劇場公開日 2024年8月23日

「きちんと映画で歴史の暗部を白日の下に晒し、活写する韓国映画界の底力には脱帽しますね」ソウルの春 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0きちんと映画で歴史の暗部を白日の下に晒し、活写する韓国映画界の底力には脱帽しますね

2024年12月22日
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鑑賞方法:映画館

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先ごろ12月3日深夜に韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」(戒厳令)を布告、国会により解除を要求、わずか6時間ほどで解除されたニュースが記憶に新しいですが、今回同様に朴正煕暗殺事件後の1979年12月12日に起こった軍内部の粛軍クーデターを描いた『ソウルの春』(2023)が新文芸坐さんで上映されていたので訪館。

『ソウルの春』(2023)
「ソウルの春」とは1968年チェコスロバキアで起こったごく短期間んの自由化・民主化の「プラハの春」になぞらえたタイトル。1979年12月12日に、軍内親衛グループである秘密結社「ハナ会」メンバーと共に軍事クーデターを起こした第11₋12代大統領・全斗煥(チョン・ドゥファン)と第13代大統領・盧泰愚(ノ・テウ)とそれを阻止しようとした首都警備司令官・張泰玩(チャン・テワン)の対立を軸にした民主化を阻んだ反乱軍と鎮圧軍の9時間の攻防を描いたポリティカルサスペンス。

全斗煥大統領の軍事政権下の民主化運動を描いた『光州5・18』(2007)も圧巻でしたが、本作も実に衝撃的な作品。盧泰愚政権の1988年にはソウルオリンピックも開催され、ずっと民主主義体制の隣国というイメージでしたが、直接選挙が再開されたのはつい35年ほど前とは自分の無知もありますが驚きですね。
劇中の「勝てば官軍負ければ賊軍」のセリフが印象的ですが、時が過ぎ一部フィクションや実名を変えていますが、きちんと映画で歴史の暗部を白日の下に晒し、活写する韓国映画界の底力には脱帽しますね。

民主主義といっても国によって千差万別、コンディションはそれぞれなので、本作のような映画を通じて歴史や生い立ちを相互理解するには良いかもしれませんね。

矢萩久登