○杏
○中須翔真
○酒向芳

ソビエト蓮舫