「Contents」顔を捨てた男 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
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A24作品はここ最近不発続きで、今作への期待値もそこまで高くは無かったんですが、セバスチャン・スタンが出てるならなんとかなるかも…?というところに期待を込めて鑑賞。
そんな事はなかったです。いつもの苦手なA24でした。
顔に変形を持つエドワードが治験を受けて全く違う顔を手に入れて人生をやり直していく…といった感じの作品で、決してハッピーな方に行く事は無いだろうなと思いましたが、それでもそういう方向に向かってしまうのか…という期待外れな感じが個人的にはありました。
性格が大人しいからこそ普段の生活で自分をあまり出せないエドワードが隣人に優しくされたりしながら些細な変化があるのかなと思ったら本当にジャブ程度なのでもっと深掘りしてほしかったなーとは思いました。
エドワードもといガイをそこまで辱める必要性はあったのか?ってくらいオズワルドが登場してからの展開は苦しいものがありました。
エドワードと同じように顔に変形を抱えているオズワルドは出会いの時から自身満々で陽気に振る舞っており、事あるごとにエドワードに近づいてきたりと相反する性格のキャラクターを描きたかったのは分かるんですが、シンプルに絡みすぎてウザいというのが強かったです。
顔を変えたはずなのに元の顔に執着してしまったがために、変形した顔の男の舞台にそのまま出てしまったり、かと思いきや変形した顔のまま過ごしているオズワルドに全てを奪われていき、脚本家のイングリッドもオズワルドの中身と見た目にどんどん惹かれていくという中々にNTRな展開に転がっていってしまいます。
ここではイングリッドの中身の薄さ、都合が良すぎる考えがかなり嫌いで、そのせいもあって絶対にガイの方が良いだろうとガイ応援隊になっていったのでその後の展開には目も当てられず。
全体的に演劇に繋がる描写がご都合すぎるのも個人的には引っかかりまくりでした。
ガイとしての個人の戸籍をどこで手に入れたのか、まずエドワードの顔面手術の内容がどこから漏れたのか、なぜオーディション会場に吸い込まれるように入っていったのか、オズワルドはなんで勝手に入ってきて受け入れられているのか、偶然とはいえそんなにオズワルドと会えるか?とか作品内のコミュニティが狭すぎるのが違和感につながりっぱなしで仕方なかったです。
まぁガイ自身も立ち振る舞いにそこそこ問題があり、自暴自棄になって自分の元の顔の仮面を被って仕事をしたり、職場で大暴れしたり、演劇に突撃してセットに叩き潰されたりと惨めな目に見事に遭っていてうわぁ…ってなりました。
ルッキズムをメインテーマに据えた作品では直近に「サブスタンス」があり、あちらはエンタメ極振りかつ、整形をする、もとい自分の体を必要以上に弄る事に対しての極端なまでのアンサーを叩きつけてくれていたのに対して、今作は顔を変えたとしても元の顔に縋りたくなるという逆転現象を描いてはいるのですが、どうにも要所要所が淡々としつつ、それでいて内容が回りくどいというWパンチが個人的には相性が悪かったです。
終盤の展開もまぁ蛇足かなといった感じで、介護士をブッ刺して刑務所にぶちこまれたり、出所したかと思ったら偏屈な爺さんに絡まれたり、また偶然オズワルドと会って飯に誘われて引っ越すことを伝えられて、オズワルドの何気ない一言が悪意全開に聞こえて笑って終わるという、この一連の流れでエドワードが何も報われてないのが本当に心苦しかったです。
整形しても良いことは無いという痛烈なメッセージとしても受け止められますが、全体通しても辛気臭い作品だったというのが最終的な印象です。
役者陣の演技やメイクあたりは良かっただけに残念。
鑑賞日 7/14
鑑賞時間 13:10〜15:05