「現代的な大魔神という感じ」ビーキーパー アラ古希さんの映画レビュー(感想・評価)
現代的な大魔神という感じ
字幕版を鑑賞。Bee Keeper とは養蜂家のことであるが、本作では VIVANT における「別班」のように非合法活動も厭わずに体制の安定を守るための特殊な組織を意味している。その組織から引退した男が本当に養蜂家になっているというのはご愛嬌だが、どうしても必要な設定というわけではなかったように思う。敵として登場する者達にはロクなものがいないが、黄色いジャケットを着ていた奴は蜜蜂の天敵のスズメバチ(Yellow Jacket)というシャレであろうか。
彼に作業場として納屋を貸してくれている老婦人がコンピュータウィルス絡みの詐欺に引っかかってしまうところが発端である。映画の中で語られるように、子供がネット詐欺に引っ掛かっても親が何とか面倒見てくれるが、高齢者が引っ掛かってしまうと全て自分で解決しなくてはならなくなる。その悲劇を目の当たりにした養蜂家は、怒りに任せて行動を起こす。
こうした展開は「大魔神」と類似したものがあり、大魔神は話の最終盤にしか出て来ないが、冒頭でブチ切れた養蜂家はその後延々と大魔神状態を続ける。ネットを使った詐欺や闇バイトをしているクズどもは全員こういう目に遭わせてほしいと思わずにはいられなかったが、やってることは殺人を含む違法行為であり、彼を阻止しようとして立ち向かってくる者たちには、犯罪グループのメンバーの他に FBI や州兵など任務で来ている者達もいるので、一概に全員殺していい訳はなく、一般的な家族を養っている者達も多数いるはずである。詐欺の被害者に同情して行動した者が、任務で来ているに過ぎない罪もない者達を大勢殺傷するのは解せなかった。大魔神も一旦暴れ出すと相手の善悪には無頓着になってしまうので、その点も類似していたと言えなくもない。
ミツバチの世界は、女王蜂を頂点とする縦社会であるが、女王蜂が期待通りの働きをしないと、部下の働き蜂達からダメ出しされて巣から追い払われることもあるらしい。本作では、女性のアメリカ大統領の一人息子が詐欺集団のボスになっていて、母親の選挙資金にも関与しているという話になっていた。大統領の息子が救い難いクズというのはバイデンの息子ハンターを彷彿とさせる。あんなものに大赦を出すのだからバイデンもクズの極みである。
「トランスポーター」シリーズが終了後のジェイソン・ステイサムの出演作は、巨大鮫のヤツなど、必ずしも彼でなくても良いのでは?と思わせられるものが少なくなかったが、本作は待ってましたと言いたくなるようなハマり役である。シリーズ化もできそうなので、続編に期待したい。
(映像5+脚本4+役者5+音楽3+演出5)×4= 88 点。