数分間のエールを

劇場公開日:

解説

ミュージックビデオの制作に情熱を注ぐ男子高校生と音楽の道を諦めた女性教師の出会いを軸に、モノづくりの楽しさや苦しみを瑞々しく描いたオリジナル長編アニメーション。

石川県で暮らす男子高校生の朝屋彼方は、MV(ミュージックビデオ)の制作に没頭している。ある夜、街で映像のモチーフを探していた彼は、雨の中でストリートライブをする女性の歌声に衝撃を受け、その曲のMVを作りたいと強く思う。翌日、彼方の学校の新任教師として現れたのは、なんと昨夜のミュージシャン・織重夕だった。

ロックバンド「ヨルシカ」のMVなどで知られる気鋭の映像制作チーム「Hurray!」が映像統括を手がけ、「ラブライブ!」「宇宙(そら)よりも遠い場所」の花田十輝が脚本を担当。彼方の声を花江夏樹、夕の声を伊瀬茉莉也がそれぞれ演じ、劇中で夕が歌う楽曲の制作をボカロPのVIVI、歌唱をシンガーソングライターの菅原圭が務めた。

2024年製作/68分/G/日本
配給:バンダイナムコフィルムワークス
劇場公開日:2024年6月14日

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(C)「数分間のエールを」製作委員会

映画レビュー

4.0拙くても、この感動をレビューしたいんだ

2024年10月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

熱量と疾走感に圧倒された1時間。
私にはめずらしく「もう一度体感したい」と思った。

■MVを作ること、映画レビューを書くこと
「先生の歌に感動したからMVを作りたい。」
「彼方の作るMVは応援なんだよ。」
今書いてる"映画レビュー”もそういえばそうなんじゃないか?
ぜんぜんMVとは芸術度も、制作に必要なスキルも、キラキラ度も違うけれど、
「この映画の良さを言語化して伝えたい。」
「映画を観て感じたことを上手く掬い取りたい。文字で表現したい。」
という想いや表現欲は映画レビューも同じだ。彼方の衝動はなんかすごく共感できた。

溢れる感動を文字にしたいから書いているのであって、別に「共感した」や「コメント」がなくても構わない。でもだからといって自分のスマホの中に書き留めておくのではなく、こういうサイトで公開しているのは「映画を観て感じたことを私はちゃんと言語化できているだろうか?」「この表現に共感してくれる人はいるだろうか?」「この映画の良さを言語化してみんなに伝えたい」という想いがあるからだ。

自分が制作した表現物(MV、レビュー)に対する反応を確認したい欲と、
感動した対象(曲、映画)へのエール。
拙くても感動した映画にはレビューを書き、感動したレビューにはコメントを書いていくことを、その衝動に正直でいていいんだと背中を押された気がした。

■夢破れた者たちへのエール
「未明」のMVのシーンでうなだれながらキャンパスの前から去っていく人たちのように、大量に書き留めたスケッチブックを捨てる外崎のように、表現することを、夢を、諦めざるを得ない人たちがいる。(それで身を立てて行こうとするなら特に)私も芸術ではないがスポーツの夢を諦めた経験がある。いまでもたまに夢でうなされるなど、その傷は未だに完全には癒えていない。
なかには先生のように、また走り出す人もいるだろう。趣味的に続ける人もいるだろう。
「他者の評価がなくとも、衝動のままに表現を続けるんだ!」ということをこの映画は推してるのか?違う。そんな単純で安易なオチじゃない。

去らざるを得なかったとしても、表現をしてきた時間は無駄じゃないということ、
夢を追いかけたその瞬間に意味があるってことを。
夢破れた自分にもエールをくれている気がした。

※先生の路上ライブシーン、浜辺で泣きながら訴えるシーン、「未明」のMV、この3つのシーン。魂が震えるとはこういうことか。
※MVがキーワードなだけあって音響が大事。Dolby Atmosで観てほんと良かった!
※画が綺麗。教室の中の光とか。
※石川県羽咋市。美しい所だ。
※映像がユニーク。Wiiスポーツ(古い!)の中のキャラみたいだった。Google MAPの箇所の表現も面白いなあ。
※MV作っていくシーンがミッションインポッシブルを思い出した(笑 こんな風に自分が想い描くイメージをサクサクと形にすることができたら、めちゃくちゃいいなあ。「Hurray!」の人たちとかひょっとしてこんな感覚なの??

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momokichi

4.0背伸びしたくなる映画

2024年7月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 観終えて、ぐーっと背伸びしたくなった。
 背伸びの爽快感は、やりきった、乗り越えた人の特権かもしれない。けれども、まずは背伸び、から始まる一歩もあるのでは。そんなふうに思えた。
 柔らかな色合いの絵柄ながら、物語は決して甘くない。重ねた努力がかたちにならず、夢を手放そうとする歌い手・ユウと、絵で挫折しMVの世界にのめり込む主人公・カナタ、彼の先を走っていたはずの同級・トノ。そんな三人が絡み合い、物語を紡いでいく。
 はじめは、映画自体がMV、入れ小細工に似たつくりなのかと感じた。人物が紙芝居のように平面的で、動きが少しぎこちない。そんな人工的な画に、音楽がかぶさるとグッと深みが出て、思わず身を乗り出した。同時に、手描き風の自然背景が立ち上がり、奥行きを出す。人物たちも生き生きと動きはじめ、気づいたら引き込まれていた。
 まっすぐMVにのめり込んできたカナタに訪れた、思いがけない挫折。冒頭ではモブキャラかと思われた女子の存在が、とある出来事から光を放ち、カナタとともに驚いた。薄っぺらさは単なる見かけ。気づきは、すくそばに転がっている。余計なものを一切配した組み立てに、思わずうなった。
 カナタがたどり着いたMVは、本編とは対極と言いたくなるほど、荒々しく描き込まれている。複数の辛口コメントと、ポツンと浮かぶ呟きコメントをあえて示した後に流れる渾身作に、目と耳が奪われ、心を掴まれた。
 何かをはじめたい人、挑戦したい人。続けるかあきらめるか、迷っている人。夏休みの季節に、ふさわしい作品だ。

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cma

5.0全ての投稿者にエールを

2024年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 動画投稿をする人も最近じゃ珍しくないんでしょうか。この映画のようなMV作成となるとハードルがとても高くて、手を出そうなどと云う人はそうそう居ないと思うのですが。
 でも、そのハードルを一気に下げたのは、ニコニコ動画でヒットした「MikuMikuDance」でした。ボーカロイド「初音ミク」のキャラが3Dモデル化され、それを誰でも容易にMV作成できるツールが無料で公開され、加えて、MV作成のためのモデルや小道具のCG、モーションデータなども交換し合い、爆発的に多くのMVが作成されたものです(実はわたしもちょっと遊んでいました)。この映画でも使われていたこんな目つき(><)の表情が実に懐かしい。そうして、多くの投稿者が生まれ、中にはプロ化した人もいるでしょう。そして、この映画同様、再生数、コメント数に伸び悩む人も、大勢いたことでしょう。そして、折れて、去って行く。
 この映画のMV作成はそんなMMDのブームを思い出します。無論、今時はMMDだけじゃなくもっと様々な形式で自らの才能をアピールしているのでしょう。ただ、正直に思うところ、ただ歌うだけでは厳しいのでは無いかと思う。この映画の先生のような、3桁にしか届かない再生数が実にリアル。この映画の作成者も味わったのではないでしょうか。最後のMVについたコメント「CGキモイ」もまた実にリアルで自虐的。
 最後のMV、歌詞の意味とか聞き取れなくて読み込めなくて理解出来ていないのですが素晴らしかった。歌詞の意味は判らないけど、MVの示すところは実に切実。映画上で語られた、100曲も書き続けた歌、何十冊も書き続けられたスケッチブック。そのモデルは明らかに歌い手の先生自身と絵師の友人。そして「新規作成」をクリックし続ける自分自身。
 最初に作成して先生に断られたバージョンは主人公・彼方君のエゴでしかなかったのかな。作品には作成者を必ず登場させると聞きます。アラレちゃんを創造した則巻博士は、どうみても鳥山明先生自身でしょう。編集者のトリシマさんを悪役にしているのも実生活そのまんまw つまり先生自身をそのまま描ききったということでしょうか。
 ”地上の星は今何処にあるのだろう” 冒頭から語られる、見えない星を探し続けるというような台詞。物作りは創造、発明ではなく、発見なのかもしれません。歌う先生の姿をそのまま描いた。ひたすら描き続けて良いものを作るのではなく見出していく。そういえば、ライフゲームの作品はパターンを作成するのではなく発見するものだという。良いものが見つかるまで、ひたすら描いて良いものを探し続ける。それは自分のエゴとは無縁のもの。
 それにしても、「誰かの心を動かしたい」というピュアな投稿者はどれほどいることか。「高評価、チャンネル登録よろしくぅ!」のエゴそのものの決まり文句は・・・まあ、大変正直で結構。決して批判ではありません。
 全体通して、アニメCGのデザインが新感覚的でとてもよかった。あのMV作成のシーンも、トム・クルーズで用いられたモーションによるオペレーションを大幅に凌駕していたのではないでしょうか。
 ああ、あと中山萌美ちゃんの歌とMVは可愛くてよかった。最後にフルコーラスで見たかったなw

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猿田猿太郎

3.5独自のCGビジュアルで日本アニメの可能性拡げた

2024年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の素晴らしい達成はまず第一にアニメーション映画として新しいビジュアルを獲得していること。Blenderで作っているそうだが、フォトリアルな3DCGでもなければ、単純に手描きアニメの模倣でもない、独自のイラストルックの絵柄を立体感を持って動かすことが出来ている。日本のCGアニメは手描きアニメのテイストを再現するのか、リアルな方向を志向するのかの選択だったところに別の観点を持ち込んだと言っていい。丁度同時期に放送していた『ガールズバンドクライ』と一緒に、日本のCGアニメに新たな1ページを加えることになったかもしれない。
物語はシンプルにもの作りのに熱意を燃やす少年と一度夢破れた大人の女性を通じて、創作者へのエールを送る内容だ。MVを作ってきた監督たちがMV作りに情熱をかける少年を描く。その熱意が一人のミュージシャンの熱意を再び呼び覚ますシンプルな物語。上映時間は短いが満足度は高い。
主演の2人の声優ははまり役。特に伊瀬茉莉也さんの演じるダウナー系のミュージシャンはいい。

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杉本穂高