劇場公開日 2024年8月23日

「ファン・ジョンミンの卑劣さと酷薄さ愛敬と情けなさ」ソウルの春 jinminさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ファン・ジョンミンの卑劣さと酷薄さ愛敬と情けなさ

2024年8月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1979年の粛軍クーデターに基づいた、刻一刻と状況が変わる手に汗握る政治スリラー。

地位と面子の保全にのみ汲々とする軍人たち(結局は彼らの怯懦が国を滅ぼす)を背景に、「権力を奪取する」VS「国を守る」という明確な意思を持った人間たちが対峙する。
この対比を際立たせるおじさんたちの熱演、とりわけファン・ジョンミンの卑劣さと愛敬と情けなさが入り混じった怪演が素晴らしい。

ただし、このタイトルで民衆が不在なのは気になった。
色々な点で共通の要素を持つ『日本のいちばん長い日』が『肉弾』とセットで観られるべき映画だとしたら、『ソウルの〜』は『タクシー運転手』とセットで観られるべき映画なんだろう。

『南山の部長たち』→『ソウルの春』→『タクシー運転手』→『1987』という第六共和国建国史を、濃いキャラクターが活躍し最後は民衆が圧政を覆すぶち上がるエンターテイメントに仕立て上げる、韓国映画界の自省力とクリエイティブ能力に圧倒される。

jinmin